初重賞制覇は夏の名物レースで決める。森田直行調教師は、アイビスサマーダッシュに有力馬2頭を送り出す。厩舎ゆかりの血統でオープンまで上り詰めたダイメイプリンセスは、新潟直線1000m戦では2戦2勝。3歳牝馬ラブカンプーは1200mでは全2勝を含む連対率100%と短距離で底を見せていない。「ここまで行けると思わなかった」と語る2頭の魅力、念願の重賞タイトルにかける思いを調教師に聞いた。

成長につれて使い減りしなくなってきたダイメイプリンセス

-:アイビスサマーダッシュ(G3)に2頭を送り込む森田先生に伺います。よろしくお願いします。まず、ダイメイプリンセス(牝5、栗東・森田厩舎)について伺いたいのですが、千直競馬を2連勝して挑んだCBC賞は9着。振り返っていただけますか。

森田直行調教師:出遅れて、その上、挟まれてしまい、行き場がなくなってしまいました。レースになっていないので、度外視していいレースだと思います。

-:気候は酷暑が続いています。疲労はいかがですか?

森:体調は良さそうですけどね。

森田直行調教師

▲厩舎にとっても重賞初制覇のチャンスに意気込む森田直行調教師

-:この馬に出会った時の感触や印象を教えていただけますか。

森:身体は大きかったけど、筋肉量が少なかったですね。前は本当にトモが三角で、肉が付いていない印象でした。それでも素質はあると感じていたのですが、以前は放牧と入厩を繰り返していて、放牧に行ったら、若干肉が盛り上がってくる。そして、また競馬を使ったらほっそりして……。それが段々とトモの筋肉の減り方が少なくなってきましたね。1000mを2回勝ったこの春は、使ってもほぼ減らなくなって、あの時は体調がすごく良かったですね。

-:2回目の時は中1週でしたね。

森:そうなんです。だから、前だったらもっと空けないと体が戻るまで時間が掛かったけど、終わった後もトモが減っていなかったですから、それで中1週でも大丈夫だろう、ということでしたね。

-:血統的に見ますと、お父さんがキングヘイローで、母父がダンスインザダークじゃないですか。中~長距離も行けそうな血統背景なのに、1000mで勝つというのは、この馬の性格が出ているのでしょうか?

森:ダイメイフジ(父アグネスデジタル)もダイメイスズ(父ジャングルポケット)も3きょうだいは短いところですからね。お母さんの血統かと思います。弟のダイメイフジは身体がやや緩かったけど、ダイメイプリンセスはきょうだいの中では一番緩かったですね。

「厩舎にとっても、ゆかりのある馬でオープンまでいけるというのは、嬉しいことですよね。それにラブカンプーも含め、まさかここまでいけるとは思わなかったですからね」


-:ダイメイプリンセスは乗り難しさや競馬でポイントとなるところはありますか?

森:いえ、前走以外は楽に先行して競馬ができているし、そんなに引っ掛かりもしません。乗りにくいところはないと思いますけどね。

-:特に、2回目の新潟の時は余裕があったというか、強かったですね。担当されている方が、秋山さん(騎手)の同級生ですね。

森:そうです。担当者は持ち乗りですけど、乗るのは他の子に任せていますけどね。

-:調教ではどんな感じの馬でしょう、あれだけのスピードがあったら、持っていかれるということはないですか?

森:いや、そんなことはないし、普通に乗れていますからね。最初からそんなに乗り難しい馬ではなかったですから。

-:時季的に雨が降る可能性もなくはないので、馬場が重くなった場合はいかがですか?

森:大丈夫ですよ。新馬から5戦目くらいまでは馬場が悪かったらノメってダメで、道悪は下手なのかなと思いましたけど、段々と重でもこなすようになってきました。この間の新潟もけっこう雨が降って馬場がボコボコでしたけど、秋山騎手も「馬場は気にしなかった」と言っていましたからね。

-:コンスタントに活躍馬を出す、素晴らしいお母さんですね。ダイメイフジもダイメイプリンセスも、身体がしっかりしてきたら重馬場でも走れるというのは何となく似ていますね。

森:ダイメイフジも3歳の頃はまだ緩くて、去年の秋くらいから一気にトモの筋肉が増えて。厩舎にとっても、ゆかりのある馬でオープンまで行けるというのは、嬉しいことですよね。それにラブカンプーも含め、まさかここまで行けるとは思わなかったですからね。想像を成長力が上回ってくれました。

