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「毎日不安で仕方なかった。生き物は難しい」

-:よく金鯱賞に間に合いましたね?

小:少しぶり返したりもしたのですが、何回もケアを施しました。右後ろ脚を使っていなかったので、馬も走り方を忘れちゃっていたようで、なるべく痛い脚を使わないように走っていたことによって、今度はその分普段は痛くなっていないほうの脚も痛くなったりしていました。今まで通りの走り方を思い出してもらえるような調整を必死に行いました。

-:3週間以上舎飼だったということですが、その場合はつきっきりにならないといけないのでしょうか?

小:治療の時は僕がいないといけませんからね。朝も、昼も、そして夜20時くらいからまた獣医さんに来てもらって、爪の状態を診ていただいたり、痛み止めを打っていただいたりしました。

-:担当馬はデニム1頭だけでないですし、小滝さん自身も相当大変だったのではないですか?

小:厩舎の皆さんも色々とサポートしてくれました。あの時は夜も毎日厩舎に行きましたね。デニムも痛みが相当キツかった時期だったので。

-:痛み止めを打った後、自宅に帰る時も不安で仕方なかったのでは?

小:明日はどうなっているのかと毎晩思いました。良くなっているかもしれませんし、悪くなっているかもしれません。馬も毎日痛み止めの注射をされて、次第に注射が嫌になったようで。今までそういう経験はなかったですから。見ているだけでかわいそうでした。

-:よくデニムも我慢しましたね。

小:本当にそうですね。今でも注射は少し嫌がります。

-:お話を聞いているだけで、深刻さが伺えます。

小:原因が分からない時は、蹄葉炎が進行したらどうしようかと、ただただ不安でした。動かせないのですが、馬は動かないと疝痛を起こすこともありますから、もう色々なことが心配で……。

-:食欲はあったのでしょうか?

小:こういう場合は飼い葉の量も減らすので、逆にもっと食べたがっていました。でも我慢してもらいました。あの時以降馬もたくましくなって、それまで食べなかったものも食べるようになりましたよ。

-:治ったとはいえ、それから毎日気が抜けませんね。

小:また再発する可能性もありますから。きれいに完治するまで安心できませんでした。

-:結局のところ原因は何だったのでしょうか。

小:何かを踏んづけてしまって、その痛みが蹄の中にずっとこもっていたのかもしれません。すぐに症状が出る時もあれば、中にこもる時もあるんです。歩様には出ない時もあって、今回は突然でしたね。

-:生き物と付き合う難しさを改めて感じます。

小:復帰できるかどうか、それ以前に無事に繁殖に上がれるのか……という気持ちにもなりました。妻にもあの時は本当にいつもイライラしているように見えたと言われたことがあります。毎日不安で仕方なかったですから。生き物は難しいです。

-:このような経緯があった分、昨年のチャレンジカップで2着になった時はより嬉しかったのではないですか?

小:嬉しかったですね。1年休んで、復帰して使ってきて、「引退したほうがいいのでは」という声も聞こえてきたので、2着になった時はやはり走ると感じました。らしい競馬をしてくれてあわやの2着だったので、より嬉しかったです。

デニムアンドルビー

17年チャレンジC(G3)ではサトノクロニクルのクビ差2着と激走

-:お母さんになるデニムにメッセージを送るとしたら、どのような言葉をかけますか?

小:ひとまずお疲れさまでした、ですね。血統はピカイチですし、どんな種馬をつけても超良血の子どもが生まれてきますから、まずはいい仔を生んで、テレビで「このレースの勝ち馬は……、母はデニムアンドルビーです」といっぱい聞かせてほしいですね。

-:ここまで長く連れ添っていると、新聞の母馬欄に名前が載っているのを見て違和感もあるのではないですか?

小:そうですね(笑)。かわいい子がいっぱい生まれてほしいですね。

-:最後に、応援してくれたファンの方にメッセージをお願いします。

小:長いこと脚元の心配や繁殖に上がれるかなど心配をしていただいたり、純粋にこの子の走っている姿を追いかけて何かを重ね合わせていただいたり、ありがとうございました。無事繁殖入りでき、今は安心しています。パドックや競馬場でもう見られないのは寂しいかと思いますが、代わりに子どもたちがいっぱい走ってくれるはずです。デニムも、子どもちゃんたちも応援してもらえたら嬉しいです!

このインタビューを行った2日後の朝、デニムアンドルビーは慣れ親しんだ厩舎を出て、福島経由でこれから暮らす北海道へ戻っていった。最後まで人の手を煩わせることなく、おとなしく馬運車に乗っていったという。そしてその週末、彼女の引退レースの場所となった中京で、もう一頭の担当馬であるダブルフラットが嬉しい初勝利を挙げた。小滝助手は新たなパートナーと共に、再び大舞台を目指す。

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