2年連続で勝ち星は1月の中山だけ 大好きな季節とコースで激走だ フェルメッツァ
2017/12/29(金)
フェルメッツァの季節がやってきた。2017年の夏は小倉記念3着など奮闘したが、勝ち星は2015年から2年連続で1月の中山戦だけ。兄フラガラッハは夏場に強かったが、弟は冬場に食欲も成績もアップする。木戸克征調教助手は「今が一番充実している」と話し、重賞制覇への意気込みを語った。
-:中山金杯(G3)に向かうフェルメッツァ(牡7、栗東・松永幹厩舎)ですが、前走(中日新聞杯14着)や前々走(福島記念6着)は力を出し切れず、惜しい競馬でしたね。
木戸克征調教助手:前走は勝負どころで前が詰まって、全く自分の競馬が出来なかったのですが、デキ自体は引き続き良いので、自分の競馬をしてくれたら、重賞でもやれると思っていますね。
フェルメッツァにとって得意条件が揃う今回、木戸助手の声も弾む
-:根本的に1回使った方が良い馬ですね。
木:特に、冬場は飼葉をモリモリ食べて、体重もけっこう増えてくるので、1回使ってからの方が良いと思いますね。
-:そういう意味では、福島記念も馬券的には押さえた方が良い感じはしたのですが、ちょっと間隔があったので、そこがどうかなという感じがしたのですが、頑張っていましたよね。
木:でも、この馬は基本的には冬場の方が良いので。
-:そうなんですね。それを考えたら、夏は小倉記念で3着もありましたから、心強いです。
木:この馬は冬しか走らないと思っていたので、この夏は本当に頑張ったなと思いますね。
-:余談ですが、兄のフラガラッハは夏の方が走っていたような……。
木:そうなんですよ。兄弟で全然違いますね。この馬は夏場になったら飼葉も食べないし、ボッとした感じで元気もなくなるんですよ。けど、冬場はモリモリ飼葉を食べて。夏場だとボ~~ッとしていますね。夏は仮眠しているような。苦手な夏の中で3着に来てくれているので、歳を追う毎にドンドン力を付けてくれている感じはありますね。
-:普通ディープ産駒で6歳と言ったら、割り引きしてしまいそうですが。
木:この馬の場合は、若い時はけっこうヤンチャでしたからね。ゲートの中でうるさかったり、競馬でも引っ掛かったりしていたのですが、歳を追う毎に段々と精神的に落ち着いてきて、そういう悪さを見せなくなってきているので。それが競馬でも良い結果になってきているのかなと思いますね。
-:ただ、この歳でもこんなに元気なのは珍しいですね。
木:それに、肉体的な面は昔より今の方が良いくらいです。
-:数字面でも追い切りの時計を見ると、まだまだ元気ですよね。
木:ええ、この馬はまだ若さがありますね。
-:脚の使い方に関しては、ディープ産駒らしい瞬発力よりも長く使うタイプと見ていいですか?
木:小回りで先行から粘り込む形が、この馬のベストなパターンだと思うので。それに、並ばれたら勝負根性を見せてくれます。そこからどれだけ粘り込めるか、というのがこの馬の競馬ですね。
-:福島記念は前には苦しい展開で、捲られてよく沈まなかったなと。
木:そうなんですよ。スピードこそはそこまでないのですが、気持ちの強さがあります。持続力、根性がこの馬の持ち味だと思いますね。
-:時季的なものといい、お兄さんのフラガラッハとは脚質が違いますね。
木:違いますね。普通だったらディープ(産駒)は切れると思うのですが、全然そういう感じじゃないですね(笑)。
作年も1月の中山で勝利を挙げオープン入りを果たした
-:それと前走は直線でけっこう押し込まれるような感じでしたからね。
木:位置取りは良かったなと思ったのですが、やっぱり内にいた分、包まれた感じでした。
-:以前も厩舎に伺い、今日も拝見させていただいていますが、なかなか元気な馬です。この性格で、輸送して出張馬房での様子はどうですか?
木:いや、大人しいですよ。昔は馬運車の中で立ち上がったりしていたんですけどね。だから、馬運車の中でも広枠にしてもらったり、肩にロープをして万全な状態でないと危ないですからね。今はもうしないですけどね。昔はゲートもメッチャうるさかったので、出遅れていましたもんね。その点、今はちょっとズブくなって、メンコを外しているんですよ。外している分、ちょっとガチャガチャしますけど、昔みたいに潜って、何かしようとは思わないので、まだ大丈夫ですよ、心配ないですよ。
-:明けて7歳になりますが、むしろ盛んですね(笑)。
木:体力的にはまだ行けると思いますよ。まだ、オープンでは勝っていないですからね。勝ちたいです。しかし、ハンデは落ちないですかね……。
-:ハンデの話をすると、福島のオープンで2着になって、次からなぜか55になって、と。
木:落ちるってあまり見たことがないですよね。
「けっこう攻めているのですが、体重が変わらないので、体調が良い証拠だと思いますね。獣医さんにも心臓の音を聞いてもらったら『元気が良い』と言われましたね。それに、この馬は本当に丈夫ですね」
-:中山といえば、急坂が控えます。
木:この馬は中山を得意としているので。重賞では初めての挑戦ですが、楽しみです。
-:ディープ×トニービンで中山が得意というのも異色な気がしますね。東京の方が良さそうな額面に受けます。
木:そうですよね。本当に分からないです(笑)。昔はけっこう追い込みの切れ味タイプだったみたいですけど……。僕が担当したのは4歳あたりで、まだけっこううるさい時期で、ゲートやでもけっこう出遅れていましたけどね。
-:馬房では撮影も大変でしたが、乗っていく時もけっこうヤンチャですか?
