ダートも長距離も走った明け8歳牝馬 屈腱炎乗り越え4年ぶり美酒を デニムアンドルビー
2017/12/29(金)
-:中山金杯に向けての調整は、年末年始を挟みますね。
小:今年は中山金杯が土曜日なので、変則開催にならず、普通に水曜日に追い切れるのもいいですね。カレンダー的にちょうどいいですね。ただ冬場なので、太り過ぎないようにしないといけませんね。太りやすいタイプで、もうその兆候もあるので……。
-:ちょっと緩ませるとすぐに太ってしまうということですか?
小:そうですね。飼い葉もよく食べるので。そこは3歳時とは違いますね。あの頃は食べさせるのに必死でしたが、今はもう太らせないよう飼い葉を調整しています。
-:まだ数を使っていないのもあると思いますが、馬体も8歳になるとは思えないくらい若々しいですね。
小:8歳牝馬になると思うと不思議な気持ちですね。もう熟女です(笑)。
-:そういえば、2着になった宝塚記念や前走のチャレンジカップで、舌を出しながら追い込んでくるシーンが見受けられるのですが、あれは癖のようなものなのでしょうか?
小:普段は出さないんですよ。調教でも出さないです。一生懸命になると舌が出ちゃうんですかね(笑)。必死になっているのかもしれませんね。
-:舌を出している時は、よく好走している印象を受けます。
小:そういうレースは一生懸命になっているということなのかもしれませんね(笑)。ただ、いつも頑張ってくれていますからね。一瞬、オッと思わせる脚を使ってくれます。
「パドックに入るとデニムに声を掛けてくれるファンの方がいたり、横断幕があったり、もう4年は勝っていないのに、有馬記念のファン投票で下のほうに名前があったりして、嬉しいですね」
-:そんなデニムアンドルビーはファンの間でも大人気です。人気があるなと感じる場面はありますか?
小:パドックに入るとデニムに声を掛けてくれるファンの方がいたり、横断幕があったり、もう4年は勝っていないのに、有馬記念のファン投票で下のほうに名前があったりして、嬉しいですね。いろいろと贈り物もいただきます。
-:先ほど「気のキツさが出てきた」とおっしゃっていましたが、馬房の中での今のデニムはおとなしいですね?
小:この状態はおとなしいですね。例えば、触られて嫌な部分の首元を触ったりすると怒りますよ(笑)。
-:調教で乗り難しくなっているということはありますか?
小:全然ないですね。乗りやすいです。
-:今はおとなしいデニムですが、この子は変わってるなと思われる点はありますか?
小:癖というものはないのですが、ちょっと「自意識過剰なのでは?」と思う時はあります(笑)。パドックで引っ張っている時、ファンの皆さんはデニムが通る時にカメラを上げて構えるじゃないですか?その時、チラっとカメラを見てみたりするんです。この子はよくパドックでお客さんのほうを見ますね。
-:写真を撮られているのが分かるのですかね?
小:撮影の時は3歳の頃からジーっとカメラを見ていたりしていました。ファンの方が厩舎に来られて写真を撮ったりする時も、カメラ目線です(笑)。
-:以前のインタビューで「普段から牧場で愛されているのが分かる」ということをおっしゃっていました。これはどういうシーンから分かるのでしょう?
小:すごく扱いやすいんですよね。おでこをなでると甘えてくるんです。若いころから人に触られて、慣れているなと思います。ただ最近はおでこ以外の場所、例えば首元をなでると怒るんです。ブラッシングが嫌だったのか……。怒って噛みついてくるので、ここは皆さんの思っている可愛いデニムちゃんではないかもしれませんね。
-:こうして見ると冬毛もありますね。
小:冬になるとすぐに冬毛が生えるんです。冬を先取りする感じです(笑)。
-:デニムアンドルビーといえば、馬名意味は『活発でお洒落なお嬢さんをイメージして』とありますが本当にそういう感じのイメージなのでしょうか?
小:そうですね、厩舎の馬房の中ではじっとおとなしくしていますが、よくこんなこの子にピッタリな名前があったなと思っています。
-:小滝さんはいつ頃からデニムを担当されているのでしょうか?
小:最初は違う方が担当されていたのですが、ゲート試験の頃から担当になったので、まもなく5年になりますね。
-:5年も連れ添うと相当な愛着があるのでしょうね。第一印象は覚えていらっしゃいますか?
小:可愛い馬だなぁというのが第一印象ですね。新馬戦の時も僕や周りのスタッフが、福永騎手に「可愛いところがこの馬のウリですよ(笑)」と冗談で伝えたのをよく覚えていますよ。
-:初めて乗った時の感触はいかがでしたか?
小:まだ3歳になったばかりの牝馬だったので、頼りないところはありましたね。ラチにモタれたり、そういう若い仕草を見せていました。まだこんなに乗りやすい馬ではなかったです。それからだいぶ成長しましたね。
-:小滝さんにとって思い出のレースはありますか?
小:思い出のレースですか?いっぱいありますね。ジャパンカップで2着だった時、外国馬たちの間にスペースができた時は思い出に残っていますね。『うわぁ、開いた!これは来るな』と思いました。相手がちょっと強かったですね。
-:3勝の戦績以上にインパクトのある経歴だと思います。
小:よく言われますね。「G1勝ってなかったっけ?」とか……。
-:思い出のエピソードなどはありますか?
小:そうですね、屈腱炎治療から厩舎に帰ってきた後でしょうか。ザ石の後に体調不良になって、府中牝馬Sを回避した時ですね。毎日ケアして…。そこから何とか金鯱賞に間に合って…。
-:その経緯があった金鯱賞で上がり最速の末脚、本当に凄い馬ですね。さて最後に、これから中山金杯に向けて調整していくことになりますが、意気込みをお願いします。
小:チャレンジカップで久々にらしい競馬ができたので、中山金杯の舞台は少しトリッキーですが、デニム自身は元気なので、また一生懸命走っている姿を見てもらえればと思います。歳も歳なのであと何走できるか分かりませんが、しっかり調教してレースに向かおうと思いますので、応援よろしくお願いします。
プロフィール
【小滝 崇】Takashi Kotaki
小学生の時にエアダブリンやナリタブライアンのレースを観て、競馬の仕事に就くことを目指す。とりわけエアダブリンは高校の夏休みに牧場まで見に行ったほど。卒業後はノーザンホースパーク、現ノーザンファーム空港牧場、山元トレセンでそれぞれ働き、23歳でトレセンに配属になり野元昭厩舎に配属される。思い出に残っている馬はエーシンコンファーとエーシンジャッカル。解散後は現在所属している角居勝彦厩舎に異動して現在に至る。持ち乗り助手として、デニムアンドルビーを担当している。