マキシマムドパリ充実の5歳秋にひと花咲かせる
2017/10/1(日)
前走時も函館滞在中の独占取材で特集させていただいたマキシマムドパリが、慣れ親しんだ栗東で巻き返しの準備を整えている。前走のクイーンSは想定外のプラス体重で行きっぷりも悪く7着。今季になって重賞を2勝した5歳牝馬が大輪の花を咲かせるべく、秋初戦に臨む手応えを陣営に聞いた。
-:函館滞在中にも取材させていただいたマキシマムドパリ(牝5、栗東・松元茂厩舎)ですが、今回は秋初戦・京都大賞典(G2)に臨まれます。まず、前回のクイーンSについて振り返っていただきたいのですが。
吉田貴昭調教助手:ちょっと気持ちが入っていなかったですかね……。いつもだったら、促したらもうちょっと反応して行ってくれるのですが、思っていたレースとは違う展開になって、やっぱりしんどくなった感じですね。
▲前走インタビュー時に馬房にて
-:気持ちが入らなかった理由は、何か思い当るフシはありますか?
吉:去年もそうなんですが、向こうの環境も原因としてはあるのかなと。こっち(栗東)で坂路で追い切ったりしていたら、ドンドン気が入ってくるんですが、ジョッキーが乗って追い切りをしても、そこまでの雰囲気には……。結局、輸送をしても減らないあたり、それかなと。絶対に減ると思っていたからね。
-:前回のインタビューでも、むしろ行く前は馬体減りを心配されていたほど。結果プラス4キロの馬体重でしたからね。
吉:だから、ビックリしました。最初に数字を見た時に、やっぱり減っているわと思っていたら、よくよく思ったら増えてるやん!と。イラついている感じもなかったし、減っているような気配もなかったですから。
-:そういう意味では輸送もこなしてくれたけど、逆に追い込めないというか、そういう感じだったんですね。
吉:何なんでしょうね。リラックスし過ぎてしまうのかな……。
-:いい意味で考えれば、夏に使っていても、マイナスよりもあまり負荷の掛からないレースだったということですね。
吉:そうですね。そんなにダメージはなかったと思うんです。その後もしっかりと休ませて、ケアしてもらっています。9月の上旬にこちらへ戻ってきましたが、すごく落ち着いていますね。だから、来週と追い切っていって、どれだけ変わってくれるかですね。
-:今週(レース2週前)の調教はいかがでしたか?
吉:動きは悪くなかったですが、やっぱり終いがしんどくなっているかな、という感じでした。時計そのものは普段どおりで、息遣いは悪くないですが、ここからもうちょっと動けてくる感じですね。マーメイドS(1着)の時はここからガラッと変わって、1週前になったらすごい動きをしていましたからね。
-:前回は立ち上げの段階で、フレグモーネの影響がありましたしね。
吉:そう、乗り出し1週目の調整にちょっと影響がありましたね。そういう意味でも、前回は乗りきれない部分があったのでしょうね。
-:1週前の追い切り時計に注目しておきます。
▲1週前は藤岡佑介騎手を背に栗東坂路で4F54.7-38.6-24.7-12.0秒をマーク
吉:乗り手の感触も。いつも競馬前に乗ってもらっているので、比較はできるので。
-:距離は特に気にならないですか?
吉:ええ、1800mより全然良いですね。
-:万が一、前回より少し行き脚がつかなかったとしても、その部分では多少リカバリーできそうですね。
吉:そうですね。もともと長い方が良いと思っていたので。
-:この秋は京都大賞典からエリザベス女王杯を予定しているということで、感触として去年のエリザベス女王杯(9着)よりやれそうな手応えというのはありますか?
吉:去年は使えるかどうか分からない状態で、権利を取るのに1走多くレースを使ったり、なんてこともありました。今年はゆったりと決めたローテーションで行けるので、調整はしやすいですね。
-:しかも、秋初戦を1回使ったことで、更に。
吉:だいたい使った後の方が良くなるので。
-:馬房でのこうした落ち着いた感じを見ると、使った方が。
吉:こういう落ち着き過ぎている時って、ちょっとズブさが出るんですよね。競馬でも、休み明けはよくズブさを出すので。
-:もちろん馬の個体差はあると思いますが、キンカメ産駒は1回使って良くなる傾向がありますからね。
吉:気持ちさえ入っていれば、ちゃんと動ける感じなんですけどね。
-:気持ちが入っているというのは、普段の歩きとかでも変化が見られますか?
