来年も現役続行 シュヴァルグラン グランプリ3度目の正直へ
2018/12/17(月)
是が非でも欲しいG1・2勝目へ。今年は4戦して未勝利、連覇のかかったジャパンカップも4着に終わってしまったシュヴァルグラン。そして、前走後、引退を撤回。7歳となる来シーズンも走り続けることを決定しただけに、何としてもタイトルを重ねたい思いが伝わってくる。今回は、同じ佐々木主浩オーナーの所有馬で香港遠征を終えたばかりのヴィブロスの話題も混じえ、友道康夫調教師に語ってもらった。
-:先週は香港遠征、お疲れ様でした。まず、香港マイル2着のヴィブロス(牝5、栗東・友道厩舎)についても、振り返っていただけますか。
友道康夫調教師:やっぱり海外の厩舎の雰囲気が良いのか、ドバイでもそうだったのですが、今回の香港でもすごく落ち着きがありました。飛行機の輸送もありましたけど、現地に着いてもそんなに体も減らず、同じくらいの体重で出走できたと思います。追い切りでも本当にノビノビと走っていて、これなら良い競馬が出来るかなと思って競馬当日を迎えました。装鞍所からパドックの環境に関しても、日本と雰囲気が違うのですが、その中でもすごく落ち着きがあって、本当に良い雰囲気でゲートイン出来て、競馬の内容もこの馬の競馬はしていると思います。ただ、勝った馬はちょっと別格でしたね。
-:ビューティージェネレーションを褒めるしかないですか。
友:競馬の内容を見ても強いし、後検量の時にちょうど横の馬房に入って見たけど、すごい筋肉をしていました。あんな馬は日本にはいないくらいと言っていいのではないでしょうか。香港は坂路もないのに、どうやってああいう筋肉が付くのかなと思うほどでしたね。
-:迫力満点の香港の短距離馬がマイルに出てきたと。
友:お尻の肉なんてすごかったですよ。
▲初の香港遠征で2着に好走したヴィブロス
-:海外輸送という一見して牝馬には向かないような条件が、この馬には合っているのですね。
友:いや、牝馬には向かないという先入観がありますが、今回も牝馬3頭が2着に来ていますし、今年の春もヴィブロス、ディアドラ、モズカッチャン、クロコスミアも良い競馬をしています。やっぱり牝馬の方が勝負強いというか、我慢強いというか、忍耐力があるような気がしますね。
-:辛抱強さがあるということですね。香港の馬場状態に関してなのですが、全体を通して、若干、先行馬が有利な馬場に映ったのは気のせいでしょうか。
友:その通りだと思いますよ。硬いですね。特に水曜日の追い切りの朝に馬場を歩いたけども、その時が一番硬かったですね。硬くて路面が整地されているというか、コンクリートの上に芝生が生えているような感じで、人間もすごく歩きやすいですね。
-:日本みたいに蹄跡で掘れている跡がないということですね。
友:ええ。日本みたいに硬くてデコボコというか、アンジュレーションがあるでしょ。香港はツルッとフラットの上にちょっと芝生が生えている感じで、それが水曜日の状態で、それまではすごく天気が良かったから乾いていたのもあったけど、木曜日はちょっと雨模様で、若干緩くはなったけども、それでも硬かったですよね。
-:それを考えると、差してきているというのは評価できる内容ですね。
友:そうですね。今後のことはまだ決まっていませんが。
-:有馬記念のシュヴァルグラン(牡6、栗東・友道厩舎)なのですが、前回のジャパンC(4着)が、これもまた特殊な馬場状態でしたね。
友:あの馬場で、自分自身もレコードで走っていると思うし、頑張っていたと思いますよ。
-:内に入った先行馬が一番有利な条件だったということになりますね。
友:最近はああいう競馬が多いですよね。ただ、勝ったアーモンドアイは強いとしかいいようがないと思います。
-:そこは切り替えて、今季3戦目の有馬記念なのですが、またガラッと舞台は変わって、仕切り直しの一戦になります。この中間の状態はいかがですか。
友:前回はあんな競馬をしたけども、そんな疲れもなく、良い具合ですね。1週前追い切りは明日(12月13日)にやるのですが、また一つ上の段階で出走できると思います。
-:有馬記念なので、枠が決まってからじゃないと話にならない部分はありますが、今回の乗り役はオーストラリアのヒュー・ボウマン騎手。出来れば内の方が良さそうですか?
