ケガの連続…競馬学校で留年を経験の若き苦労人 ダートの差し馬で輝き放つ個性派・森裕太朗
2018/2/22(木)
若手騎手にスポットを当てるインタビューシリーズ、今回はデビュー3年目を迎える栗東の森裕太朗(もり ゆうたろう)騎手に登場いただく。藤田菜七子、荻野極騎手らと同じく2016年にデビューを果たしたが、実際は競馬学校時代に幾多のケガに見舞われたため、留年を経験しての騎手人生。一見、この若さにして物静かなタイプに映るが、人一倍、いや人二倍、三倍と苦労してきたであろう、ここまでの経緯、今後の意気込みを語ってもらった。
第1章:2年目で倍増23勝も「まだまだ」
第2章: 家族3人で栗東に引っ越し夢かなえる
第3章: 目標はガッツあふれる「和田さん、幸さん」
第4章: 3月からはフリーに 自立した立場で更に飛躍を
-:デビュー3年目を迎える森裕太朗騎手について、ここまでのキャリアを振り返っていただきたいと思います。よろしくお願いします!いやあ、それにしてもここ最近の栗東は寒いですね。
森裕太朗騎手:よろしくお願いします。寒いですね。気温がマイナスなんてことばかりで手が痛いですね。
-:それにしても、けっこう薄着じゃないですか。
森:そうですか。でも、調教に乗るので動きますからね。何枚か重ね着して調節し易いようにしています。
▲3年目の飛躍を誓う森裕太朗騎手
-:そこは若いだけありますね。デビューから3年目を迎えるわけですが、昨年も23勝と着実にデビューイヤーの勝ち星から伸ばされましたね。
森:1年目に比べたら、勝ち鞍も倍近く増えて、乗り鞍も増えて、色々乗せてもらって経験になった一年でした。でも、やっぱりまだまだ技術面の方がしっかりしていないですし、先輩ジョッキーに指摘されることが多いので、まだまだ、としか言えません……。具体的には、競馬中の3~4コーナーで動く際の踏み遅れが多いので、今年はそこが課題です。
-:以前、他の媒体での取材では「差し」が得意と言っていましたね。
森:そうですね。差しが得意、と今でもよく言うのですが、裏を返せば結局踏み遅れて、ワンテンポ遅れて動いているからそう見えることもあります。なので、一概に差しが得意という訳でもないのです……。ただ、好きか嫌いかでいえば、追い込み、差しが好きと言えば好きなのですがね。やっぱり最後に差して勝って、気持ち良く決めたいという思いもありますから。
-:しかし、逃げて勝ったりしていたので、そう言われている割に、印象は違うなとも思っていたんです。
森:そうですか。それと、1800mは勝たせてもらっているレースが多いかもしれません。
-:ということは?自分のデータ分析をしたりするのですか。
森:いやあ、あんまりしないですね。
-:1800mといえば、去年のヤングジョッキーズシリーズ(YJS)は最後、中山のダート1800mで勝ちましたね。
森:ああ、そうですね。あのまま勝てずに帰りたくはなかったですからね。馬のお陰があるのですが、予選で3勝もしていたので、これでダメだったら「乗り馬に恵まれただけかよ」と思われるのも嫌だったので、最後はどうしても勝ちたいと思っていました。最後の最後ですが、しっかり結果を残せたのは良かったと思いますね。
-:実際に乗られる側として、先輩ジョッキーと乗るのと若手同士というああいう特異な環境で乗るのとでは、感覚の違いはありますか。
森:正直、若手同士だと危ないですかね。やっぱり若手だけだと、どうしてもヨレたり、ペース配分だったりが違ったりしてくるので。しかも、ああいうシリーズで皆、積極的なレースが多く、前々の競馬になることが多いですから。普段のレースと違うとは感じましたね。
-:しかも、中央から地方に行って、地方から中央に来たら、慣れていないコースに乗るジョッキーも何人かはいる訳ですからね。
森:そういう場所の違いもあると思いますし、難しいレースだと思いましたね。
-:YJSファイナルラウンド中山で勝たれたレースは、馬券的には波乱の結果でした。4番人気→13番人気→7番人気での決着。こういうシリーズ特有だと思いました。
森:あの馬(メイプルレインボー)はハマったなと思いましたね。前々が流れて、後ろで脚が溜まって。他の馬も普段追い込まないような馬が来ているように、異質なレースでしたね。
▲昨年暮れのYJSで勝利した森騎手
-:普段、アドバイスを受ける先輩がいたり、所属先の先生(鈴木孝調教師)にも助言を受けたりしますか。
森:やっぱり(鈴木孝志)先生はすごく競馬を観てくれているので、なるべくレースが終わった後や火曜日の空いた時間に「あの時はああだっただろう」と教えてくれることは多いですね。ジョッキーだと、近い先輩だったらやっぱり松若(風馬)先輩はご飯を一緒に行ったりもするので、色々教えてくれたりはしますね。他には、松山(弘平)先輩だったり、和田(竜二)さんにもアドバイスをもらったりします。レースで、色々な先輩の邪魔をしてしまった時も少なくはないので「ここはこうして考えて乗ってみよう」といった形で教えていただきます。
-:ズバリ、怒られることには強い方ですか?
森:う~ん、頭ではわかってはいるのですが、それを出来ないことが多いので……。自分で言うのも良くないのですが、人に言われてすぐにできないタイプなので、けっこう何回か怒られて、何度も試してやっとできるタイプなので、時間が掛かるところがありますね。
-:よく言えば晩成型ですね。
森:昔、空手をやっていまして、よく怒られていました。勝負しなければいけない場面で結果が出なかった時、ミスをした場合、勝負事には厳しい親だったので。というのも、父が高校の空手の顧問で、その後も空手の先生もやっていたのですが、母もずっと空手をやっていたので。「何回言ったら分かるんだ」みたいに、よく言われていました。
▲YJSでは3位に食い込んだ
-:おじいちゃん、おばあちゃんがたまに競馬場に応援に来て「裕太朗!」と応援されていますね。
森:いや、たまにどころか毎週来ていますね(笑)。
-:今でもみんな家族は宮城ですか。
森:弟が東京に出て、妹2人と母が宮城にいて、父は東京です。
-:じゃあ、関東に行かれた時は観に来たり。
森:長女はまだ観たことがなくて、福島開催があるから、その時に来るかなと思いますね。
-:家族は絆が強そうですね。
森:ええ、平均がわからないですが、ウチの家族は仲が良いと思います。
-:お母さんとしたら心配で、毎週気が気でないんじゃないですか。
森:でも、乗っている間は元気ということですから。万が一、落馬したり、自分の身に何かあったら騎手クラブからすぐに電話がいくシステムになっていますからね。安否はすぐにわかるはずです。今までレースで落ちたのは3~4回くらいですかね。
-:昔の学校の時と比べたら……?
森:学校の時もそんなに落ちていなかったのですがね。ケガはしていないのが何よりです。