国分恭介騎手 減量&イン突きの好判断で8年ぶり重賞V アンドリエッテと秋のG1へ
2018/7/26(木)
-:国分恭介騎手といえば、今春はアイトーンのコンビも印象的でした。しかし、日本ダービーは残念ながら賞金が足りないというか、今年はボーダーが高過ぎましたね。
恭:ダービーはすごく辛かったですね。馬は頑張ってくれていたのに、賞金だけが足りなくて、あの時は精神的にきつかったですね。
-:馬の持ち味、セールスポイントはどういったところでしょう。
恭:今まで乗ったことがないタイプで、本当にこんな馬がいるのかな……というくらいの、不思議な馬ですね。(ハナに)行った時に限りますけど、体力がありますよし、すごく前脚が伸びていく馬なんですよね。
-:ストライドの良さということですか?
恭:はい。すごく前が伸びるんです。まだ馬も子供っぽいところもあるので、そういうところも変わってくれば、もっともっと成長するとは思いますね。
▲アイトーンを管理する五十嵐忠男厩舎はデビュー当初に所属 今でも厩舎との縁は深い
-:現段階ではハナにこだわりたい走りですか?
恭:そうですね。この間の白百合Sはメイショウテッコンが引っ掛かってきたので、控える競馬をしてみましたけど、トップスピードで負けてしまうので、その分、前に行きたいところがあるんですよね。スピードがあるよりも持続力に富んだ馬なので。
-:将来的には、長丁場の逃げ馬みたいなイメージですね。
恭:そうですね。もちろん短いところではないですよね。
-:気が早い話をすると、菊花賞もイメージされているのではないでしょうか。
恭:(条件適性としては)そうですね。距離は未知数ですけど、ペース次第によりますね。そこまで長くなると、逃げが絶対条件になりますからね。どうしても前に馬がいると、力むところがあるのでペース次第になりますけどね。力むと、馬のストライドがちょっと変わってきちゃうんですよね。良い脚の伸ばし方をしてくれなくなるので。
-:それは現状、調教でやって直るものではないですか?
恭:内で溜めて、さぁ、行けというタイプではないと思いますね。
-:今の形をしっかりコンスタントに出させるというか。
恭:そうですね。その形をつくった方が、馬は成績を上げられるはずなので。将来がある馬で、アイトーンで賞金加算の大事さをすごく身に染みたというか……。
-:やれることはかなりやっていたと思うんですけどね。
恭:いや……。皐月賞で5着に入っていれば、ダービーは何の問題もなかったわけですからね。ダービーに出ていたら、面白かったと思うんですよ。あのレースを観ていて、これは、アイトーンだったら良いところがあったなと思いましたね。
-:国分恭介騎手としては、年齢的には中堅とは言わずとも、若手の域ではもうなくなりましたよね。
恭:そうですね。もう中堅ですからね。下もだいぶ増えてきましたからね。
-:デビューから2ケタの年数になってきて、心境というか、競馬への心構えはありますか?
恭:心構えは、とりあえずどうやったらいい結果を残せるのか、考えて乗っていますけどね。やっぱり担当者だったり、関係者の笑顔が見たいので。僕が乗ったからこそ、良い結果が出たと思ってもらいたいので、そういう心境で乗っています。
▲デビュー2年目の2010年は府中牝馬ステークスを制するなど、年間52勝
将来を嘱望されていたが、8年ぶりの重賞制覇となった
-:たまにしか栗東に行かないのですが、やっぱり厩舎や五十嵐先生など、人付き合いを大事にされているのかなという感じがするのですが?
恭:そうですね。競馬に乗れるということがすごく幸せなことなので、任せてもらった以上は、良い結果を残したい気持ちはすごく強いです。若い頃は数を乗っていたので、そこまで思っていなかったですけど、チャンスをもらった時に結果が出せるように、しっかり準備しておくことを大事にしています。それが、体のトレーニングであったり、作戦であったり。
-:トレーニングはこまめにやられる方ですか?
恭:トレーニングはずっと前からやっているのですが、ウエイトトレーニングなどは身体が重くなるからしないですけど、体の使い方ですね。ずっと同じトレーナーに長いこと見てもらって。
-:専属ですか?
恭:はい。週2日で来てもらって。
-:栗東だったら、けっこう同じ人が何人か見ているとは聞きますが、個人のトレーナーということですね。
恭:そうですね。そこは自分で考えて。
-:レース前の作戦という部分は、けっこう新聞をこまめに見たりされるのですか?