友:そうですね。(ボウマン騎手の母国の)オーストラリアの競馬って、枠を重要視するようなので。それでも、去年はゴール前で不利があったけども、挽回して3着まで来ているしね。
-:有馬記念は今回で3度目の挑戦になるのですが、6歳になっての衰えみたいなものはまだ感じられないですか。
友:いや、競馬の数を使っていないし、今年は去年より1走少ないですからね。本当に大事に使ってきているので。
-:なおかつ宝塚記念も使っていないですからね。
友:疲れはないと思いますね。
-:疲れもないので、狙い目と言えば狙い目ですね。この馬は全体で7勝している内の5回が右回りで、京都2勝、阪神3勝ですから、中山ではまだ勝っていないですけど、右回り、左回りでは勝ったジャパンCの左回りの方が上手ということはないですよね。
友:左回りが上手というよりは大きい競馬場の方が上手なのではないでしょうか。去年ボウマンも「中山と東京競馬場の走り方というか、カーブの曲がり方が違う」と言っていましたからね。
-:それは、やっぱりカーブが大きいからということですか。
友:それは去年1回乗って分かっていると思うので、あれだけのジョッキーなので、考慮して乗ってくれると思うんだよね。
-:たくさんの引き出しがあるでしょうからね。今度はあんなワールドレコードになるような馬場にはならない条件なので、なおかつ良馬場ならこの馬の力が出せそうですね。
友:ええ。まず内枠が引ければと思いますね。
-:勝ったジャパンCみたいに好スタートを決めて、ある程度ポジションを取って、という競馬ですね。
友:そうですね。ジャパンCのレース内容がベストだと思いますよ。中山は後ろから行けないですもんね。後ろから行くと言っても、3コーナーから大外を捲っていくしかないですし、直線は短い。コーナーが6つもあるから、やっぱり経済コースを回ってこないと。
-:ジャパンC後の体のシルエットというのは、変化は感じられますか。
友:いや、そんなに体重も減っていないし、ガレた感じもないですよ。前回と近い状態でいけそうです。
-:あと1週間、明日の追い切りも含めてどんな調教をされるのか、楽しみにしたいと思います。
友:1週前はシッカリやって、来週はボウマンに乗ってもらいます。
-:感触をチェックするくらいですね。有馬記念でシュヴァルグランを応援するファンにメッセージをお願いできますか。
友:来年1年も現役を続行することになったので、これが最後じゃなくなりましたが、やっぱりもう一つ国内のG1タイトルを獲りたいと思います。去年のような絶対王者もいないし、この馬にもチャンスがあると思うので、また応援よろしくお願いします。
-:ありがとうございます。
プロフィール
【友道 康夫】Yasuo Tomomichi
1963年8月11日生まれ。兵庫県出身。1989年5月にJRA競馬学校厩務員課程に入学し、同年9月から栗東・浅見国一厩舎所属の厩務員となる。1996年11月に松田国英厩舎へ移り、2001年に調教師免許を取得。2002年11月に厩舎を開業し、2005年の朝日チャレンジCをワンモアチャッターで勝って重賞初制覇。2008年の天皇賞(春)をアドマイヤジュピタで勝ってG1トレーナーの仲間入りを果たし、2016年の日本ダービーをマカヒキで制してダービートレーナーに。今年はワグネリアンで2度目のダービーを制した。その他にもヴィルシーナ・シュヴァルグラン・ヴィブロスのきょうだいを送り出すなど、今や押しも押されもしない栗東を代表する調教師。