ガイセン 他馬を気にせず期待通りの新馬勝ち 操縦性の良さで連勝だ
2018/7/19(木)
新種牡馬ダノンバラード産駒のガイセンが、卓越したレースセンスを武器に連勝を狙う。410キロ台と小柄ながら、福島でのデビュー戦は大外15番枠から先行抜け出しの競馬で快勝。手綱をとった田辺裕信騎手もその走りを絶賛した。函館への輸送もあって中2週での参戦となるが、環境の変化に戸惑うことなく順調そのもの。久々の重賞挑戦となる担当の粕谷学調教助手に、素顔や思い描くレース展開などを語ってもらった。
-:函館2歳ステークス(G3)に挑むガイセン(牡2、美浦・岩戸厩舎)についてよろしくお願いします。函館の新馬を制し、中2週での参戦になりますね。
粕谷学調教助手:よろしくお願いします。少しずつ環境に慣れてはきているのですが、まだちょっと神経質なところがありますね。
-:入ってきた時の印象はいかがでしたか?
粕:素直で、乗り手の指示にちゃんと従ってくれるようなところはありました。コントロールが利きやすくて、前向きさもあって我慢もできますので、新馬戦からやれそうな雰囲気はありましたね。期待通りに走ってくれましたね。
-:新馬戦はけっこう枠が外(15番)だったじゃないですか。開幕週であの枠だったので、そこがちょっとどうなのかなと。
粕:気にはなるといえばなりますけど、新馬戦ですし、そんなに(馬群が)密集するわけでもないですからね。練習の時はゲートも速かったので、ポンと出れれば、揉まれないで良いところに付けられるかなと思いましたので、変に内に入ってしまうと、出負けしたら大変ですからね。かえって外枠で良かったかなという気はしますけどね。
-:ある程度、デビュー戦前から手応えがあったということですね。前回終わってからの(田辺)ジョッキーのコメントというか、評価というのはどんな感じでしたか?
粕:1週前追い切りで、坂路で田辺に乗ってもらったんですけど「まだ2歳だから非力だ」ということでしたね。走り方から坂路はあまり得意じゃないんですよね。特にその日は馬場も重かったので、乗ってきた田辺が「ちょっと非力だけど、楽に追えていますよ」と言っていたのですが、競馬に行って「返し馬で本馬場に入れたら、走りがすごい良かった」と言っていましたね。
▲ガイセンの新馬戦 右が粕谷助手
-:水曜日(7/11)にこちらに来てからの調整はいかがですか。
粕:まだ角馬場くらいで、環境に慣らすほどですが、日曜日にチェックで少し時計を出してあげて、来週の水曜日に藤岡康太(騎手)を乗せて最終追い切りですね。日曜日も来週の水曜日もそんなに時計を出すというよりは疲れない程度に、ちょっと確認程度の追い切りで終わらせる予定ではありますけどね。さすがに福島で使って中2週なので、それで輸送もあったので、そんなにやっても疲れを残しちゃうだけなので、今は競馬の疲れと輸送の疲れと環境の変化に慣らすことを重視してあげていますね。
-:まだちょっと周りに慣れてきていないところがあるのですね。
粕:そうですね。だいぶ慣れてきましたけどね。
-:でも、大人しいには大人しいですね。
粕:大人しいですね。曳き運動や午後運動をしていてもリラックして歩けるようになっているので、少しずつは慣れてきましたね。やっぱり函館の環境って狭いじゃないですか?しかも、この場所なので、裏でバイクが走ったりだとか、車が走ったりするとそっちに意識が行っちゃうので。だいぶ慣れましたけど、最初来た時は「ここはどこだ?」という感じだったのですが、2日経ったから多少慣れてきたかなという感じはしますね。競馬に使ったら多分、北海道の牧場に出すという予定みたいなので、ちょっと夏休みになりますね。
-:厩舎には他の馬がいるにしても、こちらにしても、レース当日になると、競馬の音もけっこう聞こえますからね。
粕:そうですね。またちょっと緊張し始めるかもしれないですね。これから競馬を使う上で、少し慣れてもらわないとね。
-:他の馬を気にするところはないですか?
