皐月賞のリベンジ誓う「池江軍団」 広い府中で能力全開 キタノコマンドール&ジャンダルム
2018/5/22(火)
名門・池江泰寿厩舎はデニムアンドルビーの全弟・キタノコマンドールと名牝ビリーヴの子・ジャンダルムという良血2頭で挑む。皐月賞はともに後方からの競馬で不完全燃焼に終わったが、直線の長い東京コースは大歓迎。リベンジを誓う2頭の手応えと魅力を陣営に聞いた。
-:まずはキタノコマンドール(牡3、栗東・池江寿厩舎)について伺います。皐月賞を振り返っていただけますか?
兼武弘調教助手:後ろからの競馬になりましたし、外々を回るような感じの競馬でしたから、正直、あそこまで伸びて来てくれるとは思っていなかったですね。今年からダービーの優先出走権が皐月賞5着までとなったことも、この馬は運があるんだなというところですね。
-:中間の調整はいかがですか?
兼:まず皐月賞が終わってから、ノーザンファームしがらきの方に短期放牧に出しました。帰ってきてからも体の硬さもこの馬にしては良いほうで、順調に調整できているかなという感じですね。いくぶん体も成長しているような気もします。この短期間でそのように見受けられるというのは、いいことだと思いますね。
-:1週前追い切りはいかがでしたか?
兼:キタノコマンドールに負荷をかけたかったということで(併せ馬の)一番最後方にしましたけれども、しっかり伸びていましたし、先週より動きが良くなっているんじゃないかなと思います。1週前としては、いい追い切りができたんじゃないかと思っています。実質、指示としては6Fから15-15で入るというような感じの予定だったんですけれども、しっかりと伸びていますよね。十分に負荷をかけられた内容だったと思います。
-:展開的には恵まれなかった皐月賞でしたが、ダービーではガラリと変わりそうですか?
兼:そうですね。元々この馬の競馬を見る限りでは、東京コースの方が合いそうなイメージはあったので、東京2400mという舞台はいいのではないかと思っています。
-:何か大物感を持っている印象があります。
兼:3戦目にG1初挑戦で後ろから外々を回る展開で、あのように5着まで食い込んできたのは評価できるんじゃないかと思います。
-:精神的にダメージを受けているような感じもなさそうですか?
兼:はい。特に変わらないと思いますね。
-:新馬戦の時から前捌きに硬さがあると話されていましたが?
兼:体全体ですかね。硬さはあるかなという感じでしたね。
-:気温が上がってくると動けるようになるというのはあるのですか?
兼:筋肉自体というより、関節とイメージしていますので。もちろん暖かい方が動きやすいでしょうけど。普段はおっとりしているので、その分、印象としては捌きが硬く見えますけどね。パドックとか気合が乗ると脚も伸びますから踏み込みも良くなりますし。その辺は体の硬さだけではなく、気持ちの面もあると思いますね。
-:スイッチさえ入ればシャキッとしてきますか?
兼:そうですね。
-:では、全然気にしなくていいですか?
兼:普段通りの感じであれば。皐月賞やその前のすみれSみたいなパドックの雰囲気であればいいのではないかと思います。
-:皐月賞でも実際に上がり最速タイで来ているように終いの切れを武器にしている馬ですが、すみれSのように4コーナー引っ張りきりで上がってくる芸当ができるのも能力があってのことですか?
兼:馬群に取り付く脚は一級品だと思いますね。
-:皐月賞は応援していたファンも悔しかったと思いますが、それ以上に乗っているM.デムーロ騎手も乗り方ひとつでもうちょっと上に行けたのかなという思いもあるでしょうしね。
兼:そうかもしれないですね。皐月賞の無念をダービーにぶつけてもらえたらなと思っています。
-:皐月賞はダノンプレミアムが直前で回避したということで混戦ムードでしたが、今回は出走してきます。
兼:おそらく先行するでしょうし、それを見ながら競馬ができるのではないかという感じです。前に強い馬がいるので、目標にはなりますね。
-:乗りやすくなりますか?
兼:コース自体が東京のほうが間違いなく乗りやすいと思いますけどね。ゲートが開いてからでないと分からない部分がもちろんありますので。あとはミルコの勝負強さといったところですね。
-:フットワーク的には、雨が降るよりは良馬場でこそのタイプですか?
