ゴールドドリーム プール調教で開眼 進化が止まらない砂の絶対王者が南部杯へ
2018/10/5(金)
昨年、4歳初戦のフェブラリーSを制し、一躍将来が嘱望されたゴールドドリーム。しかし、その道程は決して順風満帆といるものではなかった。直後のドバイ遠征から3連敗を喫し、昨年のチャンピオンズCでは8番人気まで評価が落ちたほどだ。そこから復活を遂げた要因、そして、昨年のリベンジが懸かる南部杯から始動する今秋シーズンの手応えを含め、陣営を直撃した。
-:この春もJpn1レースを連勝。昨年の秋にチャンピオンズカップを制してからダート界NO.1と言って過言ではない成績を残しているゴールドドリーム(牡5、栗東・平田厩舎)についてよろしくお願いします。個人的に気になっていたのが、昨年からプール調教を取り入れたと思います。調整方法を大きく変えられたと思いますし、G1馬では珍しい感も受けました。その経緯から教えていただきたいのですが。
木下裕也厩務員:キッカケというのは、去年の南部杯の時にゲートの中で暴れてしまったんですよね。レース前までは何ともなかったんですけど、馬場に入った時から川田君(将雅騎手)が「今日は雰囲気がおかしい」と言っていたほど。それでも返し馬に行きましたけど、やっぱりゲート裏でも暴れましたからね。南部杯の敗戦を受けて、この馬はこのまま勝てないんじゃないかと思っていました。
▲ゴールドドリームを担当する木下厩務員
-:それは僕も現場に観にいっていて、レース後に騎乗していたジョッキーも困惑していたのが印象的でした。当時は、今後どうなっていくのだろう、と心配になったことを覚えています。
木:ええ。そしてキッカケというと、もともとプール調教といえば脚が強くない馬の調整で使うイメージでしたが、「ゲートの悪い馬はプールに入れる」と耳にしました。プールの入り口は狭いので、ゲートの悪い馬を狭いところに入れることで、ゲートに近い狭い環境に慣れる効果があるらしくて。もう40年くらい長いことトレセンで働いているのに、初耳でしたね。いつからそうなったのかは分かりませんけどね。でも、暴れたりはしませんけど、今でもプールに行くことは嫌がったりしますね。多分プールに行くことは嫌なんでしょうね。
-:去年のチャンピオンズCの前に、プールの前をゴールドドリームが歩いていたのでビックリしましたね。
木:調教が終わった後に、直接行っていたことがあります。ゼッケンが着いていたら、多分その時だと思いますね。昨年の南部杯が終わってからだから、10月中旬あたりからやり出したと思うんですよね。ゲート再試験はなかったので、練習だけやって1回放牧に出したんですよ。それで、ゼッケンを着けてやっていたのは、帰ってきた時くらいからですよね。地下馬道のトンネルが嫌なので、調教の後にわざわざ地下馬道を通って、その後、プールに行っていた時もあるんですよ。今は全然そういうことはなくなってきましたね。調教の後もイライラする馬でしたけど、そんな気配もなくなってきましたね。かしわ記念とその後はなかったですけど、その時くらいですね、すごくスイッチが入って燃えてしまったのは。最近はスイッチが入ることもないので、大人になってきたんだと思いますよ。
▲プール調教に励むゴールドドリーム
-:東京なんかは地下馬道が長いですからね。それなのに成績がいいですね。
木:そうでしょ。あそこはアカンね。他の馬から離して、先に馬場へ行かせてもらうんですよ。
-:そのプール調教ですが、最近も続けられているのですね。
木:最近は午後に入れるようになりました。というのも、脚元が悪いわけではなく歩様が硬めなんですよね。一般的にそうだと思いますけど、ダート馬はカイバを食べてから、プールまで歩いてプールで体を動かすと、次の朝が違うということだったんですよね。体調が整えられるのでしょうね。以前は午前にいくこともありましたが、昼から行った時に、(調教に)騎乗している堀部助手が「昼から出した方が、状態が良い」ということだったので、昼から行くことになりましたね。
-:それは、木下さんがやられていても、違いというのは分かりますか。
木:分かりますよ。朝、鞍を着けて出した時点で、「今日は柔らかいな」というのは見たら分かりますね。働いている人は、みんなそうだと思いますよ。跨っている人は特に感じると思いますね。
-:今年のフェブラリーSに関しては、目標にされてしまった内容で、負けて強しの競馬だったとは、誰でも思うはずです。
木:ムーアが「乗り方を3回くらい失敗した」と言っていたと、言っていましたけどね。そういう風には見えなかったですけどね。
-:ゲートからちょっと予想外に出していきましたし、多少前を追いかけたところでしょうか。致し方ない部分はあると思いました。
木:「テイエムジンソクや人気をしている馬が先行していたので、急いでしまった」という話もしていましたね。
「帝王賞では半馬身くらい遅れているのですが、あれくらいはあの馬にとっては普通くらいですね。デビュー戦なんかは3歩くらい歩いて出ていったほど(笑)。厩舎に来た当初からそうでしたよ」
-:ただ、あんなにペースが速くなるとは思わなかったですからね。ゴールドドリームに関しては、あのレース以外はほぼ勝っていますからね。かしわ記念でも出ていって押し切るという競馬でしたからね。
木:あの時が一番良いスタートを切りましたからね。ゲートの横で観ていて、みんなと並んで出たんですよ。だから、逆に分からなかったほどですよ(苦笑)。スタートで遅れるものだと思っていたので、まだゲートの中にいるのかな、と思ったくらいなので。その後の帝王賞では半馬身くらい遅れているのですが、あれくらいはあの馬にとっては普通くらいですね。デビュー戦なんかは3歩くらい歩いて出ていったほど(笑)。厩舎に来た当初からそうでしたよ。
-:その頃から能力は感じられたのですか。
木:感じましたね。乗っている人は皆「この馬は走るぞ」と言っていましたね。2015年の12月にデビューしたのですが、11月の半ばくらいに助手が「これは走るぞ」と。「そんなに走るの?」とそんな話をした記憶があります。
-:ただし、去年の帝王賞やドバイWCなどのように思うような成績を残せなかった時期もありましたね。
木:帝王賞では「ドバイ帰りだから」とみんなに言われたんですけど、そんなことはなかったと思うんですけどね。それとドバイワールドカップはドバイに着いた時点で…大人しいんですけど、覇気のなさを感じました。調整もそんなに悪かった感じもないんだけどね。だから、チャンピオンズCの時に状態が良くて、「この状態でドバイに行きたかったな」という話をしていましたね。ただ、あの時は1頭とても強い馬(アロゲート)がいましたからね。
▲2017年3月、ドバイで調整するゴールドドリーム
-:ゴールドドリームにとってはドバイの砂の質は問題なかったですか?
木:僕らは2週間くらい現地にいたのですが、ドバイは年間3日くらいしか雨が降らないのに、けっこう降っていたんですよ。馬場がキュッと締まっていましたね。ゲートから軽く出しただけでも、コンクリートの上を走っているのかというほど、ものすごく締まっていましたね。そういう硬さもよくなかったのかもしれませんし、当時はスタートも遅れていましたしね。もしあの硬い馬場で走り切っていたら、日本馬は慣れていないから、脚元は心配になりますよね。
-:脚元に硬さのある馬ということは、やっぱりそういう特殊な馬場だと、ケアにおいても気を遣われる部分はありますか。
木:特にはないですね。人間だけがそう思っているだけで、馬自身はないかもしれないですけどね。たまたま雨が続いて、本当に締まっていましたもんね。