「化け物かも」テイエムジンソク初G1でもスピード見せる
2017/11/26(日)
-:ちなみに以前放牧から帰ってきた時に、けっこう馬体が減っていた時があったと思うのですが?
武:そうですね。470キロくらいまで減っていて、やっぱり牧場での調整が難しいみたいです。やっぱり気性が激しいので、あんまり食わせるとちょっとケガをしそうだったり、そういうことだと思うんですよ。あれはウチの先生に言って、牧場ともジックリ話をしてもらいました。上に行く馬だとは思っていたので。本当に大崩れしたのはあの時くらいじゃないですかね。あの時は“ここまでやってきたことが終わったな”と思うくらい、本当にダメでしたからね。
-:そこから3走目(東大路S)くらいから結果を残していましたね。
武:あの時にふと“この馬は化け物かも”と思ったんですよ。あの状態で勝ったので。あの時に僕は絶対にダメだと思っていました。
-:当時のコメントなんかも、けっこう下向きなコメントでしたね。
武:前々走くらいまで、ずっとトモが甘い馬だったので。エルムSに行って、放牧から帰ってきたら良くなっていて、この間も体調面と言うよりはトモの感じが良かったので、やれるかなという感じはあったんですけどね。
-:ここに来て重賞を勝てたというのは、やっぱり体の成長もまだまだあったということですね。
武:ちょっとずつバランスが真っ直ぐになってきていることと、やっぱりずっと左に傾いている馬で、今も傾いているのですが、そこが大きいですよね。トモもずっと右トモの踏み込みが悪かったのですが、本当に良くなってきて。
-:右が弱いから、左に行ってしまうということなのでしょうか。
武:どうなんですかねぇ。何かそういうモタれ方じゃないんですよね。肩が張っているというか、最初は馬が怖いのかなと思うような逃げ方だったので。
「あの馬は前に馬を置いていないと常歩が出来ないんですよ。それに気付いたのも特殊なのですが、地下道で1回バッと走られて、他の厩舎の3頭くらいいるところに突っ込んでいったんですよ。当たりそうになって止まって、その馬の後ろをスッと歩いていたんですよ。その時にやっとこの馬の攻略法を見付けたような感じでした(笑)」
-:調教に乗られていて、気に掛けることというのはたくさんあると思いますけど、どういった点がございますか?
武:あの馬は前に馬を置いていないと常歩が出来ないんですよ。それに気付いたのも特殊なのですが、地下道で1回バッと走られて、他の厩舎の3頭くらいいるところに突っ込んでいったんですよ。当たりそうになって止まって、その馬の後ろをスッと歩いていたんですよ。それが2~3年前なのですが、その時にやっとこの馬の攻略法を見付けたような感じでした(笑)。たまたまなんですけどね。それで、大人しい馬を前に付けて、後ろにピタッと付けると歩き出して、普段から常に気を付けていることはそれくらいですかね。速歩をほぐしたりも、ずっと馬の後ろで今もやっていますけどね。やっぱり1頭になるとパニックになる馬なので、大人しい古馬の男の子と常に行っていますね。
-:調教の時計なんかを見ると、2歳時というか、かなり早い段階からかなり水準のものを出していましたものね。
武:出していましたね。でも、今も激しいので、気は抜けないんですけどね。
-:馬房ではどんな感じですか?
武:馬房では大人しいですね。そういう面では大人しんですよ。本当に運動場でもそんなに悪いことはしないんですけどね。人が乗って馬場に向かうとテンションがガッと上がっちゃうので。
-:それは走りたいという気持ちなんですか。それとも走らされたくないのですか?