粕:それは大丈夫だと思います。競馬の時に、ウチの調教師が田辺に「他の馬を気にするようなところがあるのか」と聞いたら「全く気にしていなかった」と言っていたので、むしろ馬の方に寄っていくくらいだったんですよね。「最後の4コーナーから直線に入るくらいの時に、気にしているところがあったのか」と調教師が聞いたら、「ちょっと寄っていくくらいだった」と言っていて。
-:前に馬がいてくれた方が、より寄っていってくれた感じですね。
粕:何なら逃げちゃっても良いんですよね。逃げて後ろから来た時に、またガッと行って。
-:血統的(父ダノンバラード)にはけっこう未知数ですね。
粕:初年度産駒ですし、分からないですよね。どんなものなのか分からないですけど、繰り返しになりますが、素直でコントロールも利きやすいですし、前向きさがあるので。競馬を上手に走ってくれるという、そこがこの馬のセールスポイントですね。
-:お父さんの現役時代のレースを見直したりはしていますか。
粕:さすがにしていないですね。きっと、そこまで似ていないんじゃないですか。体の大きさも違いますし、この馬は400キロちょっとくらいしかないですしね。多分、体のサイズ的にはお母さんの方の体重を見たら、小さそうな感じだったので。
-:体的にはまだちょっと後ろが弱いという感じですか。
粕:そうですね。まだ2歳馬ですからね。もうちょっとパワーが付いてくればと思いますけど、それは時間が解決してくれるところだと思うので。
-:現段階で、後々こうなっていきそうという予測はありますか。
粕:このままコントロールの利きやすさを維持させるなら、馬がパワーアップしてくれば、これからも頑張ってくれるんじゃないかと思いますけどね。
-:距離的にはどこら辺になりそうですか。
粕:短いところだと思うんですけどね。1600mくらいまでで、多分平坦、小回りは今のところ一番良いのかなという気はしますけどね。いきなり東京の1600mだと、ちょっと苦しいかなという感じはしますけどね。
-:到着してから馬体重は量られましたか?
粕:ちょっと減ったのですが、日に日に戻ってきているので、このまま行けば、前走近くくらい、前走並みくらいまでは行くのかなと思いますね。
-:それにしても、かなりオットリしているというか、静かですね。2歳の関東馬を他の厩舎で観させてもらったのですが、けっこうチャカチャカしていましたからね。
粕:でも、2歳ですからね。もう眠そうにしていますからね。ウトウトしていますからね。
-:前回の仕上げとしては、もちろん2歳なのでそこまではキッチリ仕上げた感じではなかったのですね。
粕:まだパワー不足のところもあるので、あまりビシバシやっちゃうと良くないので、少しずつ少しずつ。
-:蹄は全然問題ないですか。
粕:全然、問題ないです。
-:粕谷さんにとって、重賞は久々の挑戦ですよね。
粕:そうですね。もう何年ぶりくらいだろうというくらいで、楽しみですよね。
-:逃げられるだけのテンのスピードはありますか。
粕:ゲートは前回も速かったですからね。でも、新馬戦とみんな2戦目となれば、またもっと速いでしょうから、ゲートを出た感じで、周りの出方を見て、行けるようなら行ったら良いし、行かないなら、何か先に行かせておいて、控えて3~4番手みたいな競馬で、新馬戦も勝ってきたので。
-:逆に、こうなったらあんまり良くないというケースはないですか?
粕:さっきのセールスポイントがセールスポイントでなくなった時じゃないですかね。今はこうやって大人しくしていますけど、輸送してきて、環境に慣れなくてイレ込んじゃって、人の指示を聞く耳も、周りの馬が気になっちゃって、コントロールが利かなくなったりしちゃうと、この馬の良さが消えちゃうので、そういうようにならないように、コンタクトをちゃんと取れるように普段から心掛けていますけどね。
-:重賞に向けての意気込みをお願いします。
粕:とりあえず、あと1週間ちょっと良い状態で持っていけるように、それで良い結果が出るように頑張りたいですね。
プロフィール
【粕谷 学】Manabu Kasuya
1977年生まれ、偶然にも取材日の7月13日が誕生日。東京都足立区出身。学生時代に一世を風靡していたダビスタをキッカケに競馬に興味を持ち、高校卒業後はオーストラリアで競馬の勉強を行う。帰国後は岩手県遠野市の馬の里で勤務。そこから競馬学校を経てトレセンに。仕事上、心がけていることは「無事。無事に良い状態で競馬に使った上に、毎日を無事に、それの積み重ねだと思うので」と語る。
思い出の馬はテンゲントッパ。1000万下までしかいけなかったが、誰もが驚くような爪の馬で、蹄鉄の釘を締めても数日で緩んでしまうほど。その加減とケアを丹念にやりつつ、競馬に送り出していた。「自分の仕事の中では、いい勉強をさせてもらった」と懐かしむ。馬のおかげで僕らも成り立っている、と謙虚な姿勢を忘れないホースマンでもある。