充実度ナンバーワン! 落札価格880万円から砂の王者へ ロンドンタウン
2017/11/26(日)
目覚めたロンドンタウンが、ダート界の頂点まで駆け上がる。休み明けだった2走前のエルムSでテイエムジンソクを破ると、前走は韓国に遠征してコリアカップを制覇。一躍、チャンピオンズカップの主役候補に名乗りを上げた。大一番に向けて順調に乗り込まれている。管理する牧田和弥調教師に、G1制覇にかける思いを聞いた。
-:韓国のコリアカップを制し、チャンピオンズカップ(G1)へ挑むロンドンタウン(牡4、栗東・牧田厩舎)ですが、前走はおめでとうございました。心境はいかがでしたか?
牧田和弥調教師:ありがとうございます。嬉しいに尽きますね。狙った通りでしたね。
-:佐賀記念を制したものの、その後は勝ちあぐねるところもあったと思います。ここ一連の流れで、成長を感じられる部分、手応えはありましたか?
牧:本当に覚醒した感じで、目覚めた感じですよね。もともと期待をしていたのですが、中身が入ってきたのだと思います。
-:それは、見た目でも感じ取られていたと。
牧:若い頃より詰めの甘さがなくなりましたね。レースでもフォームが変わってきました。その辺がレース結果に繋がっているのかなと思います。エルムS前くらいまでは、もともと勝負所で反応が悪かったりしましたからね。
-:マーチSでも、4角の手応えでは、もう今日はダメかなというところから最後来ていましたよね。
牧:そうですね。その辺が解消されてきたのかなと思います。
-:それに、個人的にはエルムSというのはかなりビックリさせられたというか、手応えからしたら、とんでもなく変わってきているのかなという感じを受けました。その(エルムS前に)一息入れてからというのは、調教の段階で手応えというか、何か変化を感じられる部分はあったのですか?
牧:そうですね。その段階から、フォームが詰まってきたので、これなら、という思いがあったんですけどね。
-:そして、前回のコリアCの馬場は、ほとんどのファンや関係者が行ったことがない馬場だと思うのですが、こちらと比べていかがでしたか?
牧:ちょっと砂厚が薄い感じでしたね。それで、歩いてみたのですが、路盤が若干固いイメージでした。
-:そういう意味でも、2走前のエルムSがけっこう時計が出やすい顕著な馬場だったと思うのですが、今までとは違った適性といいますか、ベクトルの違う馬場で結果を残されたということですね。馬場が軽さというのは、苦にはしないということでしょうか?
牧:そうですね。
-:向こうでの調教も苦にならなかったですか?
牧:いや、全く問題なかったですね。本当に予定通り行けましたね。競馬場の横に検疫厩舎がありまして。
-:どれくらい前に韓国へ入られたのですか?
牧:8月31日ですね(レースは9月10日)。輸送時間そのものは短かかったです。日本を2時半に出て、関空から飛行機に乗ったのが6時くらいで、フライトは2時間弱くらいでしたね。向こうの空港からも1時間半~2時間くらいでした。
-:前走が南部杯の馬も他にいますが、例えると、盛岡へ行くよりも変わらないような……。
牧:そうですね。盛岡よりも近いですね。
-:体重の増減も心配なかったですか?
牧:そうですね。ちょっとエルムSの後に1回帰ってきたので、それでまた輸送だったので、それだけがちょっと心配だったんですけどね。なるべくセーブしたかったので、その辺が気を遣いましたよ。
-:先生から見て、この馬の長所はどう感じていらっしゃりますか?
牧:すごく気性が良い子ですよね。言うこともちゃんと聞くし、乗りやすいし、扱いやすいですね。
-:それは、若い時からですか?
牧:そうですね。性格が良いですね。入ってきた時も、本当に手が掛からない子という印象でしたね。最初は、新馬(6着)の1600mでハナに行って止まったので、ちょっと距離を縮めて良い位置で競馬ができるのかと思いました。でも、距離が延びても良い走りだったので、ここ最近も実際に距離が延びても、その通りになっていますよね。
-:先生が見られていて、カネヒキリ産駒の特徴というか、傾向を感じられる部分はありますか?
牧:実はカネヒキリだからこの馬を選んだという感じではないのですが、丈夫そうな馬だなと思っていました。それに、雰囲気もあったので。
-:先生が見つけてこられたのですか?
牧:そうですね、セリ(2014年HBAサマーセールにおいて880万円で落札)でした。
-:落札金額を思えば、かなりの出世だと思います。先生に先見の明があったわけですね。
牧:いえいえ、良く見えたんですよ(笑)。
-:見た目で選んで、血統とかは後から知った、という感じですか?