吉:やっぱりちょっと変わってきますよ。
-:さっき観させてもらいましたけど、あれがマキシマムドパリなのかなと~。確か北海道でもゆっくり歩いていたなと。
吉:昔より落ち着いているんですが、ちょっと(気が)抜け過ぎているかなという感じもあるので。僕は僕で馬のリズムに合わせるよう歩くようにしています。これも、11月くらいになったら、多分もうちょっとシャキシャキ歩いていると思うんですよね。
-:そのあたりの違いはパドックでもありますか。
吉:逆に、パドックはイレ込み過ぎていたら、あんまり良くないですよ。今回でもスゴかったです。ああいう時は変に力が入り過ぎているのですかね。馬場に出してしまったら大人しいから、それはいつもと変わらなかったのですが、そこまでの間に変に力が入り過ぎて。
-:そういうロスじゃないですが、力の入れ加減があったんですかね。
吉:何かタイミングが違うんですよね。
-:それがちゃんとレースにスイッチが入れば。
吉:そうですね。周回を重ねる毎に、いつもはちょっとずつ気が入ってくるんですよね。でも、クイーンSは最初からずっと(気が入っていて)。装鞍所でも力みがあって、これはちょっと良くない感じだなと。
-:京都大賞典とエリザベス女王杯を観るファンは、現場の人以外でもレーシングビュアーを観ていたら、パドックの映像が一瞬でも観られるので(笑)。
吉:ただ、映るタイミングがちょうど落ち着いていたら、落ち着いていると、ね。分からないですもんね(笑)。ずっと観ていてだったら、違いが分かるのでしょうが。
-:現地派はそこも注目してもらえれば、というところですね。京都はまだ開幕していませんが、馬場は開幕週で気になるところですね。
吉:そうですね。しかも、男馬の強いところがいますから。
-:ただ、昔のエリザベス女王杯で、京都大賞典で負けた馬が巻き返すパターンがあったんですよね。
吉:ああ~、同じグリーンファームの(クィーンスプマンテ)。
-:レースに向けて意気込みを教えていただけますか?
吉:本番前に少しでも良い状態に持っていって、本番のG1につなげたいですね。去年よりは良い状態で迎えると思うので、ラストチャンスですからね。
-:エリザベス女王杯が終わったら、おそらく使わない可能性が高いですか。
吉:どっちにしても今年いっぱいで繁殖になると思うんですよね。
-:寂しくなりますね。
吉:一緒の時間を大切にしないとアカンね。
-:結果次第では、エリザベス女王杯がラストになるとして、そこが最後の想定で日々やっていった方が……。今までやられてきた中でも、思い入れはある方ですか?
吉:他に任せてもらった馬たちとは実績が違うのでね。これだけずっといて、付き合いも長いしね。意外と、持ち替わることも多く、最初から最後までというのはなかなかないですよね。いや、これが初めてですよ。
-:当然実績がないと、3年も厩舎にいないですものね。
吉:入れ替えのタイミングで、上のクラスじゃないと、そんなことは言っていられないという厩舎の方針もあるだろうし。ただ、今回はこの夏の放牧明けで帰ってきて、秋の一発目までの飼葉食いはいつも良いんですよね。カイ食いが良くなってきた中でも、食べ方が全然違うんですよ。集中して、一気に食べるので。いつもだったら、食べられているのですが、時間を掛けて量を食べるみたいな。
-:「なるべく追い切りも朝やって、ちゃんと食べられるように時間を設ける」と、おっしゃっていましたね。今は食べられるようになって、充実期を迎えているでしょうから、いい結果が欲しいですね。
吉:今だったら、そこまで気にしないでも良いぐらいの感じですからね。昔は、エサの種類を混ぜてしまっていたら、口をつけないとか、夏場は向こうとかでも、やっぱり分けてやっていましたし。今は一緒にやっていますけどね。
-:今年の状態でどれだけやれるか楽しみにしています。
吉:ありがとうございます。頑張ります。
プロフィール
【吉田 貴昭】Takaaki Yoshida
トレセン歴は2008年から。函館2歳ステークス(G3)に出走したカシアスを担当する吉田光希調教助手はいとこ。父がバンブーアトラス、ビリーヴを担当し、スプリンターズSに挑戦したフィドゥーシアを手がける政弘厩務員。おじがファビラスラフインを担当していたという競馬一家の出身。過去には、イナズマアマリリス、函館2歳Sで3着に来たソムニアなどを担当。