兼:その方がいいと思いますね。あれくらいの馬場でもしっかり伸びてはいましたけど。
-:良馬場だったらもう少し良い脚が使える可能性があると。
兼:そうですね。あと直線の長い東京であれば存分に発揮できるのではないかと思います。
-:能力の塊ですからね。
兼:秘めているポテンシャルは相当なものだと思うので。
-:それを発揮するには申し分のない舞台ですか?。
兼:そう思っています。そうであって欲しいというところですね。
-:枠もまだ分からないですしね。
兼:そうですね。それにキャリアもまだ浅いので。スタンド前からの発走になりますし、ダービーの雰囲気がどういう感じになるのかもあります。
-:ほとんどの馬が府中の芝2400mを未経験ですからね。
兼:それもありますね。どうなるかは分かりませんが、この馬の潜在能力に懸けてみたいというか。
-:疲労の回復という面に関して厩舎の評価はどうですか?
兼:新馬戦の頃はやっぱり回復が遅かったですけど、最近は体質が少しずつ強化されてきてカイ食いの方も良くなってきたかなと思います。
-:それだからこそ今朝のようなハードな追い切りも消化できると。
兼:はい。それができたということです。
-:来週の追い切りのプランは分かりませんが、このまま順調に行ってほしいですね。
兼:今週しっかりと負荷をかけられたので、来週は整える程度で良いんじゃないかと思っていますけど。なんとか無事に出走まで行けたら良いなと思いますね。
-:体重の増減はどのくらいを見ていますか?
兼:前走と変わりないくらいだと思います。明日が計量になるんですけど。前走は思いの外、向こうで増えていたんですよね。こちらで量った体重よりも向こうで競馬をした時の方が増えていました。
-:プラス12キロでした。
兼:初めて出張する馬にはよくある話なんですけど。なので今回は違ってくるのかもしれません。
-:そのへんは微調整をされるということですね?
兼:感じるところがあれば変わってくるかもしれないですね。
-:まだ4戦しかしていないからベスト体重も分からないですね。
兼:成長もしていますしね。前走より多少減るだろうなという読みはしています。
-:皐月賞以上の結果を期待しています。
兼:そうですね。
-:馬場に泣いた感のあるジャンダルム(牡3、栗東・池江寿厩舎)についての展望もお願いします。
兼:皐月賞を振り返りますと、タイミングが合わなくて後方からの競馬になってしまって、最後のキレもあの馬場で少し削がれてしまったところはありました。条件としてはパンパンの良馬場がいいんだろうなと思いました。
-:前走は馬場、ゲートと敗因がハッキリしているということですね。体重はプラス8キロでしたね?
兼:成長もしていますし、増えていてもいいと思っていたので、全然問題ないです。現在は500キロです。輸送したら同じくらいになるんではないでしょうか。
-:中間の動きはいかがですか?
兼:競馬の後に少し疲れは出ていたんですけど、その疲れも取れて先週、今週としっかりと追い切ることができました。回復力も良くなってきていますし、体調は戻っていますよ。
-:2週前追い切りではキタノコマンドールに先着していました。
兼:はい。一瞬の脚は相当なものを持っていますね。
-:皐月賞の着順以上の力を持っている可能性があるということですね。ダービーはスローペースになって瞬発力勝負が求められることもありますし、人気以上の走りが期待できそうですか?
兼:うまく噛み合って、この馬の瞬発力が生かせるレースになればいいですね。あとはユタカさんにお任せします。まだ成長段階だと思っていますし、巻き返してほしいです。
-:2頭で挑むダービーに向けた意気込み、ファンの方へのメッセージをお願いします。
兼:この2頭は血統面も含めて注目されますけど、なんとか無事にダービーまで調整していきたいと思います。良い結果を出してもらえれば嬉しいです。応援よろしくお願いします。
プロフィール
【兼武 弘】 Hiroshi Kanetake
滋賀県出身。1983年3月6日生まれ。初めて観戦した競馬はダンスインザダークが勝った菊花賞。中学生の時に競馬好きの知り合いが多かったため、影響を受けてこの世界に入る。高校の卒業を待たずして、北海道の千歳国際牧場で修行。その後は滋賀の湘南牧場、トレセン近郊のグリーンウッドに勤め競馬学校に入学。卒業後、池江厩舎に所属。持ち乗りを経て攻め専の調教助手に。モットーは「馬1頭ずつ個々の個性を大切にする」こと。目標は「厩舎全体のことを把握できるように頑張る」こと。業界一といっても過言ではないビッグステーブルのムードメーカー的な存在。