木:いや、大人しいです。ただ、昔はダクを踏むところで、ダクを踏みながら、口が利かない感じでダッシュしたりしていたんですよ。あとはCWコースに入る時や、けっこう手前の方からキャンターでボンと出て、そのままCWコースに入っていくような感じでした。
-:切り替えが出来るようになったのですかね。
木:競馬でもけっこううるさい面があったのですが、最近は競馬でもすごく大人しくなって、手が掛からないですよ。
-:パドックでの気合いの入り方はどうですか。
木:昔はけっこうチャカついたりしていたのですが、今はボッと歩いている感じですね。精神的にはオッチャンになったなという感じですよね(笑)。体的にはまだ若いですけどね。今回は叩き3走目ですけど、冬場は体重が全く変わらないですね。しかも、過去今までで一番重いくらいですね。けっこう攻めているのですが、体重が変わらないので、体調が良い証拠だと思いますね。獣医さんにも心臓の音を聞いてもらったら「元気が良い」と言われましたね。それに、この馬は本当に丈夫ですね。今まで本当にケガで休んだことがないので、それはスゴいと思いますね。
-:ちなみに、放牧に出る時は、だいたい(ノーザンファーム)しがらきさんですか。
木:牧場では危惧されていますよ。おそらく広いところの方が良いのでしょう……。コースを出たら元気一杯走っていくみたいな感じで、この馬のスケールに合っていないんでしょうね(笑)。身体こそ大きくないですけど、何か秘めたるモノを持っているので、爆発力といいますか。
-:しぶとい競馬が良いということで、被されることの気性的な問題ないですね。
木:問題ないですね。怖がったりだ、気にしたりはないですね。だから、どれだけゴチャついても、大丈夫だと思いますよ。
-:勝負強いですね。フットワーク的にはどんな馬ですか?
木:スゴく軽いというか、リズム良く走ってくれるので、その辺の軽さがやっぱり小回りに向いている感じですね。本当にリズミカルに走ってくれるので、この馬に乗っていると本当に気持ちが良いです。最近こそ、終いはやっぱりズブくなったところがありますが、ずっと良い脚は使ってくれるので、全体の時計は速いですよ。馬具も基本的にはメンコくらいで、あとは舌を越すので舌縛りや、そんなものですかね。調教もメッチャ乗りやすいですし、手前もちゃんと替えてくれるし、優等生ですよ。ディープ産駒でこの歳まで走っている馬って、あまりいないですよね。
-:あとは、メンタル的にちゃんと走る気になれさえすれば、来年もまだまだ。
木:まだやれる感じですね。
-:理想の枠や馬場はありますか?
木:枠は内枠の方が良いかと思います。内枠で、ちょっとうるさいので偶数で。馬場的にはあんまり問題ないと思いますね。福島の500万で使った雨が降っている時でも、道悪でメチャクチャ出遅れて、それでも勝ったんですよね。その時にスゴいなと思いましたね。(道悪は)問題ないと思いますね。あとは自分の展開に持っていければ、という感じがしますね。
デビューが待ち遠しい妹のアレグレメンテ
兄フラガラッハに続き厩舎ゆかりの血統だ
-:またお兄さんとも違う個性の持ち主ですが、またディープ産駒でありながら、このキャラクターという。この要素はどこから来ているんですかね。
木:何なんだろう。分からないですね。あそこにいるのが半妹(アレグレメンテ)ですよ。全然タイプが違うと思いますね。父がステイゴールドで2歳ですね。この馬もうるさいみたいです。やっぱりこの兄弟は一癖ありますね(笑)。
-:穏やかな先生の厩舎なのに……。
木:なぜか癖がある馬が多いですね。馬場に下ろすときはけっこうガッと行くところがあるので、競馬でもパドックが終わってからいつも先出なんですよ。前に馬がいて走っていったら、けっこう一緒に付いていって走っていこうとするので、1回ジョッキーを落としたこともあるので。
-:最後にレースに向けて意気込みをお願いできますか。
木:今は一番充実している時期だと思うので、この馬に勝ちを取って欲しいですね。やれると思っていますので、これからも頑張って欲しいです。
馬房でも元気なフェルメッツァ 写真でみた以上に撮影が大変でした(笑)
プロフィール
【木戸 克征】Katsuyuki Kido
1987年12月23日生まれ、滋賀県出身の血液型B型。学生時代、周囲に競馬ファンが多かった影響で競馬を知り、ディープインパクト全盛時も現場で観戦。競馬の仕事に就くことを志し、高校卒業後、北海道のノースヒルズ、鳥取の大山ヒルズでキャリアを重ねた。
今年3月にはドバイ遠征にも帯同。現地でアウォーディーの調教にも携わった。「自分のたちの馬で海外に行くというのは、一生にあるかないかですからね。良い経験をさせてもらいましたよ」と当時を振り返るが、まだトレセン歴の浅い若きホースマン。今後も素質馬が揃う松永幹夫厩舎の躍進を支える。