テイエムジンソクのスピードが活きる舞台 淀の馬場で復活なるか
2018/10/29(月)
京都開催が復活のキッカケとなるか。昨年は破竹の勢いで重賞を制覇、チャンピオンズCでも2着に好走したテイエムジンソク。今年に入ってからは東海Sを制したものの、苦戦が続いてしまっている。しかし、聞けば、その敗因もうなずけるもの。求められる好走条件とはどんなものなのか?お確かめいただきたい。
-:JBCクラシック(Jpn1)に挑むテイエムジンソク(牡6、栗東・木原厩舎)ですが、ここ4戦は苦戦が続いてしまっています。今回は実績のある京都でのレースということで、軽い馬場が向く印象を持っていたので、巻き返してくるんじゃないかと思っているのですが。
吉永貴幸厩務員:去年は上手くいっていましたからね。
-:ここ最近、大井(帝王賞6着)、船橋(日本テレビ盃4着)と初コース続きでしたよね。性格的にも、初コースは向かないんじゃないかと個人的には思っていました。
吉:それも多少はあると思うんですけど、良かった頃とレースが違いますよね。どこか折り合いが難しくなっているようで、それは枠順、コース、馬の並び、色々な要素でそうなっている気がするんですけどね。
-:僕は、基本的にこの馬の良さというのは、スピードを長く持続できることだと思っているのですが。
吉:終いが切れる馬じゃないですからね。4コーナーである程度セーフティーリードを取って、どこまで粘るかなというタイプだから、平安S(6着)を観ていても、道中で“今日はキツいかな”という気がしましたし、ヨーイドンの競馬になると分が悪いですね。
▲昨年のみやこSはピンク帽の外枠から勝利
-:変に内から進めるよりも、外で流れに乗れる方がいいですよね。
吉:基本的に着順が悪い時は、全て内枠と思うんですよ。外枠の方がレースはしやすいですし、難しいレースになりにくいですよね。たとえば東海ステークスもハナを切る予定ではなかったんですけどね。ただ、行く馬がいなかったら、ああいう形でも。あの時はコーナーに入ってから、しばらく行きたがったけど、変な引っ掛かり方ではなかったから、よかった。そこが難しいですよね。
-:帝王賞はレース後、現場でコメント取りをやっていたのですけど、レース後すぐはペースも分からず話を聞いていて、なぜ負けたのかなと思っていたら、(前半1000m)60秒を切っていたので。
吉:1800mでも1分を切ることはなかなかないから、2000mならなおさら…難しいですよね。この間(日本テレビ盃)はこの間で、ハナに行っているのに引っ掛かっているという、ペースが遅すぎましたね。
-:やっぱり良い時のレースだと、平均したスピードを持続しているイメージです。
吉:この間のレースでも、良い時ならもうちょっとそのままスッと行かしていると思うんですよね。それは、その前の帝王賞があったから、あんまり行き過ぎたら、という意識があったのかもしれないですね。
-:そこはジョッキーの感覚もありますからね。
吉:僕らじゃ分からないところだから、その辺は難しいですよね。
▲G1制覇まで、あと一歩だったチャンピオンズC
-:ただ、個人的には、チャンピオンズC(2着)ももう少し攻めても、と思いました。
吉:ペースもそこまで速くなかったですし、4コーナーでもうちょっと早めに仕掛けても良かったのかなと。あのレースも、言ったらヨーイドンの競馬だったので、苦手な流れだったと思いますよ。ただ、前の馬(コパノリッキー)もそんなにすぐに止まるような馬じゃないだろうから、それを意識しないといけないですからね。あれがそんなに強い馬でもなかったら、一気に行ったと思うんだけど、そこは難しい判断ですよね。終わってみたら言えるけれど、逃げている馬はキッチリ交わしているし、後ろから来た馬(ゴールドドリーム)だけに差されているだけだから、100点ではないにせよ、いい競馬だったと思うんですよね。
-:古川(吉洋)さんがフェブラリーS(12着)のレース後におっしゃっていましたが、1コーナーまでの距離が長いと少し分が悪いところもあるのでしょうか?