武:どういう気持ちなんですかねぇ。本当に掴みどころがないというか、ただテンションが上がるんだと思うんですけどね。走りたくない感じでもないし、走りたい訳でもないと思うんですけどね。
「今回はちょっと目イチで仕上げていくつもりでいるので。今まではフワッとしか仕上げていないんですよ。北海道前までは、竹之下先輩もやるとテンションが上がるので、ずっと気にされていたので、北海道競馬の滞在で掴みだしたというか、シッカリやるようになって」
-:この馬はほぼ関西圏でのレースじゃないですか。生で観たことはないのですが、競馬場ではどうですか?
武:競馬場では京都、阪神でも、当日輸送でだいたい12~14キロ減るんですよね。そこは安定してそれくらい減るので、今はつくりやすくなっているのですが、最初は行く度にガッと体が減っていたので。競馬場でも少しイレ込んでいる面もありますし、前回なんかでもパドックでずっとチャカチャカしていましたし、この馬が落ち着いて大人しいですねというのは、今のところは見られないですね。
-:やっぱり競馬場でもジョッキーが乗ると違いますか?
武:乗らなくてもずっと、ですね。前走はちょっとそれが酷かったですね。ちょっと心配だったのですが、今回の方が馬はガス抜きできて、普段からも少し大人しくなっていますし、良い意味で気合いは入っていますけどね。今回はちょっと目イチで仕上げていくつもりでいるので。今まではフワッとしか仕上げていないんですよ。北海道前までは、竹之下先輩もやるとテンションが上がるので、ずっと気にされていたので、北海道競馬の滞在で掴みだしたというか、シッカリやるようになって。
-:数字だけ見ると、けっこうやっているのかなという感じを受けたのですが?
武:跳びがデカくて、普段あの子のペースで普通にやっても60秒を切ったくらいのキャンターになるんですよ。それをずっと制御して、制御してやってきているんですけどね。目一杯に2~3週追ったというのはあまりないんですよね。今週の日曜日も古川先輩に競馬の日に帰ってきてもらうので。古川先輩は左回りで乗ったことがないので、今週の日曜日に追い切りに乗ってもらって、その感触次第で来週坂路でやるか、下でやるか決めようと思っています。
-:今回の仕上げで、どれだけテンションが持つかというのも課題ですね。
武:そうですね。それはずっと見ながらやっていて、昨日、一昨日やって、今日も乗ったのですが、いつもよりもそんなにテンションも上がっていなかったですし。
-:今朝(11/24)はもう乗られたのですか?
武:いつも一番で乗っています。馬が少ないよりも多い方がね。
-:そうですよね。普通煩い馬だったら、あんまりいない時間にやるものです。
武:それが分からなかったので、なるべく少ない時間にやっていたのが、馬がいると意外と大丈夫だなと。ちょっと特殊なケースですよね。
-:競走馬というか、馬は不思議ですね。
武:そうですね。
-:今回の仕上げでどれだけ伸びしろがあるのかというのも楽しみですね?
武:そうですね。あとは枠順が、あの子の持ち味が活きる枠順を引いてくれれば良いですけどね。
-:チャンピオンズCは3年しかやっていないですが、比較的内枠ばかり来ているイメージがあるのですが?
武:それでもウチはちょっと外目の方が。まあ、僕はですけどね。スタートは速いので。
-:あと並びも必要ですかね。他に行く馬が変に被されるような馬が外に入るよりはという感じですか?
武:一番良いのは内に速いヤツがいてくれて、それを外から。まあ、1~2コーナーですね。古川先輩は折り合いに関して、今の日本のジョッキーの中でも、トップレベルに上手いなと思っているので。
-:手の柔らかさというか、見た目だけですけど、そう感じていました。
武:そうですね。やっぱり重心も動かないジョッキーですし、本当に折り合いはずば抜けていると思います。
「良い意味でも悪い意味でも、古川先輩は人から回ってきている馬なので、強気な競馬をしてきたのが良かったのかと思います。サイレンススズカもなし崩しに脚を使っているようで、大丈夫だったという感じで。あの馬もちょっと引っ張ると息遣いが悪くなる馬で、テンにどれだけ速くいっても、引っ張って行っても終いは同じくらいなので、その辺の特性を活かしてくれているのかなと思います」
-:乗り替わられるジョッキーもフワッと乗れる方だったのが、そこはこの馬にとっても良かったのかなと?
