早めの賞金加算から本番へ直行 『斬新ローテ』で戴冠へ プリモシーン
2018/4/1(日)
ノーザンファーム天栄・木實谷場長 独占インタビュー(1P)はコチラ⇒
-:フェアリーSを勝ったプリモシーン(牝3、美浦・木村厩舎)についてですが、状態面はいかがですか?
木:フェアリーS後に左前脚に少し骨瘤が出たのでケアしながら、桜花賞に向けては順調にメニューを消化しています。成長度合いで言ったら、アーモンドアイよりこちらのほうが顕著ですかね。この期間に体重が20~30キロ増えて、見た目にもわかるほど筋肉量も増えました。関西圏への輸送が初めてなので(馬体重が)増えて出てくるかはわからないですが、明らかに成長したなという感触です。
-:昨年(2017年)の夏にお伺いしたときから期待馬に挙げられていました。さらに動きは変わってきましたか?
木:調教はデビュー前から動いていたので期待馬に挙げたのですが、相変わらずよく動いていますよ。この馬は、速い時計で行っても同じ手応えで来られるスピード能力の高さが一番の武器だと思います。
-:プリモシーンも直行のローテーションです。
木:こちらもフェアリーSを使う前から、賞金を加算できたら桜花賞に直行するつもりでした。骨瘤が出たから予定を変更したわけではありませんよ。
-:賞金が足りていてもトライアルを使う馬もいますが、最近は間隔を開けて本番へ臨むケースが増えてきました。これまでの経験をふまえて、前哨戦を使わないほうが良い部分があるとお考えなのでしょうか?
木:馬自身はそのレースが本番かトライアルかはわからずに走るわけですからね。これは僕個人の感触ですけど、育成牧場の施設が充実し、ノウハウが蓄積されて調教の技術も確実に上がっています。なので、1回のレースに対しての調教量が以前より詰め込まれた状態で競馬をしているのではないかと感じています。牧場に戻ってくる馬たちを見ると、1回のレースの消耗度が昔より大きくなっていると感じるので、詰めて使うよりは1走ごと疲労を回復させ、次走に臨むのがベストなのかなと、個人的には考えています。
-:クラシックは競馬に携わる方にとって特別だと思いますが、無理はさせないというお考えですか?
木:うまくお答えするのが難しい質問ですね(苦笑)。この時期の3歳馬にとってクラシック路線というのは大きな目標ですし、私はもちろん現場で携わっているスタッフも出走させたいと思っています。ただ同時にこの時期は馬が一番成長する時期でもあるので、それを妨げないようにしたいという気持ちもあります。クラシックの後も競走生活は続くわけですし、相反する部分なのかもしれないですけど、「成長を促しながらクラシック戦線を歩んでいく」というのが理想的ですね。
-:どうしても、前走からの間隔が開くと「休み明けだからマイナスだ」と言われますが、予定通りですから不安はまったくないですね?
木:休み明けと言われますけど、実際には美浦・栗東トレセンと同じように毎日運動しているわけですからね。「休み明け」というフレーズはちょっと適していないのではないでしょうか。それで人気が落ちるなら、馬券を買うファンの皆さんもいいんじゃないですか(笑)。
「この時期の牝馬にとっては、2カ月という間隔が中途半端なのかもしれません。今までの経験を踏まえてのローテなので、結果に結びついてほしいですね」
-:クイーンCを勝ったテトラドラクマ(牝3、美浦・小西厩舎)についてもお聞きします。こちらは桜花賞には向かわず、NHKマイルCを目指すとのことですね。
木:東京のマイル戦でのパフォーマンスが素晴らしいですからね。アーモンドアイ、プリモシーンのローテーションの話と関連するのですが、ここ数年、ノーザンファームの育成馬でクイーンCを勝つことができました。でも、そこから桜花賞に行った馬の成績が良くないんですよね。
-:メジャーエンブレムもアエロリットも勝てませんでした。
木:2月に使って、ひと息入れて桜花賞に臨むのは、適度に間隔もとれてローテーションとしてベストかなと思っていました。しかし、メジャーエンブレムやアエロリットと、後にNHKマイルCを勝つような馬ですら、桜花賞で本来のパフォーマンスを発揮できなかったところを見ると、結果的にローテーションが合っていないのではないかと考えるようになってきました。
-:力のある馬でも勝てなかったことで、今年はローテーションを見直したのですね?
木:そういうことです。ですから、今年のアーモンドアイ、プリモシーンは1月に本賞金を獲得した時点でトライアルを使わず本番へ向かうローテーションを調教師の先生方に提案しました。テトラドラクマの方も自身のパフォーマンスを最大限発揮できるNHKマイルカップを最大目標とした場合、間に桜花賞を挟んで状態が落ちてしまっては元も子もないと考えて直行にしました。
-:ルージュバックも2月のきさらぎ賞から桜花賞を選択しましたが、結果は出ませんでした。原因はどのあたりにあるとお考えでしょうか?
木:この時期の牝馬にとっては、2カ月という間隔が中途半端なのかもしれませんね。一度疲れを取るために少し楽をさせて、そこから上げていかないといけないというところで、上がりきらなかった可能性は考えられます。
-:間隔が3カ月になれば、さらに良い状態で送り出せるということですね?
木:更に良い状態かと聞かれると一概には言えませんが、疲れもとれて、フレッシュな状態で臨めるのは間違いないと思います。アーモンドアイ、プリモシーン、テトラドラクマに関しては、今までの経験を踏まえてのローテーションですので結果に結びついてほしいですね。
-:このパターンが成功すると、また新しいスタイルが出来上がりますね。
木:スタイルってほどじゃないですよ(笑)。事実として、最近は関東馬が桜花賞を勝てていません。最後に勝ったアユサンもチューリップ賞の後に栗東に滞在していましたよね。去年のソウルスターリングも負けましたし、この時期の牝馬が関東から遠征してG1を勝つというのは、いろいろ工夫しなければならないと思いました。
ノーザンファーム天栄・木實谷場長 独占インタビュー
後編は4/8(日)に公開予定です!
ノーザンファーム天栄・木實谷場長 独占インタビュー(1P)はコチラ⇒
プロフィール
【木實谷 雄太】Yuta Kimiya
1980年8月5日生まれ。東京都出身。国学院久我山高から東京農工大へ進学し、馬術部に所属。卒業後の2003年からノーザンファーム空港で勤務し、同12月から山元トレーニングセンターへ。2011年10月からノーザンファーム天栄に移り、2015年から場長を務める。趣味は野球観戦で、東北楽天ゴールデンイーグルスの大ファン。