吉:それはあると思いますよ。1コーナーまでの距離が長いと、折り合いが付きにくいですよね。
-:京都の1800だと、すぐにコーナーに入れるので、まだ。
吉:コーナーが近い方が、そこで息が入れられますからね。そこまでにペースが上がっていってしまうと、そのままの勢いで走っていってしまうところがあるから、なかなか難しいですよね。
-:馬場的には京都の軽い馬場が合いそうだと思っています。どうですか?
吉:パワーがあるタイプじゃないから、地方の砂は合わないのかなという気もしますね。だから、中山では1回も走ったことがないですけど、中山はもう一つかなと最初から思っていましたね。(コース形態的に)東京は東京でレースがしにくいだろうし、直線が長いのはあまり向いていないですよね。
-:今回は(1900mで)1コーナーまでにちょっと距離がありますけど、馬場的にはチャンスがあるのかなと思うのですが。
吉:あとは枠順ですね。とりあえず真ん中より外が当たって欲しいですね。それで最初の直線が長い分、その間に行きたがってしまう可能性がなくはないけど、出来れば速い馬が内にいてくれて、それらが行った後で。スタートが良いから、出さなくても行けますからね。スッと前に付けられるという、そこが良いところなんですけどね。ただ、スッと前に付けられ過ぎているから、ああいう競馬になってしまうので…。内枠だったらそうしてもハナを切るような形になってしまうし、多分この馬が内に入って、何もせずにスッと行ってしまうと、みんなこの馬が行くと思ってしまうから、みんな行かないでしょ。だから、内にちょっと速い馬がいてくれたら良いんですけどね。去年のような感じのレースが出来れば、そこまで差はないように思いますが。
-:いまの体調面はいかがですか。
吉:この間よりはだいぶ気が乗ってきましたね。前回の競馬を使う前はちょっと大人しいなという感じで、競馬使う直前くらいにちょっと気が乗ってきたなと。ただ、それが終わってからも、今回はずっと気が乗っている感じだから、最初は歳のせいなのかなと思っていたんだけど、こうやって気が乗ってくるのもちょっと遅くなってきているのかなと。
-:もしかしたら、チャンピオンズCくらいちょうど良かったかもしれないですか?
吉:でも、ここから特別にもっとなるということもないと思うんですよ。煩いというのはヤンチャなところもありますし、そこまでおかしなわるさをする馬でもないので。ジッとしている馬じゃないんですけど、遊びたいだけなので。ただ、頭は悪くないし、人間に対して何かしてやろう、そういうのもないし、ただ単にじゃれて遊んでいるだけなので。昔はただうるさいところはありましたが、今はヤンチャとはいえやりやすいですよ。
-:今は普段どなたが乗られているのですか。
吉:ウチの攻め専の森さんが乗ってくれていますけどね。追い切りだけ古川騎手ですね。
-:フェブラリーSの時は1泊される競馬でしたが、あの時はテンションというのはいかがでしたか?
