クロノジェネシス 育成牧場もジョッキーも絶賛 極上のキレ味見せる
2018/12/2(日)
持ち味の切れ味を活かして女王の座へ。産駒がデビューしてから10年目を迎えるバゴが父、今年飛躍を遂げたノームコアを姉に持つクロノジェネシス。ここまでの2戦はあぶなげなく連勝を決めているが、これまで以上のメンバーを相手にどこまでやれるか。開業3年目にして初のBIGタイトルがかかる若きトレーナーに直撃した。
-:阪神ジュベナイルフィリーズ(G1)に挑むクロノジェネシス(牝2、栗東・斉藤崇厩舎)なのですが、第一印象から教えていただけないでしょうか。
斉藤崇史調教師:最初は、去年の春くらいにウチに決ったということで、ノーザンファームさんのイヤリングで見させてもらいました。バゴの子供は担当する上では初めて見たのですが、バランスが取れて良い馬だな、と思ったのが第一印象でしたね。牝馬なので、サイズは標準くらいだったと思います。
-:馬体だけを見ると、スレンダー型ですね。
斉:そうですね。430~40キロくらいですけど、背が極端に低い訳でもないですし、これから実が付いてきて、もっと成長してきてくれたら良くなりそうな印象はありますね。
▲新馬戦の口取り撮影 クロノジェネシスを見守る斉藤師(左)
-:入厩に至るまでの過程は順調でしたか。
斉:その後、ノーザンファーム早来にある野崎厩舎さんで育成が始まったのですが、厩舎長の野崎さんからも「すごく良いよ」という話をずっと聞いていたので、楽しみにしていました。トレセンに初めて入れて、ゲート試験を受ける時に良いフットワークのキャンターをする馬だとも思いましたね。
-:現実にそこからペースアップしていって、速い時計でどれだけ走るかというのは、未知数だったと思うのですが。
斉:そこはまだ分からないところですが、本当に普通キャンターから良いキャンターをしますね。初めて追いきっても本当に良い馬だなと思いましたね。
-:今まで他から聞いていた評価が、現実に自分の目の前で見られたということですね。そこから新馬戦に至るまでは、一回放牧に出されたのですか。
斉:最初はゲート試験程度で放牧に出したのですが、その後、今年の夏くらいに新馬をそろそろ使おうか、ということで戻してきた時に、初めて速い追い切りをしましたね。
-:あとは、勝てそうな舞台を設定するということでしたか。
斉:そうですね。あとはどこで使うか、という具合だったので、最初は新潟の1600mに行こうかと思ったのですが、その週はワールドオールスタージョッキーズでジョッキーが新潟にいなくて、それだったら、次の週に北村友一さんで、ということに決まりましたね。
-:実際に、新馬戦のパドック、返し馬の動きはいかがでしたか。
斉:こちらで追い切りをやっている時から本当に動きも良くて、良い馬だということは分かっていたので、あとは競馬場に行って冷静に競馬が出来れば良いなと思っていました。馬も本当に優等生で大人しく行けましたし、ゲートを出てからもスムーズで、言うことないレース内容だったかなと思うんですけどね。
-:4番手追走から、直線で伸びるかどうか、というところでしたね。
斉:直線で伸びるだろうなというのは、調教の段階で思っていたことなのですが、(直線の短い)小倉競馬場で、直線に向く時に2着馬が一気に離したので、もしかしたら届かないで終わってしまうか…とも少しは思いましたが、その心配も「少し」だけでしたね。すぐに勝ったなというレースぶりだったので、ホッとしましたね。
-:これで先行きが楽しみになった一戦だと思われましたか。
斉:はい、調教の動きが本物なのだなと思いましたね。
-:2歳馬にとって、初めての競馬場を経験した後の2戦目というのは、同じパフォーマンスが出せる保証もないですし、テンションが上がってしまう馬もいて、難しいところもあると思います。この馬の場合はどうでしたか。
斉:その辺は、レース前に(ノーザンファーム)しがらきさんとも事前に打ち合わせをして「連戦させるというよりは、放牧を挟みながら気持ちを抜きながら行きましょう」という話はしていました。そういう意味では、1戦目から2戦目にかけても、すごくスムーズに行けたかなと思うんですけどね。
-:1戦目も小倉への輸送があった訳ですけど、今度2戦目は府中ということで、そこもスムーズにクリアしましたか。
斉:輸送自体は小倉で経験していたので、心配していませんでした。新馬に比べて、メンバーも揃うレースだったので、やっぱりその辺がどうか、とは思っていましたけどね。
-:評価自体は3番人気でしたけど、先生の中では勝負になるという手応えはあったのですか。
斉:ここで走れれば、本当にいよいよ本物だな、という思いがしていたので、やれるというよりも、楽しみなレースだなとは思ってはいたんですけどね。
-:(32秒5という)ものすごい上がりでしたね。
斉:上がりの時計自体はレースの流れもあるのですが、2戦目もゲートからゴールまで上手に競馬をしてくれましたし、良かったんじゃないですかね。
-:この馬の長所というのは、やっぱり競馬の上手さになるのですか?
