ルチアーナミノル 遊びながら好時計で未勝利勝ち 名手も「走るね」
2018/8/26(日)
「チームミノル」で2度目のV目指す。小倉2歳ステークスに有力馬の一角として臨むルチアーナミノルは2年前の覇者レーヌミノルと厩舎・担当者・オーナーと同じ。ならば、自ずとあの圧勝劇の再現を期待してしまうが、担当の中井仁調教助手によれば、また違ったタイプという。夏の小倉2週目の未勝利戦を好時計勝ちした素質馬はどんな資質の持ち主なのか。クラシックへ向けての見込みも含め、語ってもらった。
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-:小倉2歳ステークス(G3)に挑戦するルチアーナミノル(牝2、栗東・本田厩舎)についてよろしくお願いします。前回、小倉1200mの勝ち時計(1分8秒2)が優秀だったと思うので、人気を集めると思います。厩舎としても(レーヌミノルで)勝っているレースでもありますし、(吉岡實)オーナーさんも同じですから、より注目される気がしていますが、デビュー前の印象から教えていただけますか。
中井仁調教助手:正直、まだトモも緩いですし、走ることへの集中力が出来ていない状態だったので、掲示板に載れば良いかなという思いでしたね。掲示板に載れば先々走ってくるだろう、というイメージで新馬は出したのですがね。
▲レーヌミノルも担当している中井助手
-:掲示板どころか2着でしたね。それに、新馬前の調教時計を見させてもらったのですが、けっこう出ていますね。
中:しかし、時計こそ出ているのですが、その時計と走りの内容がまだまだ噛み合っていなかったので。やっぱり前向きさが足りなくて、促して、促して時計でした。自分からグッと行く感じではなかったので。
-:あとから調教時計だけ見ると速く感じますが、実際に調教を見ている人だったら、そう思うのかもしれませんね。
中:普通に見ていたら、そうですね。
-:肉体的な仕上がりも、まだまだの状態でしたか。
中:まだまだでしたね。競馬は使えるけど、能力でどこまでやれるかという見立てでしたね。
-:中井助手といえば、レーヌミノルやフミノイマージンなど牝馬の活躍馬に乗られてきていると思うのですが、比較できる部分はありましたか?
中:タイプが違うので比較はし辛いのですが、思っている以上に時計が出るのは、やっぱり良い気がしましたけどね。良くなる余地がかなりある状態だったので。
▲馬房ではおとなしい様子のルチアーナミノル
-:環境に対しての順応度はいかがでしたか?
中:やっぱり女の子らしくピリピリしたり、敏感ではありますが、慣れは他の馬よりちょっと早いですよね。
-:そんな中でのデビュー戦。2着と見立て以上の結果でしたね。
中:そうですね。1400mだったので、付いていけるか心配があったので。スピードはありますけど、乗ったイメージだと距離がある方が力は出せる感触はありますけどね。
-:ということは、前回、1200m戦もこなせたというのは、能力の高さですか。
中:おそらくそうですね。とにかくセンスが良いです。それに、走る馬はスピードの絶対値が他と違いますから、そういう部分でカバー出来たのかなという気がしますけどね。
-:中京のレースに関しては、スタンドを見ているのか、外側を見ているのか、何となくゴール前で物見をしているような感じがしました。
中:「自分の目の前に馬がいたら集中出来るけど、少しでも離れるとフワフワして物見をした」と武豊ジョッキーが言っていたので、その部分でしょうね。レースが終わって上がってきた時にも「やっぱり走るね」という話はしてくれたので。
-:7月14日の中京で新馬戦に挑み、8月5日の小倉の未勝利戦に向かわれました。1回使っての変わり身、変化を感じられる部分はありましたか。
中:大きくはなかったので多少ですね。新馬を使う前に比べたら良くはなっていましたけど、やっぱり普通の馬と比べたら前進気勢もまだ足りないですし、普通キャンターで乗っていてもフワフワするので。
-:ゲートに関しては問題ないですか。
中:もともとちょっと後ろにゴソゴソモタれたりすることがあるので。後ろにモタれる癖はこれから先ちょっと改善しなくてはいけませんね…。今はタイミング良くゲートが切れていますけど、もしかしたらちょっとボコッと遅れて出ちゃうようなところもあるかもしれないですね。
-:小倉2歳Sでも、そういう可能性がまだなきにしもあらず…。ただ、出てしまえば、スピードが違う分、カバーできますね。
中:そのまま焦らず、競馬が出来れば、大丈夫だと思うのですがね。多少遅れたとしても、ある程度は挽回出来ると思うので。
-:2戦目の内容はどう捉えられますか?
中:正直、逃げるとは思っていなかったです。それでも、あの形で最後まで集中出来たというのは収穫です。
-:そうですね。その前のお話を聞くと「前の馬との距離が出来てしまうと…」ということを考えれば、逃げてあれだけの勝ち方はいいことですよね。
中:最後はまだ遊んでいましたけど、それでも競馬になったので。そう考えると、収穫はあった気はしますね。
-:周りに馬がいることを怖がったりということはないですか?