「スピード感のない」不思議なスプリンター 理想は外枠

-:しかも、ダイメイプリンセスとダイメイフジも個人オーナーの方で。

森:そうですね。現役のダイメイダークダイメイザバリヤルの子は全部ウチに任せてくれています。それに、この前もセレクトセールで5600万円の馬(レイナソフィアの2017)を買ってくれて、オーナーには感謝です。レイナソフィアの2017は祖母がゲルニカという馬で、アルゼンチンの牝馬チャンピオンですね。

-:ディープインパクト産駒も、セレクトセールでアルゼンチンの肌馬は高額で人気でしたね。

森:それで、ロードカナロア産駒ですから、それはやっぱり期待しますね。

-:1年後には厩舎に来る予定ですね。

森:無事にいってほしいですね。当歳はアクシデントも多くなりがちですが、さすがに1歳はなかなかないと思うので。

ダイメイプリンセス

-:管理馬をケガさせずにある程度数を使おうということになったら、やっぱり使った後のケアはすごく大事ですね。

森:だから、厩務員や助手が気付かないちょっとしたことも、私が見付けられるようにね……。毎朝全頭見て、ちょっとでも張っていようならチェックさせて、歩様も歩かせて、ほんの微かでも出が悪かったら「そこに電気を当てといて」と指示したり、それがやっぱり未然に防ぐ手段ですよね。追い切った日の午後もやっぱり見直し。そういうことをないがしろにしていたら、故障につながりますから。絶対に見逃さないようにね。

-:そういう苦労を重ねて、ダイメイプリンセスもラブカンプーもここまで辿り着けたということですね。最後にダイメイプリンセスのファンの方へ意気込みをお願いできますか?

森:ダイメイプリンセスは千直で結果を出していますから、そこに期待しています。CBC賞は出遅れて、参考外の競馬になってしまいましたが、まさか出遅れるとは思わなかったですけどね。

-:千直なら出遅れは大丈夫ですか?

森:わからないですね。まあ千直ではあまり前には行けないですからね。他に行くのが多いから、その後ろでジッと待機して、最後に脚を使いますから。2回とも抜け出す時の脚はすごかったです。2回目は時計も速かったですね。1回目は時計が遅かったから勝てたんじゃないかと思いましたけど、2回目の時はあの時計でスッと抜け出す脚がありますからね。

「この馬はいい意味で『スピード感がない』ですからね。トビが大きいからか、体が大きいからかわかりませんが、抜け出す時もそんなにスピード感はないですよね。何か不思議な馬ですよね」


-:見た目にも余裕がありましたからね。

森:だから、同じくらいの走りを見せてくれたらと思いますしね。あんまり速い時計を出したら脚元も心配ですけど、無事で帰ってきてくれたらと思いますし、みなさんに応援していただけたら、ありがたいですね。

-:開幕週の時計勝負は持ってこいだと思いますからね。

森:時計勝負で、2回目の時はどうかと思いましたけど、関係なかったですからね。この馬はいい意味で「スピード感がない」ですからね。トビが大きいからか、体が大きいからかわかりませんが、抜け出す時もそんなにスピード感はないですよね。何か不思議な馬ですよね。

-:乗っている秋山さんは自信満々で乗っている感じがしますね。

森:だから、ラブカンプーやダイメイフジの方が直線で必死に走っている感があるんですけど、ダイメイプリンセスは何か必死に走っている感がないのでね。ビデオを何回見直しても、完歩が大きいからかもしれないですけど、頭が低いし、余計に……。

ダイメイプリンセス

-:スプリンターとしては、ちょっと異色のタイプなのでしょうか?

森:そうですね。回転の速い方が、快速馬みたいな感じがしますけど、この子だけはどこか違いますね。1200mを勝った時もそんな感じでしたからね。これで止まるんじゃないかと思ったら、それでなだれ込んで勝ってしまうし、わからないですね(笑)。

-:そういう意味では、かなり能力は高いものを持っていると言えるのでしょうね。

森:関東の調教師にも「これはキングヘイローの子じゃないよ」「こんなキングヘイローの子はいないよ」と言われましたよ。

-:キングヘイローの最高傑作になれるように。

森:これが男馬だったらもっと良かったけど(笑)、女馬だから、繁殖で良い仔を。

-:ダイメイダークの跡を継ぐ、繁殖として次なる母馬ですね。

森:社長に長生きしてもらわないと、社長はもう78~9歳だし、あと10年以上は長生きしてもらわないと。社長にも喜んでもらわないといけないですね。

千直は初挑戦!1200mなら崩れ知らずの3歳ラブカンプー
森田直行調教師インタビュー(2P)はコチラ⇒