斉:一番の長所は最後の瞬発力じゃないかなと思うんですけどね。
-:良いポジションにいながら、上がり3ハロンの良い切れを持っているということですね。
斉:良いポジションは別としても、良い切れ味は持っているなというところですかね。
-:あまりポジションは関係ないですか。
斉:あれだけペースが遅いとポジション云々というか、前にいようが後ろにいようがみんな脚は溜まるので、そんな中でも一番良い切れ味で伸びてきてくれるというところでしょうか。
-:ケタが一つ違ったということですね。他は33秒台ですけど、この馬は32秒5でしたからね。
斉:そうですね。本当に良い瞬発力を持っているのが、この馬の特徴だと思いますけどね。
「スローのヨーイドンしか経験していないことが、この馬の弱点でもあると思います。そこを上手くこなしてくれたら良いなと。そうしたら、もっともっと上が見えてくるのに、という気持ちですね」
-:と言うことを考えると、ドスローでも折り合いは付いていたということですか。
斉:逆に言ったら、スローのヨーイドンしか経験していないことが、この馬の弱点でもあると思います。そこを上手くこなしてくれたら良いなと。そうしたら、もっともっと上が見えてくるのに、という気持ちですね。
-:2戦とも1800m戦だったのですが、今回は1ハロン短くなって、流れが速くなるかもしれないですね。
斉:そうですね。そこだけがこの馬の経験していないことなので。ただ、調教とかこの馬のレース振りからしたら、全然こなせてもおかしくないというか、そう思っているので。
-:新馬が終わった後に、北村友一騎手にちょっと話を聞かせてもらったのですが、かなり手応えを感じている様子でした。
斉:追い切りの時点から、北村さんもすごく気に入ってくれていたし、実際にレースに行って、ああいうパフォーマンスが出来ているので、一緒に頑張っていけたら良いなと思っています。
-:この中間の追い切りの動きはいかがですか。
斉:今週ジョッキーに乗ってもらって、少し動かしましたけど、相変わらず良い動きですし、現状は文句ないかなという感じですけどね。
▲最終追い切りを行うクロノジェネシス(併せ馬内)
-:3戦目でまだ無敗なので、応援しているファンや期待しているファンもいると思うので、メッセージをいただけますか。
斉:ここまでの2戦はすごく良い勝ち方をしてくれました。厩舎としてもすごく楽しみにしていますし、観ているみなさんが面白いレース、良いレースを観られたら、競馬に関わっている人間としても嬉しいですし、何とかそういうレースが出来るように、厩舎が出来ることをコツコツやっていこうかなと思っています。ぜひ競馬場で応援してもらって、良いレースを観てもらえたらなと思っているんですけどね。
-:種牡馬としてもバゴの印象が変わる馬かもしれないですね。バゴと言ったら、やっぱりフランスの重い馬場でタフな印象がありますが。
斉:そうかもしれないですね。他のバゴ産駒をあまり見たことがないので、ハッキリ言えないところがありますけどね。スプリントの重賞を勝っている馬から菊花賞を勝っている馬まで幅広く出ていますね。
-:それに、お姉さんがノームコアですね。
斉:そうですね。このお母さんは本当に良い子供を出してくれるというか、どの種馬を付けても、どんな性別に出てもみんな走るので、本当に良いお母さんですよね。ノームコアもハービンジャーですし、これはバゴの子ですし。
-:来年に向けて、どこまで行けるのか楽しみしています。
斉:これで、1600でまた新しい部分というか、この馬の未知数な部分がハッキリ分かるでしょうからね。
-:体調に関しては、前回は新馬からちょっとだけ減らしていたのですが、府中まで輸送しているというのがあるので、今回は地元ということを考えたら、少しは。
斉:どうなんですかねぇ。輸送をして減る馬じゃないので、輸送したから減っちゃったとか、そういう訳ではないのですが、同じくらいで競馬をすることになるのではないかなと思うんですけどね。
-:あと1週間楽しみに待っています。ありがとうございます。
斉:ありがとうございます。
プロフィール
【斉藤 崇史】Takashi Saito
1982年8月29日生まれ、神奈川県出身。競馬とは縁のない家庭で育つも、中学校の同級生の影響で競馬ファンに。日本獣医畜産大(現日本獣医生命科学大)を卒業し、その後、ノーザンファームでの勤務などを経て、松永幹夫厩舎で調教助手に。 厩舎に入って程なくして、レッドディザイアと運命的な出会いを果たすと、秋華賞を制覇。ドバイ、アメリカ遠征にも帯同した。2015年に調教師試験に合格し、翌2016年3月に厩舎を開業。3年目の今年は初の20勝超えをマークし、今後が期待される若手トレーナーの1人。