2010年のプロキオンステークスを4馬身差圧勝するなどダートの短距離で一世を風靡したケイアイガーベラ。平田修厩舎の看板馬として一時代を支えた功労馬が今度は母として活躍。2番仔・ケイアイノーテックがNHKマイルカップの有力馬の一角として挑むのだ。今回はその母子を担当した厩舎スタッフに、母が果たせなかったG1制覇の可能性を語ってもらった。

厩舎の看板馬が新たな看板候補を輩出

-:NHKマイルカップ(G1)の有力馬として挑むケイアイノーテック(牡3、栗東・平田厩舎)について伺いたいと思います。この馬のお母さん(ケイアイガーベラ)は同じ平田厩舎で活躍した馬で、担当されていたということなので、その話も踏まえつつ、佐々木助手にお伺いしたいと思います。(ケイアイノーテックが)入ってきた時の印象はどうでしたか?

佐々木剛調教助手:体型は似ていると思いましたね。前がシッカリしていて、トモがスッキリしていて、胸がすごく発達しているところですね。それだけに坂のあるコースは向いている印象があります。気性面は、普段こそはボーッとしているんですけど、たまにちょっと気が悪くなるところもありますね。お母さんもボーッとした感じで、普段の扱いは楽でしたね。

-:お母さんはダートで大活躍した馬ですが、返し馬で難しさを出したりしていた印象がありました。

佐:お母さんはそうですね。ジョッキーは大変だったと思います。ノーテックに関しては、そういうところはなかったですけどね。

ケイアイガーベラ

▲ダートで名を馳せたケイアイガーベラと佐々木助手(右)
父がディープインパクトに替わり、その子は芝マイルG1に挑む

-:お母さんは早い内に勝ち星こそ挙げていたものの、軌道に乗るまで時間が掛かりましたよね。いま振り返ると、体質面などが課題でしたか?

佐:あの頃は、体重も減ったり、扱いにくさもありました。脚元も弱かったので、簡単に競馬ができないところがありましたね。結果、3歳秋から本格化してダート短距離では敵なしでしたからね。

-:お母さんは圧倒的な人気で挑んだ武蔵野S(15着)で大敗したのが、今でも不思議です。

佐:あれは東京です。左回りが敗因だったんですよ。あの時は僕らもそれが分からなくて、輸送が苦手だと思っていたのです。最後に(中山の)カペラSでも勝ちましたし、本質的に左回りが苦手だったんですよね。

-:それを聞いてしまいますと、ノーテックの次走は(NHKマイルCで)東京になりますね……(苦笑)。

佐:それは大丈夫ですね。お母さんは肩の出が悪くて、硬さがありました。その辺が影響したかもしれないですね。

ケイアイノーテック

-:お母さんは「捌きが硬い」と聞いたことがありましたが、それが大きかったのですね。

佐:大きかったですね。

-:ケイアイノーテックのフットワークはどうですか?

佐:素晴らしいものがありますね。母と比較すると、当時は僕も攻め馬で余裕がなかったので、毎日引っ張るのが精一杯。跳びの感触を確かめる余裕がなかったですね。この子は今のところ制御が利きますし、乗りながら良い馬だと常々思っていますね。

-:その乗り味の良さというのはお母さん的なのか、もしくはディープ産駒のものなのか、どうでしょう。

佐:どうなんですかねぇ。お母さんも素晴らしかったですから、ディープだけではないと思うんですけどね。

-:この馬の馬主さんはお母さんと同じですよね。これだけの良血で、なおかつディープインパクト産駒という素晴らしい血統ですね。

佐:生産が新冠の個人経営の隆栄牧場なんですよね。引退してからもそのままそこで預かってもらっていて、この子の上(Fierce Impact)がセレクトセールに出ているんですよね。

ここ2戦が本来の走り 経験を積んで「競馬」を学習

-:デビュー戦は2017年6月3日で、世代の一番星となりました。厩舎に入ってきたのは今の時期くらいでしたか?

佐:そうです。早かったですね。1回(ゲート試験を受けたら放牧に)出す予定だったんですけど「走りが良いから使ってみよう」ということで、あれよ、あれよと順調に仕上がってくれました。

-:早々と勝ったことで暑い時期も回避できたし、じっくり時間も取れたわけですね。

佐:その後に20キロ増えたので、あれはやっぱり良い休養になったと思いますね。

-:そういう点では、前回(ニュージーランドTで-12キロ)減っているというのは決して良いことでは……。

佐:そうですね。心配でしたね。

-:普段の食いはどうですか?

佐:けっこう繊細で、食べる方ではないんですよ。時間を掛けてゆっくりというタイプなので、輸送先でのカイ食いがグッと落ちてしまいますよね。

ケイアイノーテック

-:次の東京も初コースで、初めての遠征場所でもあり、そういった不安もあるわけで。

佐:ありますね。それに、左回りがダメな可能性も全くないとは言い切れないですからね。調教で乗っている印象では特に不安は感じませんが。

-:デビュー戦を快勝されて、その次のデイリー杯2歳Sは3着でしたね。

佐:正直もうちょっとやれるかなと思ったんですけど、新馬戦みたいな競馬ができなかったんですよね。馬なりで最後だけ抜け出す、という競馬をしてくれると思ったんですけど、出てからが案外でなかなか反応しなくて……。それでも3着に来たものの、もっとやれるという思いはありました。

-:途中で故障した馬がいましたけど、その影響はなかったのですか。

佐:それはなかったですね。「道中で手応えがないから、4コーナーでもう圏内も厳しいかなと思ったけど、それでも最後は伸びていたから走りますね」とはジョッキーに言われました。朝日杯フューチュリティステークスも同様で、ゲートを出てからけっこう追われていて、勝負どころでも挟まれる不利。それでも4着まで来たので、負けたとはいえ頑張っていました。当時は寒い時期で太めもありましたからね。

「馬がやっと競馬を分かってくれたと思うんですよ。シッカリ自分でポジションを取りにいって、勝負どころでもすぐに反応して、という競馬をやっとできるようになって、それが前走でもできたので」


-:馬場的には、開幕週の東京は時計がけっこう出ていて、高速馬場になる可能性もあります。ケイアイノーテックの今年初戦となったこぶし賞(2着)は発表以上にかなり悪い馬場でした。それでも崩れなかった辺りをみても能力は高いと思いますが、条件的にはいかがですか?

佐:良馬場の方が良いですね。

-:この母系ですが、お母さんはトビも大きかった印象があります。軽さを持ち合わせているということですね。

佐:こぶし賞は馬場も悪かったですし、あの時は手応えもなかったですし、この馬の競馬ができていなかったですからね。それが平場(3月11日の500万下)で勝った時にコロッと変わりましたからね。それで、だいぶ信頼できるようになりましたね。

-:タイプ的に、使っていった方がいいのでしょうか?

佐:馬がやっと競馬を分かってくれたと僕は思うんですよ。出てから反応しないような競馬ではなくて、シッカリ自分でポジションを取りにいって、勝負どころでもすぐに反応して、という競馬をやっとできるようになって、それが前走でもできたので。これで大丈夫だと思っています。

課題は輸送と馬体減り 心身が噛み合えばもう一段の伸びしろも
ケイアイノーテック陣営インタビュー(2P)はコチラ⇒