史上初障害通算2000回騎乗の林満明騎手 197勝+106度の落馬を経験した男のラストメッセージ
2018/7/15(日)
-:今年2月はヨカグラとのコンビで連闘して連勝でしたね。
林:未勝利を勝って、連闘でオープンを勝って、その後、2回走らなくて、最後にこの間また勝ってくれて、力はあるんだけどね。上手く流れに乗れましたけど、能力がなかったら連闘でオープンは勝てないし。
-:それは最初に言っていた…。
林:気持ちかなというのもあるし、その時の体調もあるしね。
-:さっき言っていた「レース当日に気分が上がっている時だったら、より能力を発揮出来る」ということですね。
林:ええ、発揮出来ますね。馬って今日はやる気がない、みたいな時もあるからね。やる気があっても、途中でヘグったら、やる気をなくす馬もいるしね。頭が良過ぎるんだよな。
-:障害馬としては頭が賢すぎるのも難しいということですね。
林:平場では1勝馬だけど、能力的にはもっと上のはずだから、頭が良いと思うんですよね。だって、確か血統が良いんだよね。(祖母が)ダンスパートナーとか…。身体能力が高過ぎて、余計なことを考えてしまうんでしょうね。
-:余裕があり過ぎて、馬が物見しているのですか。
林:余裕がなくても物見をする馬はいるけど。
-:芝のレースでも、逃げていて物見をする馬はけっこう能力を隠しているというか、それが悪い方に出たらダメなんでしょうけどね。
林:ダメなんだろうけどね。
-:その中で障害馬をつくって、この馬は中山が合わないから京都の方が良いとか、そういうアドバイスもして、その馬に合った場所ということで、レースに勝たせてあげようとするのが商売ですもんね。
林:だと思いますね。今は本場とローカルがガッチリ決まっているから、本場向けの馬とローカル向けの馬を分けないといけないのでね。
-:これだけ同僚に愛されたジョッキーもなかなかいないんじゃなですか。
林:愛されたかどうか知らないけど、障害の乗り役は馬から下りたら、みんな仲が良いからね。乗っている時は別ですけどね。
-:その中でも、やっぱり愛されていると思いますよ。年下の人からしたら、タメ口な感じで接しているように見えて、尊敬されているんでしょうね。
林:それだったら良いけどね。
-:これから障害で乗っていく若いジョッキーにメッセージはありますか。
林:まずはケガをしないように、頑張って欲しいですね。
-:障害、平地関係なく、その一言ですよね。
林:関係なく、ね。
-:何か寂しくなりますね。障害の顔がまた一人。
林:僕は、自分としてはホッとした。
-:立派なホースマンであり、家庭では父でもあり。
林:立派じゃないかもしれんけど、まあまあ人並みには(笑)。
-:今、51歳ですが、一つのことをやり遂げた中年の星ですよね。
林:いやいやいや。
-:次に調教助手になられても、良い馬をつくっていただいて、それがファンの眼に触れる時が来ることを祈っています。
林:頑張ります。
-:また良い馬をつくれたら、教えてください。
林:頑張ります。
-:ありがとうございます。
プロフィール
【林 満明】Mitsuaki Hayashi
1966年生まれ、滋賀県出身。競馬学校騎手課程第1期生として吉田三郎厩舎所属でデビュー。デビューして数年は平地での騎乗もあったが、2011年より平地免許を返上。以降は障害レース一筋。
1997年にはJRA賞最多勝利障害騎手を獲得、2015年の中山グランドジャンプではアップトゥデイトに騎乗し、自身初のJG1制覇を成し遂げた。2017年6月にはJRA障害通算騎乗数を塗り替え、後に節目となる障害通算2000回騎乗をもっての引退を表明。2018年6月23日の東京ジャンプステークスが現役最後の騎乗となった。
引退を表明した2018年は19戦8勝のハイアベレージで勝ち星を重ね、惜しまれつつ引退。今後は調教助手の転身を目標としている。