武:そうですね。そして、良い意味でも悪い意味でも、古川先輩は人から回ってきている馬なので、とりあえず強気な競馬をしてきたのが良かったのかなと思いますけどね。サイレンススズカもそんな感じでしたね。なし崩しに脚を使っているようで、大丈夫だったという感じで。あの馬もちょっと引っ張ると息遣いが悪くなる馬で、テンにどれだけ速くいっても、引っ張って行っても終いは同じくらいなので、その辺の特性を活かしてくれているのかなと思います。
-:古川ジョッキーもちょっとG1には縁がないかもしれないですけど、ベテランの味を活かして強気な競馬をして欲しいですね?
武:僕は勝つ馬に乗ったらジョッキーは勝つと思っているので。ミルコ(デムーロ)の勝負強さはちょっと異常なところがありますけど(笑)。
-:馬場状態というのは必要ですか?
武:速い時計にも対応できる馬なので。エルムSもそうでしたけど、普段は良馬場でもけっこう時計の速い馬なので、何も気にしていないですけどね。
-:逆に時計が掛かるよりは、時計が速い方がまだイイという感じですか?
武:僕はあんまり気にならないですけどね。やっぱり1~2コーナーの入りで、枠順が一番気になるかなと思いますけどね。
-:ファンは、4コーナーや直線を重視してしまいますが、この馬に関しては1コーナーまでの入りの攻防が重要。今年はよりたくさん見どころのあるレースですね。
武:今までのレースを観ていただければ分かると思うのですが、押していっても1~2コーナーでスッ~と折り合いというか、ハミがあんまり掛からずに入っていっている時の方が断然強い競馬をしているので、あそこでちょっと噛まれると、どうしても向正面も左に張るし、何か最後ピリッとしない感じですからね。
-:レースに向けての意気込みをお願いできますか?
武:相手も一気に強くなりますし、本当にあくまでチャレンジャーのつもりでやっています。付け入る隙はあると思うので、あの子の力を出してくれれば、良いパフォーマンスができるんじゃないかと思いますけどね。
-:ちなみに今後はどういう路線を歩まれるのですか?ドバイというプランはなさそうですか?
武:そこは分からないですね。実は、エルムSでロンドンタウンに負けて、すぐに「ロンドンタウンと一緒に韓国に行ってくれ」と言われて、僕がロンドンタウンの調教パートナーで行ったのです。ロンドンタウンなんかは気性的に大人しくて、こっちの検疫を入れて2週間くらいだったですが、やっぱり僕の中では(テイエム)ジンソクならどういう調整ができるかなとか、考えながら乗っていました。それは、ホースマンとしてみんな絶対に持っているものだと思うのですが、そういう感覚の時に、あの馬に果たしてできるのかな、と毎日思ってやっていたので。環境がガラッと変わったら、ちょっと難しいんじゃないかなと思いますけどね。来年以降は僕もいなくなるので。
-:開業が控えていますね。
武:そうですね。さすがに開業して、普段乗る訳にはいかないでしょうからね。
-:まずはチャンピオンズカップでどんなレースをしてくれるか、楽しみにしています。
武:ありがとうございます。
プロフィール
【武 英智】 Hidenori Take
1980年12月31日生まれ。滋賀県出身。父(永祥氏)が元騎手、祖父(平三氏)が元調教師で、武豊騎手の親戚という競馬一家に育つ。1996年に競馬学校に入学し、1999年に北村宏司、高田潤騎手らと同期でデビュー。1年目から22勝を挙げた。2012年に現役を引退し。木原一良厩舎の調教助手に転身。2016年12月に調教師免許試験に合格。2018年度から新規開業する。