ダイアナヘイローに初重賞制覇のチャンスが巡ってきた。6月の戎橋特別はスピードの違いで逃げ切ったが、続く皆生特別と前走の佐世保Sは2、3番手に控えて3連勝。北九州記念に目標を定めて栗東に戻らず調整されてきた。交通網が整備されて小倉滞在馬が減る中、リラックスできる静かな環境で、調教でも好時計をマークしたように状態は万全。成長著しいダイアナヘイローをデビュー前から担当してきた原田秀臣調教助手に手応えを聞いた。

好位差しで連勝 成長の跡くっきり

-:北九州記念(G3)を予定している、小倉競馬場に滞在中のダイアナヘイロー(牝4、栗東・福島信厩舎)について、原田助手に伺います。よろしくお願いします。前走の小倉でのレース(佐世保S1着)を振り返っていただきたいのですが?

原田秀臣調教助手:逃げても良い馬なのですが、(13番)枠という条件もあって、内に速い馬もいたので、控える形になったと思います。(昨年の)秋口から2~3番手で控える競馬もしていたのですが、あれだけ終い1ハロンでグッと伸びることはなかったので、その辺は成長の跡で、上手く溜めて控えられるようになったのかなと思います。それは気性面の成長と、ずっと乗ってきたユタカさん(武豊騎手)がダイアナヘイローのことをよく分かっていることが活かせたんじゃないかと思いますね。

3連勝でオープン入りを決めたダイアナヘイロー

3連勝でオープン入り 右端が原田助手

-:話は飛んでしまいますが、昨年のフィリーズレビュー(4着)の時は差す形でもありましたね。

原:あれは出遅れが全てですね。(国分)優作(騎手)が云々じゃなく、出遅れてああいう競馬をせざるを得なかったと。逆に言ったら、ああいう競馬で最後伸びる競馬もできるんだというのが分かったことは良かったのではないかと思います。結果は悪かったですけど、そういう競馬もできるんだなという可能性はちょっと見えたというのはありましたね。

-:前回は意図しての好位差し。フィリーズレビューの時は偶発的に後方から行く追い込む形になったのですが、やっぱり前回はちょっと違うということですね。

原:あの頃はただただ行くことの気持ちが強くて、本当に引っ張り殺して、馬とケンカして控えてあそこで包まれた感じだったので、伸びはしましたけどチグハグな競馬だったことは事実ですね。その点、前走は行きたがるところは行きたがるけど、上手いこと脚を溜められるようになってきたのではかなと。この辺が違うかなと思いますね。

-:原田さんが乗ってこられても、折り合い面の進境は窺えますか?

原:そうですね。普段の調教でも、昔は引っ張ったら、頭を上げて天井を向いて、口をパクパク開けて引っ掛かって、本当にケンカをしている感じでした。それが、調教の時にハミを替えて、それからけっこう上手いこと頭を上げないように癖をつけて、それから調教では全然問題ないですね。競馬ほど行くこともないし、そんなにガッツリ引っ掛かることはもうないですね。

-:ハミを替えた時期と以前のハミと今のハミも具体的に教えていただきたいです。

原:当時は普通の水勒ハミで、調教用にダブルジョイントを使っているんですよ。競馬だとハミ当たりが良い分、それだと抑えが効かないので、指示をしても緩くなるので。いま、競馬では、全体の形は一緒なのですが、ハミの形がちょっとだけ違う物。ダブルジョイントは3節で2カ所になっているんですよ。それが一つになっている同じメーカーのハミに替えています。舌への当たりが軽いらしいんですよね。だから、競馬では普通のハミに戻していますけど、普段はダブルジョイントを使って、それで折り合いも付いていますし、それが出来てきたことで競馬でも我慢ができているのかなと思いますけどね。

ダイアナヘイローが実戦で使用しているハミ

▲現在、実戦で使用しているハミ

-:もともとデビューから携わっているということで、デビュー戦は6番人気で決して人気サイドではなかったと思いますが、デビュー前の雰囲気はいかがでしたか?

原:実際に乗ってみて良い馬だなと思っていましたし、競馬前に普通に速い時計が出ていたと思うので、ソコソコやれるんじゃないかなという手応えはありましたよ。1回1600mを除外になっているんですよね。それも除外を計算して入れていたのですが、(その時点では)ちょっと(調教量が)足らないということは分かっていたんですよ。それで、(出馬投票を)入れて権利を取って、予定通りに上手いこと除外されたので、その分、追い切りもできて、6番人気でしたけど、人気以上にやれるんじゃないかという手応えはありましたね。

-:デビュー時期に速い時計が出ていたら目安になりますね(デビュー戦前の最終追い切りは坂路で4F53.3秒を馬なり、デビュー2戦目の最終追い切りでは坂路で4F51.3秒の好時計をマーク)。