吉:別に問題ないですね。帝王賞の輸送の時もそうだし、この間の船橋の時もそうだし、向こうでイレ込んだりすることはないですね。ただ、朝に運動する時に外に出したりする時や、パドックでもちょっとうるさいですけど、やっぱり近場でレースを使っている時の方が大人しいですよ。厩の中では基本的に大人しいですね。
-:イメージではもう少しうるさいのかと思いました。
吉:ただ、馬房の中に入ったりしたら、遊んできよるから。でも、基本はやりやすい馬ですよね。毎日同じことをやるようにしていたら、馬も覚えているし、次はこれをするんやな、ということを馬ももう分かってくれているし。
-:JBCクラシックとチャンピオンズCはこの馬の中でもチャンスがある舞台だと思うんです。
吉:中央場所ですから、砂も軽いからね。チップでも馬場が悪くて下が深いと力んで走るんですよね。多分、軽く走れないから一生懸命走ろうとするのかもしれません。もともと力んで走ろうとすることがあるから、それでまた余計に無駄な力を使っているのかなと。なんせ競馬では折り合いですね。
昔は途中で追っつける場面もあるにはあったけど、今はほぼないですからね。この間もちょっと気合いが足りないなと言いながら、やっぱり道中では行きたがったりするし、本来は前に馬を置いて、砂を被せながらの方が多分折り合いは付きやすいと思いますね。ただ、それをすると包まれる可能性もあって、そこが問題なんですよね。
-:そういう意味でも、軽い京都は向きそうですね。脚質的にも差しのタイプではないですからね。
吉:3~4コーナーくらいで、いつでもスッと動ける位置にいたらと思いますね。
-:京都で雨が降って、さらに馬場が速くなった場合というのはどうですか。
吉:別にないですね。レコードで超速かったエルムS(2着)の時でも普通に付いていっていましたからね。あれでももうちょっと仕掛けていったら…。
▲古川吉洋騎手を背に1週前追い切りを行った
-:悪い意味ではなく、基本的に追って味がないですもんね。長くスピードを持続できる馬で。
吉:伸びない訳じゃないし、伸びてはいるんだけど、他の馬がもっと伸びているのでね。下級条件の時は終いも伸びていたけど、メンバーも違いますし、それぞれタイプがハッキリしてきますからね。
-:レース前のテンションということをお話されていたと思いますけど、当日のパドックでの変化というのは、ファンが観て分かるレベルですか。
吉:いつものような感じですよ。だからと言って、イレ込んでいる訳でもないし、いつも通りですね。こんな感じで何回もやっているようだったら、いつもよりちょっとうるさいのだなと。ただ、僕が持っていて、普通にしている分にはいつも通りだなと。そこまでパドックでのうるささは気にならないですけどね。ただ、船橋の時はちょっとうるさかったのかなと。歩くのが速いんですよ。(前の馬が)ユックリ歩いて、それで待たされるのが嫌な馬ですね。そうしたらイライラして速く歩いている時の方がタッカタッカと歩くんだけど、前の馬が歩くのが遅くて詰まってしまうと、イライラするんでしょうね。けっこう待たされるのが嫌いやからね。
-:ゲートで待たされるのは嫌いではないですか。
吉:もともとゲートはあんまり好きではなかったんですけど、そこまでうるさい感じはないですけどね。
-:肉体的面の完成度はどうでしょうか?
吉:昔からあんまり変わっていないですけどね。もっと大きくなるのかなと思ったけど、そう大きくもならないし、もうちょっとガッシリした方が良いのかと思うけど、ガッシリする馬ではないでしょう(笑)。そうなったらなったで、逆に持ち味のスピードがなくなるのかなと。
-:最後に、レースに向けての意気込みをお願いします。
吉:この馬らしい競馬が出来てくれたら、ですね。結果はその時によってまた違うだろうから、納得のいくレースをしてくれたら、それだけで良いかなと思いますね。馬の体調自体が悪くないから。
-:ありがとうございます。力を発揮できる条件が揃うことを期待しています。
プロフィール
【吉永 貴幸】Takayuki Yoshinaga
父・吉永忍調教師の厩舎からトレセンでのキャリアをはじめ、30年以上。思い入れのある馬は初めて担当したタマモリック。当時は1勝馬の身だったが、最終的には通算6勝を挙げた。その初仔であるタマモハイウェイも担当し、通算6勝、菊花賞5着などの活躍。親子ともども思い入れのある血統馬となった。ただし、「自分がやれば、皆かわいいものですよ」と語る。
日々の仕事では「馬は基本的には習慣的な動物だから、同じことをしてあげたら、良いかなと。変わったことをするのではなくて、馬もその方が落ち着くでしょうからね。同じことをシッカリやるというだけじゃないですか」と語る。