不真面目、ガニ股で40戦連続重賞出走 10歳の"大賞典キラー"最後にひと花 ヒットザターゲット
2018/2/12(月)
-:ヒットザターゲットとの良い思い出を挙げると、どんなエピソードを思い出されますか。
清:良い思い出は、やっぱり目黒記念かな。あの時が、この馬にファンがいるんだな、と実感したんですよね。勝ってウィナーズサークルに上がって行く時も、沢山のファンがいてくれたので、ファンがいてくれるんだと実感して。
-:しかも、お客さんが多い日ですからね。天気も暑くてダービーの日で、光量の多い日で、秋の晴れとはちょっと違って、まさに晴れ舞台の感じがしましたね。
清:本当にそうでしたね。
-:あの時、自信はありましたか?
清:いや、人気ほどの実力差はないなと思っていたの、そこそこやれるだろうなと思っていましたが……まさか突き抜けるまで行くとは、と。
-:この馬のセールスポイントはどういったところだと思われますか?
清:多分、走っていても、ジョッキーは気を遣わなくて良いと思うんです。小牧さんも「何も考えんでも乗れるわ」と言っていましたからね。
-:でも、小倉も勝って、新潟も勝って、京都も勝って、スゴいことですよね。
清:スゴいですよ。これと言って大きなケガもなく10歳まで走って、頭が下がりますよ。
-:しかも、脚元のケアはずっと常につきまとっていたわけですよね。
清:そうですね。もともと前脚も開いていて、球節がモヤッとしたりするので、獣医さんとも相談しながら、常にそれは気を付けていますね。
-:現在の状態はどうですか?
清:前走の日経新春杯(6着)はちょっと(+16キロで)体重が思ったよりも重かったので、それを絞った感じですかね。状態は毛艶も良いし、最後なので悔いがないようにいきたいです。
▲追い切りは坂路を単走がメイン
春夏秋冬、数年間にわたり調教をつけてきた人馬
-:去年の京都大賞典(7着)の脚が悪くなかったので、個人的には、日経新春杯でもけっこう期待しました。
清:あれは、直線を向いた時にちょっとバラけ過ぎました。近くに馬がいなかったので、ああなってしまうとちょっと苦しいですね……。あれがもう少し馬が近くにいてくれたら。
-:そういう意味では京都大賞典はけっこうゴチャついていましたよね。
清:ええ。あんな感じの方が伸びてきてくれると思います。小倉だったら、もし内に付けたらゴチャゴチャするでしょうから。(小倉大賞典を)勝った時でも、ゴチャついた中でも、1頭ヒュッと内を突いてきたので。
-:馬場はやはり良馬場の方がいいのでしょうか?
清:綺麗な方が良いですね。重いのはダメですね。雨は走り辛そうに走るので。
-:これだけ活躍しているのに、けっこう条件は選ぶ馬ですね。
清:選びますねえ。ペースなんかは特に問いませんが、馬群がゴチャついてくれるのが良いでしょうからね。
「今まで応援していただいて、ありがとうございます。パドックでも色々な垂れ幕もあるし、ぬいぐるみも作ってくれているしね。見た時に若干ビックリしましたけどね。Tシャツみたいなものも作ってくれたり」
-:ヒットザターゲットのファンに向けて、伝えたいことはありますか?
清:今まで応援していただいて、ありがとうございます。パドックでも色々な垂れ幕もあるし、ぬいぐるみも作ってくれているしね。見た時に若干ビックリしましたけどね。Tシャツみたいなものも作ってくれたり。
-:そんなグッズまで作ってくれるファンもいたのですね。
清:他の媒体ですが、ネットでこの馬の掲示板もたまに目にしたりしていたのですが、誹謗中傷がなく、ヒットザターゲットを観て頑張ろうと思った、など前向きなコメントが多くて……。僕もそれに励まされました。
-:余談ですが、清生さんが今まで担当されてきた馬はどういった馬がいますか?
清:それこそヒットザターゲットの兄弟を一杯やりましたね。母ラティールの一番上の子、エテルノから、ジャズロック、ライトガイ。みんなうるささと不真面目さが共通していますね。
-:(兄弟馬を担当することで)ある程度経験を積んだというか、ノウハウを掴んだのではないでしょうか。
清:そうですね。特にエテルノは、乗ることに対して僕を進歩させてくれましたね。
-:小牧さんも、調整が難しい馬だから、厩舎スタッフに任せていていて良いと思うとよくおっしゃられていました。ちなみに、脚の外向といった部分で似たりはしていないですか。
清:さすがにそういうのはなかったですね。しかし、群を抜いて芦毛のエテルノは不真面目でしたね。でも、みんな総じて頭が良い。こっち(トレセン)だとうるさいけど、競馬に行ったら絶対に何もしないし。ヒットザターゲットのお母さんも、この厩舎に昔いて、今はもう引退してしまった担当だった人に聞いても、ちょっと遊ぶ性格らしくて。
-:厩舎ゆかりの血統とそのノウハウ。それが結実したのがヒットザターゲットだったわけですね。
清:そうですね。せめて種牡馬にしてあげたかったですけどね。1年に5~7頭くらいの種付けでもね。よく頑張ってくれたんで、最後くらい、あの馬に良い思いをさせてあげたいですけどね。
「重賞を勝たせてもらいましたし、印象深い馬の一頭ですね。記憶に残るレースといえば、札幌記念かなあ。負けてしまったけれど、ゴール前の勢いがスゴかったからね。京都大賞典でも良い走りをしていたし、厩舎の方も衰えは感じていないみたい。内枠じゃないと走らないところがあるだけに、今回も内枠を引けたらいいですね」
プロフィール
【清生 裕丈】Hirotake Kiyose
1983年10月10日生まれ、愛知県出身。中京競馬場が身近な場所にあったこと、ダービースタリオンが流行した世代ということもあり、自ずと競馬との親しみができる。グラスワンダーの活躍に感化され、競馬界を目指すことを決意。高校3年生の頃までは90kgも体重があったとのことだったが、競馬学校厩務員課程の規定があったため、走り込みを重ねて3ヶ月で30kgほどの減量に成功した。その後、日高大洋牧場などでの経歴を経て、厩務員課程に受かり、半年ほどの待機を経て栗東トレセンへ。加藤敬二厩舎では、ヒットザターゲットのきょうだいなどを担当してきた。デビューから手がけた愛馬ヒットザターゲットのことはターゲット、もしくはターと呼ぶ。