恭:新聞もそうですし、映像も観ますよね。あとはジョッキーがどういうことを考えて乗りそうだな、という読みと、映像と乗った感じでイメージが違う場合もあるので、そういう時は出方次第で考えるようにしているんですけどね。
-:息抜きはありますか?
恭:最近は大丈夫ですけど、一時期ちょっと思い詰めてしまうことが多々あったので、最近はそれがなくなりましたね。
-:それは家族が出来てからプレッシャーが出たとか、ですか?
恭:いや、家族はずっと前からいるので。減量が取れて、乗れてないなとすごく思っていたので。結果を出せないと出せないで地に足が付いていないというか、そういうイメージが自分でも分かっていたので、競馬に行く度に“やっぱりな”と思っていたんですよね。こんな自分を乗せてもらっているのに申し訳ないなと思って、ドンドン塞ぎ込んじゃって、こんなんだと乗らない方が良いんだろうな、とずっと思う時期はありましたね。
-:自虐的になったわけですね。
恭:娘が生まれてからかなぁ。そんなことを言ったって、仕事はこれしかないから……。そんな父親に育てられた子も嫌ですよね。だから、余計なことを考えずに、必死にやってダメだったら諦めようと思って、気持ちを切り替えましたね。これだけ精一杯やってダメだったら……。それで、地に足が付いた感じがします。
-:それはいつ頃だったのですか?
恭:娘が今3歳半なので。一時期は積極的に乗るようにしましたね。ダメでもアピールして、競馬で休みが多かったので。
-:競馬で休みが多いとしんどいですよね。
恭:しんどかったですね。
▲アンドリエッテの追い切り後、牧田調教師と打ち合わせする国分騎手
-:いまは騎手も外国人の方が多数来たり、大変ですよね。
恭:でも、ありがたいことに、僕が乗っている馬のレベルは変わっていないので。もらったチャンスをいかに活かすか、ですからね。やっぱり五十嵐先生や牧田先生もそうですけど、気に掛けて乗せてもらっているので、そういう人のためにも、少しでも良い結果を残そう、という思いは日に日に強くなりましたね。
-:27歳なのに、しっかりしていますね。結局、息抜きについてはなかったですね(笑)。
恭:息抜きは、減量がしんどいのですが、食べるのが大好きなので。お酒を飲んだり、基本的にカフェインとアルコールと糖質があれば幸せですね、ははは(笑)。糖質は元気になりますからね。ご飯はそんなに食べないですけど、食事して、お酒を飲んで。家でも晩酌をするので、それが一番の息抜きですかね。僕はテレビ大好きなのですが、教育に悪いからということで、観させてもらえないので(笑)。あとは気分転換に運動はしていますね。走るのはよくやっていますね。
-:それは、自主トレ以外の気分転換として、ですか?
恭:その意味もありますね。ルームランナーじゃなくて、外を走るというのが大事ですね。(ご飯は)何でも好きなので、引退したら食べるだろうなと思って。
-:ストイックな考え方ですね。
恭:塞ぎ込まないように気を付けています。
-:兄弟の優作さんは塞ぎ込むタイプですか?
恭:いや、違いますね。優作はすごく明るいですね(笑)。
-:夏競馬も続きますし、秋もアンドリエッテやアイトーンと大きい舞台に挑めるかもしれません。夏から秋に向けての目標というか、意気込みがあれば教えていただけますか?
恭:ありがたいことに重賞に乗る機会があるので、すごくモチベーションになりますね。普段でも、メインレースに乗るというのはすごく嬉しいですよね。一番注目されるレースに乗せていただくということは。G1も乗せていただきましたし、そういう機会がドンドン増えるように、騎手としてのステージを上げられるように、努力したいなと思っています。同期のまっちゃん(松山弘平騎手)も頑張っていますからね。
プロフィール
【国分 恭介】Kyosuke Kokubun
1990年生まれ、茨城県出身。双子の兄は国分優作騎手で、競馬学校時代の同期には、松山弘平、丸山元気騎手らがいる。2009年3月に騎手デビュー。同年夏には重賞騎乗を果たすなど、早くから頭角を現すと、2年目は年間52勝を挙げる活躍。将来を期待された。
その後、勝ち星が思うように伸びず、重賞の舞台からも遠ざかっていたが、今年6月のマーメイドSを制し、約8年ぶりの重賞勝利を挙げた。日々のリラックス方法は食事。