牧:そうですね。
-:血統的には、まだ芝で未勝利らしいですからね。そんな意味でも、僕はエルムステークスのあの馬場で勝ったことにビックリしました。
牧:そうなんですよね。あとから芝でまだ勝っていないんだと思ってね。
-:109戦(11月19日現在)して、未勝利らしいです。
牧:先日、障害を勝っていなかったですか?
「担当している子が『春とは馬が全然違う』と言っていましたね。トモの緩さがあって、馬が詰まらず伸びていたので。それが勝負所の反応に出て、今はトモがシッカリして、別馬のような感じですね」
-:そうですね。徐々に適性を広げつつあるということですね(笑)。お父さんも休みつつとはいえ、息の長い活躍をしていました。今の段階で結果を残されているというのは、今後がかなり楽しみですね。
牧:そうですね。まだ伸び盛りですからね。
-:気性面の扱いやすさは、勝負根性に繋がったりしますか?
牧:それは、ありますね。
-:韓国遠征後、放牧はどこに行かれていたのですか?
牧:放牧はグリーンウッド(トレーニング)です。放牧中でも度々観に行っています。
-:放牧先でも変化というか、成長が感じ取れるエピソードはありましたか?
牧:担当している子が「春とは馬が全然違う」と言っていましたね。トモの緩さがあって、馬が詰まらず伸びていたので。それが勝負所の反応に出て、今はトモがシッカリして、別馬のような感じですね。
-:繰り返しになりますけど、マーチSの競馬を観て、なかなかこういう馬はいないので、今後絶対に良くなるだろうなと思いながら観ていたのですが、それにしてもここ2戦は鮮やかというか、ガラッと変わってきましたが、左右の回り、そういう不安はないですか?
牧:ええ、全然……。京都、中山、どこでも勝っていますから、頼もしいです。
▲22日、CWコースで追い切られたロンドンタウン
一杯に追われて6F80.2-64.8-50.6-37.8-12.5秒をマークした
-:次は近郊の中京なので、京都とか中京なら輸送に不安はないと思いますけど、そういう心配もないですか?
牧:心配ないですよ。左回りも東京コースで勝っているし。
-:逆に言えば、どこが一番良いのか……と思ってしまいますね。
牧:理想はドバイです。行けたら良いんですけどね。そのためにも、まずはG1を勝たないと。
-:ドバイという目標も教えていただきましたが、今後はダートの番組も充実する季節です。どういった路線を目指すなどのプランはありますか?
牧:国内のG1を勝たないことにはドバイにも選ばれないですから、とりあえずそこのG1を必ず獲るということですね。
-:ちなみに、僕は音楽もちょくちょく聞くのですが、気になっていたのが馬名です。ファンや関係者から、ビートルズに関する話題を言われることは最近増えましたか?
牧:いや、全然言われないですね(笑)。
-:そうでしたか……。日本のロックファンが応援する馬名だと思います(笑)。枠や休み明けなどの不安もなさそうですね。
牧:ええ、特にないですね。
-:じゃあ、本当に次は能力勝負で、今の段階でどこまで通用するか、ですね。
牧:どんな競馬でもできるので、今の力がどこまで通用するか期待したいです。
「先生も言っていたと思いますが、本当に大人しくて手の掛からない子なんです。それはデビュー当初から一貫していますね。身体が柔らかくて、かなり使っても痛まないところは強み。獣医さんにも『疲れている』と言われることがほとんどないんですよ。
この夏、放牧から帰ってきてからは気合い乗りが良くなった点はありますね。ハミ掛かりが以前よりも良くなりました。以前は反応が悪く、押して押してという競馬だったのが変化してきた理由はそこかもしれません。でも、普通のハミだとガチっと噛みすぎるので、リングにして少し遊びがあるようにしています。
韓国の馬場は、日本と砂圧が1cmしか違わないらしいのですが、砂がきめ細やかで水を撒いたら締まる感じ。韓国の競馬自体が多少多めに水を撒いていたようですからね。自分が歩いても脚が全く沈まなかったですよ。“この馬場なら、ひょっとしたらクリソライトに勝てるかも”と思いました。
今まで、高速馬場のエルムステークスや、少し力が抜けていたコリアカップ、佐賀記念も中央馬は少なかったですよね。特殊な条件で勝ち上がってきたことも事実。これだけのメンバーでどれだけやれるか、試金石の一戦だと思います」
プロフィール
【牧田 和弥】 Kazuya Makita
1972年3月4日生まれ。山梨県出身。1990年に騎手免許を取得し、江田照男騎手らと同期でデビュー。95年にタヤスダビンチの新潟3歳Sで重賞初制覇を飾る。障害レースでも活躍し、99年にヒサコーボンバーの阪神ジャンプSで障害重賞初勝利。2005年に引退し、加藤敬二厩舎の調教助手に転身。2010年に調教師免許を取得し、翌11年に開業。JRA重賞は2016年にトゥインクルのダイヤモンドS、ロンドンタウンのエルムSの2勝。