ベステンダンク 騎手&牧場の進言で驚きの圧勝 開幕週の馬場で再現だ
2018/9/2(日)
ベステンダンクが、開幕週の馬場を生かして重賞初制覇を狙う。オープンでは掲示板外のレースが続いていたが、障害帰りの前走米子Sでは鮫島克駿騎手の好判断で逃げ切り勝ち。勝ち時計は1分31秒9のレコードタイで、2着に5馬身差をつけた。かつてビービーガルダンを担当した宇佐見眞調教助手に、激走の裏話や強敵相手の一戦に向けた手応えを聞いた。
-:京成杯オータムハンデキャップ(G3)に挑むベステンダンク(牡6、栗東・安達厩舎)についてお聞かせください。宇佐見助手といえば、ビービーガルダンを担当されていましたね。
宇佐見眞調教助手:ええ、もう10年くらい前ですね。
-:前回のレース(米子S1着)がビックリするような内容でした。当時は前が有利な馬場が向いたにはせよ、時計も速かったです。
宇:開幕週ではなかったですけど、前が残る馬場だったので、(鮫島)克駿君が「逃げても良いですか」と聞いてきてくれて、こちらとしては「任せるよ」と言ったんですけど、結果的にジョッキーの好判断でしたね。正直、あそこまで走ってくれるとは思っていなかったので驚きましたね。
▲ベステンダンクや全弟のサンキューも担当する宇佐見助手
-:オープンに入ってからは掲示板もなく、その前2戦は障害レースにも使っていたほど。やっぱり障害練習の効果があったということでしょうか。
宇:ええ、あったと思いますね。障害の時は高田潤君が乗ってくれていて「あまり左トモが使えていない」ということで、それで左トモを使わせるように調教をしてもらったので、それが良い方向に向いたのかと思います。まあ、僕が乗っても、そこまでの変化は感じられなかったんですけどね……(苦笑)。やっぱり潤君くらいの経験や感覚じゃないと分からない領域でしょうね。トモは良くなったことが好走の要因だと思っています。
-:正直、オープンでは着順的に目立たず、障害レースも使っていたので、まさか今回走るとは驚きでした。
宇:でも、着差的には1秒くらいで、そこまで負けていなかったですけどね。ただ、平地ではちょっと厳しいかなという見立てで障害に使った程でしたから。でも、牧場サイド(宇治田原優駿ステーブル)から「もう1回、平場を使った方が面白いと思いますよ」と言ってもらったので、それでまた使うことになりましたね。
-:関係者の好判断があった訳ですね。
宇:そうですね。牧場とジョッキーのおかげだと思います。
-:牧場の関係者の皆さんがそう進言されたわけで、戻ってきた時に変化は感じられましたか?
宇:ええ、この前に帰ってきた時は、馬がすごく良くなっていたんですよ。牧場に放牧に出ている時も、具合が良かったらしいのですが「馬が良いので、早めに入れてください」ということでした。それで入れて「もう1回平地に使った方が良いよ」ということを言ってもらったみたいですね。まさかのタイレコードでしたからね。競馬って分からないですね。結果はやってみないと分からないですね。
-:米子ステークス以降は放牧に出ていたのですか?
宇:そうですね。また放牧に出ていって戻ってきました。現時点(8月29日)で522キロ、明日追い切って、輸送で減ったとしても前走と同じくらいで出られると思います。
-:普段の調教の時計を見ていると、そんなに時計は出さないですね。
宇:そこまで出ないですね。この前の時は具合が良さそうでしたが、乗っていて速いなと思って乗っていたら、時計が全然出ていなかったりするし、今日は遅いなと思ったら、思った以上に時計が出ている時もあるので。
-:京成杯は開幕週ですよね。馬場は向きそうですよね。
宇:前残りになりやすいのでいいと思いますね。逃げなくてもいい馬ですし、2~3番手の競馬でもね。当日の天気はもちろんわかりませんが、極端な道悪でなかったら大丈夫です。稍重でも3勝しているほどなので。
-:しかし、馬房での様子はかなり大人しいですね。
宇:メチャクチャ大人しいですね。パドックでも大人しいです。一切いらんことしないですね。賢いんですね。今までやってきた馬の中でもこんなに大人しい馬は珍しいですよ。レースでもゲートも大人しくしてくれるし、枠を選ばないですから。
-:テンはそんなに速くない方ですか?
宇:そうですね。そこまでは速くないですね。
-:こうしてオープン特別も勝って重賞に臨みます。デビュー当初の見立てとしてはどう感じていましたか?
宇:入ってきた時は、体的には良い馬だなと思ったんですけど、まさかオープンまで行くとは思わなかったですね。獣医さんは新馬使う前に「オープンまで行く」と言っていましたけどね(笑)。親子で獣医をやられている方で、当初はお父さんに診ていただいていて、今は息子さんに診てもらっているのですが。2歳時は蹄の危うさを抱えていて、成長を促すようにケアしてきましたが。
-:デビュー戦から約4年して、チャンスのある一戦に臨まれます。意気込みをお願いできますか。
宇:またもう1回、どれくらい出来るのか、試金石の一戦ですね。克駿君も楽しみにしているようですし、僕も楽しみに挑みたいです。
-:ありがとうございました。
プロフィール
【宇佐見 眞】Makoto Usami
高校時代、一世を風靡した競馬ゲーム「ダービースタリオン」にハマり、競馬に興味を持つ。卒業後はフリーターを経て、競馬への思いが強くなり21歳で牧場へ。以降は競馬学校の厩務員過程を経て、27歳の時に領家厩舎に配属される。領家厩舎ではビービーガルダン、マジカルポケットなどを担当。厩舎の解散後は安達昭夫厩舎へ移籍した。