シンザン記念制したベストの条件 あえて馬群割って突き抜ける キョウヘイ
2017/12/29(金)
キョウヘイが得意の京都マイル戦で自慢の末脚を見せる。シンザン記念を勝ったときのような道悪が得意のイメージが強い馬だが、前走のリゲルSは良馬場で僅差の4着。馬群に突っ込める長所を武器に、秋から好勝負を続けている。今回は初重賞勝ちの得意コース。宮本博調教師は、先々を見据えた賞金加算に自信をのぞかせた。
-:京都金杯(G3)に向かうキョウヘイ(牡4、栗東・宮本厩舎)ですが、この馬を見ていて、差し馬なのに馬群に突っ込んで競馬をするのはスゴいなと思いました。敢えてそうしているのですか?
宮本博調教師:そうなんですよ。これは、馬群の外から行こうと思ったら、馬から逃げちゃうんですよ。走る闘争心がなくなるみたいな感じで、それで、あの馬の性格がよく分かったので、直線はわざと馬群の中に入れていっています。
-:それは、いつ頃手の内というか、把握されたのですか?
宮:ずっと高倉(騎手)が乗っているのですが、もともと馬主さんが高倉君を気に入っていまして「高倉君で行こう」と言われました。彼が自分で考えた上でそうしたと思います。一番の決め手はアーリントンCで、外で横綱相撲をしようと思ったら、馬の気がなかったみたいで、それからですね。まだ馬が怖がりというのもあるのですが、それを徐々に解消する上で、なぜか「直線は馬群に入れても大丈夫だ」と、よく分からないですね……(笑)。
常に快く取材に答えてくれる宮本師 今年はクリンチャーと4歳勢の活躍に注目だ
-:怖がりなのに馬群に入っていく。真逆のベクトルですね。
宮:ただ、デビュー当初から比べたら、道中はどんどんポジションが前の方のレースにはなってきているんですよね。だから、ちょっとずつ進歩はあるんですよね。
-:次回にあたって、気になるのはそのポジションなのかなという気がするのですが。開幕週の馬場です。今後もそこが良くなってくれば良いのかとも思っています。
宮:その辺は高倉が一番知っているんじゃないですか?
-:そこら辺は長い目で見て、ということですね。
宮:そうですね。この馬自身、よくここまで成長したなと思いますよ。
-:正直、シンザン記念を勝たれた時は特殊な馬場だったので、その後、どれだけ成長していくのかが分かり辛かったのですが、この秋を見ていると、まだまだやれそうだなと。
宮:そうですよね。だから、良馬場でもちゃんと切れ味は持っているみたいですよ。
-:怖がりな性格ということですが、普段はどうですか?
宮:けっこうヤンチャですね。だから、本当に一番使いたいレース(カシオペアS)が出走取消になったのは、厩で暴れて、ちょっと蹄鉄がズレてしまったようで。すぐに処置したので、以降の2つの競馬は大丈夫だったのですが、この馬はそんなに大人しい馬ではないです。それにしても、だいぶ落ち着きは出てきたと思いますね。
-:今だから言えるのですが、春の立ち写真の撮影の時にけっこう暴れていたんですね。
宮:そうなんですよ。だから、この馬はそんなに大人しい馬ではないですよ。
-:カメラマンの人が「大丈夫か?」と言っていたのを、聞いていて、そういうイメージがあったので。
宮:たまたま出走取消になった時は、全てが悪い方に行って、取り消しなきゃいけないことになって、そんなに暴れても大丈夫だったのですが、何であんな一番うってつけの馬場で出走取消なんだと思いましたけどね。
-:中間の調整はいかがですか?
宮:出走取消の後、2回競馬を使って順調ですよ。性格面もそういうキリッとしたところがあるので、太る心配もありませんから。でも、徐々に体重がプラスになっているでしょ?それは、やっぱり色々な面で成長しているからだと思いますね。
-:明け4歳の一年は、前向きに見据えられるシーズンになりそうですね。ちなみに、性格面を考慮して、特殊な馬具やは着用していますか?
宮:いや、何も着けてはいないですね。
-:前は鼻革を着けていましたね。
宮:はい。そういう矯正力が強くないものは着けていますけどね。そこまで矯正するようなハミ受けでもないですからね。ただ、馬を怖がったというのが最初のポイントだったので、それが徐々に解消してきて、今はまだ現在進行形ですけど、成長しているところかと思っているので。
-:枠はいかがですか?
