ディープスカイ以上の手応えで送り出す!
2010/5/22(土)
昆貢調教師
-:この度、昆先生・並びにヒルノダムールについても、競馬ラボでは初めての登場という事で、デビュー前からの話を含めてお伺いしていきたいと思います。ヒルノダムールは、祖母が海外GⅠ馬ではあるものの、それほど目立った血統ではなかったと思うのですが、入厩当初の印象を改めてお聞かせください。
■■■ ダービーを意識してきた素質 ■■■
昆:遅生まれの仔だったので、育成所からは「だいたい秋口から下ろそうか」という話でした。なるべくゆっくりしてあげたいなと思っていたんですけれど、秋に栗東に入厩して、1・2本調教をやってからいきなり頭角を現したというか「これは凄いな」と。そこで「藤田騎手に乗せないとアカンな」と乗せたら、跨ってスグに「ダービーに行ける」って言いましたからね。それだけの乗り味と気品を感じたんじゃありませんか。
-:お話の通り、デビュー前から藤田騎手は絶賛していたようでした。
昆:ああゆう一流ジョッキーでも感じるところはあったんじゃないでしょうかね。
-:改めて振り返ってみると、デビュー戦は勝ちに等しい惜しい内容でした。
昆:ちょっと性格的に新馬向きじゃなかったのでしょうね。先頭に立つと止めてしまうようなところもありましたから。でも、勝った馬もアリゼオだから、しょうがないかと。勝てなかっただけで、内容的には満足していますね。
-:あの時は重馬場だったと思いますが、この馬の体型をみると、比較的、脚がスラーっとしていて、道悪は苦手なようにも思えますが、その点はいかがでしょうか。
昆:藤田君も言うように、一流馬というのは、どんな条件でもこなせるのが一流馬です。なので、それは関係ないと思います。
-:キャリア2戦目の未勝利戦は、馬込みの中にあえて入れるようなレース振りでアッサリ勝ち上がりましたね。
昆:レースに関しては藤田君に任せていた部分があるので、わからないところもありますが、テーマを考えながら、課題を与えていたと思います。
-:その当時、先生からこの馬に対する課題といったものは感じなかったのでしょうか?
昆:いやいや、使いながら課題が出て、それをひとつずつクリアしてきたんですよ。ゲートが悪かったり、子供っぽかったり、5月20日でやっと3歳ですから、年齢的にも成長させなければいけないところがありましたからね。ラジオNIKKEI杯2歳Sも、藤田君が言わなければ使わなかったんですけれど、いずれは対戦する馬ですからね。一回やってみる事で力関係も分かってくるから、使ってみようと。僕的にはあのへんとやるのは、先でもいいかと思っていたのですけれどね。
-:そのラジオNIKKEI杯は、ゲートで大きく出遅れてしまいました。
昆:ゲートでパニックになってしまって、走るリズムもハミもかからないような状態で。ジョッキーも相当ストレスが溜まったようだけれども、早い段階でああゆう事がわかったので、矯正しながらここまで来られました。
-:その時点でのキャリアの浅さが出てしまったと。
昆:キャリアも浅いし、まだ子供で、競馬というものに集中しきれていませんでしたから。ただ、みえてきた課題をひとつずつクリアして、本番に向けてまだ時間もありましたので。ゲートなんかも直ってきましたよ。クリアしないといけないと思っていたことは、皐月賞の時は大丈夫でしたから。今のところ不安は無いですね。
-:ラジオNIKKEIを終えて、続く若駒Sではかなり評判になっていたルーラーシップを退けましたが、戦前のコメントからもかなり自信を感じました。
昆:僕は自信がありましたね。ルーラーシップも強いとは思いますが、ストーリー通りにいかないのが競馬ですから。ああゆう良血を負かして申し訳ないけれど、競馬は甘く無いということでしょう。
-:あのレースは先生が思い描いていたレース振りだったのではないでしょうか。
昆:そうですね。NIKKEI杯の時はリズムが悪くて伸びあぐねましたが、この馬の瞬発力は調教の時から凄いなと思っていて、溜めれば凄いんだなというところを見せてくれましたね。更に自信は湧いてきたというか。
-:では、ヒルノダムールの持ち味はというと、キレ味という事ですね。
昆:僕も過去のデータとかはあんまりみないタイプなんですが、あれだけの脚で京都の内回りの2000mを走ったのは、ディープインパクト以来らしいですよ。それを考えても、ダムールが相当な脚を使ったんだとわかります。
-:若葉Sではペルーサと対戦しましたが、不利を受けるシーンがみられました。
昆:流れ的には前が飛ばして、間が空いた後半グループの先頭を走っていたように、前の速いペースにも着いていって、後ろの馬のプレッシャーも受けてしまって、競馬的には可愛そうな形になってしまいました。ただ、あの速い流れを経験したことで、皐月賞にも繋がるなと思いましたし、負けたとはいえ、いいステップになりました。
-:あの時点で悲観するような事もなかったわけですね。
昆:ないですよ。ペルーサや、ルーラーシップが凄い勝ち方をしたとはいっても、もう対決しているし、レースは読めていますからね。競馬ファンの皆さんが思うほど差があるとは思ってないですよ。うちの馬は、若葉Sも皐月賞もスムーズな競馬をしていない中での2着ということは、スムーズな競馬ができれば逆転できる着差なんですよね。力負けとは思っていないです。
-:確かに皐月賞を含めて、敗因がハッキリしていますね。
昆:何も(アクシデントが)なければ、ルーラーシップを負かした時のような脚は使うので、ダービーはとにかくスムーズに回ってきてくれるのが一番です。
-:皐月賞も小回り特有の難しさに苦しめられた感がありました。
昆:4コーナーでいったんブレーキをかけてから、坂を上がってくるというのはね。結果、ハナ・ハナの2着であれ、そこで2着を拾うんですから、凄いと思いますね。
-:あのレースをみて、ヒルノダムールの力を再認識したファンも多いと思います。
昆:なんというか、ずっと勝って来たようなエリートっぽいキャリアではありませんが、課題をクリアしながら勝って来た馬で、派手さはないけれど、レース内容は強いと思いますよ。
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■最近の主な重賞勝利
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11年にわたる騎手生活を経て、2000年に厩舎を開業。着実に成績を積み重ねると、08年にJRA重賞初勝利を挙げると、同年にディープスカイがNHKマイルCと東京優駿の変則2冠を達成。 また、09年にはローレルゲレイロで高松宮記念とスプリンターズSのスプリントGⅠを春秋制覇。新たな厩舎のエース・ヒルノダムールで、師自身、2度目の戴冠を狙う。 |