原:下のCWコースでもやっていたのですが、普通にCWを2周乗ったりとスタミナ調教もできていたし、ウチの厩舎のデビュー前としては、ジックリ乗れていた方でしたね。普通なら入厩してから1~2カ月で使うのですが、あの馬はけっこう(時間を)かけたんですよね。ちょうど年末を跨いで、競馬がないじゃないですか。そういうのも上手い感じに、ウチにしてはあの馬は追い切り本数が多かったと思いますよ。だから、そういうのも大事だなと。 要するに、ウチなんかは放牧に行っても、基本的にはすぐに使える状態では入ってこないので、昔ながらのジックリやる厩舎っぽい感じなので。

デビューからダイアナヘイローの調教を手がけてきた原田助手(写真は栗東トレセンにて)

デビューからダイアナヘイローの調教を手がけてきた原田助手(写真は栗東トレセンにて)

-:外厩で仕上げてドンと使ってくるトレンドとは違うと。

原:10日ですぐ、なんてことはなくて、(厩舎に)入ってゲート試験までに1カ月くらい掛けて、そこからまた1カ月掛けて競馬みたいな。(デビューまでに)平均で2カ月くらい掛かる感じなので。今の厩舎だったら、ゲートに受かったら1回出して、また入ってきて10日で使うみたいな、そういうパターンじゃないですからね。その点、馬のことはよく分かるし、こっちとしては助かっていますけどね。

-:さらにいま思えば、2戦目(エルフィンS2着)はけっこう良いメンバーに混ざって好走していましたね。

原:そうですね。負けたのはレッドアヴァンセですし、あれはちょっと失敗したなと思うのは、やっぱり先のことを考えて控える競馬をしようという話だったんですよ。ダートで勝っている馬がいて、それが前に行くと思っていたんですよね。そうしたら意外と行かなくて、ペースがガクッと落ちちゃって。「その2番手」というように決め打ちみたいに言っていたので。まあ、2着なんで、それは結果論でどちらが良かったか分からないですが、最後に差された分はその辺かなと思うんですよ。ちょっとケンカして行った分、最後に甘くなって差されたと。ただ、実力的にはそれで示したかなとは思っていたので。

武豊騎手の進言で短距離路線へ

-:その頃の折り合い面はまだまだでしたか?

原:まだまだですね。その時も、頭を天井に向けて引っ掛かっている競馬になっていますからね。それで、フィリーズレビューでハミを替えたのですが、そこは出遅れてハミもまだ馴染んでいないせいか、ちょっと気持ち的に行きたがる方が強くて。その後にユタカさんに替わって1600mを使ったのですが、さすがにユタカさんでも行きっ振りが良過ぎた。そこでユタカさんに短距離路線を進言してもらって、そこからずっと短距離なので。500万くらいだったら、やっぱりスピードの差でパンと行って、そのままスッと回ってくれば勝てるくらいの力はあるので、逆に500万のペースだと、抑える方がしんどいみたいなのでね。

-:(1200mの)500万は圧勝でしたものね。

原:あれは逃げてというか、単純にスピードの違いで行っちゃった感じですね。

-:現状は前走のような形というか、ある程度行く馬がいれば行かせて、という形がベストですか?

原:そうですね。(行く馬が)いなければ自分で行っても良いし、いれば抑えていけるし、そういう選択肢ができたので、それは相手にプレッシャーになるから。それで、スタートがすごく速いので。出るのは普通に出るのですが、二の脚がすごく速いので、それで1馬身くらい出てしまうとやっぱり周りが焦りますよね。行く馬は何がなんでも押していかなくちゃいけなくなるし、(自分が)逃げる時はそのままスッと行っちゃえば良いしとなる。そこら辺が有利というか、ちょっと余裕が出ますよね。だから、スタート次第というのが一番重要ですよね。今回も上手いこと出れば、という感じですね。

デビュー戦はマイルを逃げ切ったダイアナヘイロー

デビュー戦はマイルを逃げ切った

-:どのレースを観ていても、大体ポンと出ていますね。

原:ポンと出て、その後がスッと速いんですよね。だから、アッと思っても、だいたい頭の差出ているという感じで、体半分くらいは出ていますからね。そういう意味では競馬はしやすいですよね。それでユタカさんだし、前に行ったら後ろも慌てるし、みたいなところもどうしてもありますからね。

-:それに、あまり競り掛けられないですからね。

原:なかなか難しいですよね。競り掛けてきたら譲ったら良いしみたいな感じで、そのペースに付き合う必要はないから、その分は楽ですよね。逆に、その分そちらが脚を使ってくれたら、最後交わせるかなというところもあるし。

-:前回終わって、武豊ジョッキーのコメントというか、評価はいかがでしたか?

原:あんまり話をする機会がないのでね。でも、後で聞いた話によると「次も期待している。トントンと(上に)行ってくれれば」みたいなことも言っているから、それなりに手応えはあるんじゃないかと思うのですがね。あの時はクイーンSに出走した馬(トーセンビクトリー)もいた中で乗ってくれたので、それなりに期待はしていると思うのですがね。

「前走後は小倉に滞在 冷たい水で心身とも充実」
ダイアナヘイロー陣営インタビュー(後半)はコチラ⇒