宮:関係ないですね。枠はどこでも良いと思います。
-:ちなみに、血統的にはこの馬のお父さんのリーチザクラウンで、他の産駒も気にされると思うのですが、傾向的な部分で感じられるところはありますか?
宮:これはサンデーの3×3ですよね。だから、やっぱりサンデーの血って、すごいなと思いますね。今はもう日本の競馬はサンデーだらけじゃないですか。それにこの激しさも、配合的な面からあるのかとも思いますね。でも、あのちいさな体なのに、よくあれだけ走ってくれるなと思いますよ。
-:馬体的には、先生から診ていかがですか?
宮:意図的に体重を増やすように、増やすように、持っていっているんですよね。エサの食べさせ方や色々あるのですが、440キロないし450キロになってくれても良いかなと思っています。
「ウチは3食なのですが、それを少しずつ分けるように、朝出てきて食わせて、4回エサをやったり……。これくらいにしておきます。これは企業秘密だからね(笑)」
-:食べさせ方の秘訣を、ちょっと細かく教えていただけますか?
宮:例えば、普通だったらウチは3食なのですが、それを少しずつ分けるように、朝出てきて食わせて、4回エサをやったり……。これくらいにしておきます。これは企業秘密だからね(笑)。
-:輸送先での食いが落ち方はないですか?
宮:個体差はありますが、競馬を意識したら、馬はやっぱり食べないですよ。でも、自分が体力を維持する分だけは、輸送の時でも食べますしね。
-:例えは悪いのですが、子供の小学校の運動会だったら、緊張してご飯を食べないことがありますよね。
宮:賢い馬というのは、勝負飼葉はあまり食べないと思いますよ。ヨソの馬たちもそうじゃないですか?でも、普段は食べているから大丈夫だと思います。そこは意図的に、スタッフと考えながらやっています。
-:馬体でいえば脚元が気になることはありませんか?
宮:そこまで馬が出来上がっていないですよ。身体が軽い分、やっぱり楽なんじゃないですかね。ただ、440~50、60は欲しいなと思うのは、僕の立場からはそう思います。
-:先々を考えると、賞金も加算しておかないと。
宮:そうですね。加算しなかったら、夏の番組編成で1600万になっちゃうでしょ。頑張って賞金加算をしたいです。
-:レースに向けての意気込みをお願いします。
宮:日々の調教が大事だと思っているので、僕がそんなに気負ったって仕方がないことなのでね(笑)。レースに関しては、色々と高倉とは話をしながらやっています。
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-:ちなみに菊花賞でも好走したクリンチャー(牡4、栗東・宮本厩舎)はどういう路線を歩まれそうですか?
宮:クリンチャーは1月4日に戻ってきます。仕上がり次第の競馬になっていくと思うんだけど、目標は京都記念(G2)と思っています。ただ、相手が強くなりそうだね。春の天皇賞を使いたいので、考えながらローテーションを組んでいこうと思っています。ただ、この馬はすぐに仕上がる馬ではないから、そこを考慮していきたいです。
-:セントライト記念の時もちょっと仕上がり具合が厳しそうかなという感じがありました。
宮:この馬は1回使ったらゴロっと変わるタイプの馬だしね。
-:分かりました。ありがとうございました。キョウヘイは馬名の由来からも、この前もテレビで取り上げられていましたね。
宮:取り上げられたのは3回目でしょうか。今回で3回目かな。今回は、僕はあんまり出ていないんですよ。前の2つではよくしゃべっていたのですが、名付け親の方が出ていたみたいなのでね。
-:オーナーも思い入れがある馬ですね。
宮:本当にね。ブログで見付けて「名前を付けて良いか」と聞いたみたいですよ。でも、キョウヘイという名前だったら、(馬名登録が)あるんと違うんかな、と思ったのですが、なかったんでこうやって付けることになって。そんな所縁のある馬なので、来年、もっと飛躍してくれたらと思います。
プロフィール
【宮本 博】Hiroshi Miyamoto
1963年3月27日生まれ。滋賀県出身。中尾謙太郎厩舎の厩務員、調教助手を経て2003年に調教師免許を取得。2004年に開業。2008年にデグラーティアの小倉2歳Sで重賞初制覇を飾る。2013年にJRA通算200勝を達成。JRAの重賞は5勝。