中:ええ、別にないですね。
-:なら、馬がいなくて、気が抜けるくらいなら、まだ先々を考えるとプラス材料ですね。
中:そうですね。先のことを考えたら、やっぱりこれからドンドン距離が延びていきますし、余裕がある分、良い気はしますけどね。
-:今年の小倉は時計が速いと常々言われていると思いますけど、その中でも、今開催の2歳戦では最速の時計だったので、時計だけで言えば、最有力だと思っています。
中:僕自身、もともとそんなに時計は気にしないので、速かったということはやっぱりスピードがあるということなのかなと思いますね。
-:ステッキもほぼ使わなかったですね。
中:多分、ステッキはほぼ使っていないですね。ちょっと集中させた感じですかね。
-:今年は例年以上の猛暑です。中京と小倉を使っての疲れは大丈夫ですか?
中:疲れは大丈夫です。もともとそんなにビッチリ仕上げていた訳じゃないので、順調に良くなっていると思いますけどね。
-:2回使って、良くなってきたなという部分はありますか?
中:前よりは多少トモがしっかりとしきましたね。でも、やっぱりまだ幼いことは事実。このまま順調に行ってくれれば、来年も走れそうな手応えはあるので、焦らずに行ければ良いかなと思っていますけどね。
-:ルーラーシップ産駒も3年目でイメージも感じられていると思いますが、自身で担当されてのイメージと合致する部分はありますか?
中:普通の馬と比べたら、成長はちょっと遅めな印象はありますね。最初は多少イレ込んだりもありましたが、扱いやすさはありますね。普段は周りの馬の動きで立ち上がったりすることもありますけど、競馬では大人しいので。
-:輸送も問題なかったですか。
中:そうですね。小倉も問題なく輸送出来たので。
-:体重はそんなに変わっていないですか。
中:そうですね。まだ余裕残しの状態で使っているので、フックラしている状態は保っていますね。
-:競馬場ではどんな様子ですか?
中:周りがバタつくと反応したりはしますけどね。前回は装鞍所に行くまではだいぶイレ込みました。ハミが効かないくらい立ち上がったり。でも、装鞍所に入ったら、大人しくなったので、環境が変わったということでイレ込んだんでしょうね。この間の競馬を見ると、出すとスッと行っちゃうようなところがありそうなので、先々を考えると、じっくり乗ってもらいたいなとは思いますけどね。
-:先々のことを考えれば、今回のテーマになりますね。将来的にはどんな馬になりそうですか。
中:イメージとしてはマイルから中距離くらいですかね。繰り返しになりますが、普段乗っているとモサッとしているので、気性的にもちょっと距離があった方が良いのかと思いますけどね。競馬を見たら真面目ですし、この間の競馬でもスッと反応出来ていますからね。もっと付いていけない心配があったので、マイルあたりからそれ以上の方が良いのかなという気はします。
-:速い脚で差すよりも、好位から粘り込みを図るタイプですか。
中:タイプ的にはそっちよりなのかなという気はしますけど、脚が溜まれば伸びるとは思うのですがね。
「レーヌミノルは新馬を使う当時から、動きが抜けていました。まだ良くなる感触は向こうにもありましたけど、タイプが違って、こちらも来年はG1に出したいという馬なので。血統的にはこっちの方が融通は利く気がしますけどね」
-:小倉2歳Sは既に勝たれたレースです。レーヌミノルの年とは手応えは違いますか?
中:レーヌミノルは新馬を使う当時から、動きが抜けていました。まだ良くなる感触は向こうにもありましたけど、タイプが違って、こちらも来年はG1に出したいという馬なので。血統的にはこっちの方が融通は利く気がしますけどね。
-:馬場が悪くなった場合はいかがでしょう。
中:まだ非力ですからね…。でも、血統的にはこなせていますからね。
-:レースに向けて、最後に意気込みをお願いできますか。
中:力はあると思うので、これから先に向けて、良い内容の競馬をしてくれたらと思っています。勝ち負けよりも、内容の良さを期待したいですね。
-:やはりフットワークは短距離ではないですよね。大きいというほどでもないですが。
中:跳びがすごく大きいというわけではないですが、この間の直線を見ていると、こちらが思っている以上に伸びている印象は受けました。調教とは違いましたね。僕が乗った感じだと、やっぱり促しながらだからかもしれないですけど、競馬の時みたいに、自分からスッと行っているような感じはないので。そういう違いもあるのかもしれないですね。
-:本来は自分のリズムで、伸びやかに走らせてあげた方が体の伸び方も良いということですね。
中:そうですね。だいぶ体の使い方は良くなっているので、出来れば馬の後ろで溜めて、今の段階では3~4番手が一番理想かなと思いますけどね。
-:レース結果はもちろん、今後へ向けても内容も求めたい一戦。今回はありがとうございました。
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プロフィール
【中井 仁】 Hitoshi Nakai
中学時代、バブルガムフェローが勝った秋の天皇賞を勝った頃から競馬に興味を持ち始める。高校卒業後、半年間、乗馬クラブで研修。その後、トレセンの近くにある栗東ホースクラブで約2年、宇治田原ステーブルで約6年務めて、2008から本田厩舎に。
本田厩舎で初めて任されたのが重賞4勝フミノイマージンだったが、2013年のヴィクトリアマイルでレース中の故障で亡くなってしまう悲運も経験する。その後は、フミノイマージンで学んだノウハウを活かし、現役G1馬レーヌミノルも担当している。