超新星オイシン・マーフィー!来日の理由 日本競馬の印象 すべて聞いた!
2019/2/6(水)
2018年、欧州を中心に幾多のG1レースを勝利。ロンジンワールドベストジョッキーシリーズで2位にもランクインしたオイシン・マーフィー騎手。12月の中山競馬より短期免許を初取得すると、日増しに存在感を発揮。免許期間最終週の東京開催では土日7勝、重賞初勝利の大暴れ。「欧州の天才」という呼び声通りの手腕を日本競馬界にみせつけた。世界を渡り歩く23歳はなぜ日本での騎乗を望んだのか。そして、日本競馬で叶えたい夢とは。若き新星がたっぷりと語ってくれた。 (取材日:2019年1月22日/取材=競馬ラボ小野田)
-:海外でもロアリングライオンとのコンビで活躍されて、当時から注目させていただいたのですが、12月から中山競馬を中心に騎乗されて、ここまで大活躍ですね。今回は日本での騎乗や生活を中心に振り返っていただければと思っています。よろしくお願いします!
オイシン・マーフィー騎手:以前からとにかく日本に来たい、日本の競馬で騎乗したいと願っていました。そして、日本の競馬を体験して、改めて世界トップの環境だと実感しましたね。勝たせてもらった一つ一つのレースは、どれも思い出に残るものでしたし、多くの人たちのサポートによって、数多く乗せてもらえたことを感謝しています。もちろん身元引受人となった国枝栄先生の管理馬に乗る時は特別な気持ちでしたし、沢山勝たせてもらったことを感謝しています。
-:日本に来たかった一番の理由。それは何故でしょうか?
マ:キッカケというのは、オルフェーヴルの凱旋門賞(2012年)ですね。それと、エピファネイアのジャパンC(2014年)です。偶然ではありますが、どちらにも(クリストフ)スミヨン騎手が乗っていましたね。自分の中では衝撃的なレースでしたし、それがキッカケで日本の競馬をすごく観るようになりました。そこからノーザンファームさんの馬たちを調べてみると素晴らしい血統の馬ばかりいて、そこも気になっていましたね。
-:具体的に日本に来ようと動き出したのはいつ頃だったのですか。
通訳・安藤裕氏:2016年の12月に香港で会った頃から「日本に来たい」とは言っていましたね。ただ、JRAの短期免許の申請は、世界でも一番通るのが難しいですから。その条件に見合うようになれたのが去年の夏前くらいでしたね。
-:実際に日本に来ての印象やギャップはありましたか。
マ:日本のトップ20位の調教師の人たちのことは勉強してきていましたし、レースの映像も沢山観ていましたので、大きなギャップはなかったです。ただ、唯一あるとすれば、トレセンの調教で、馬に乗っている時間が特に長いところですね。自分で鞍を着けたりする訳ではないですけど、乗ってからがすごく長いといいますか、一緒に馬と過ごす時間が長いので、それは驚きましたね。
-:それは意外です。むしろ海外の方が長いのかと思っていました。
マ:イギリスだと馬場の追い切る場所の下ですぐに乗り替わるだけなので、実際に乗っている時間というのは、1マイルで1分50秒くらいをイメージすると、実際は10分くらいですね。
-:イギリスでは、1日にどれくらいの頭数に乗られているのですか。
マ:例えば1時間以内に、6名の調教師の違う馬の追い切りに乗れますし、3つの違う場所にも行けますね。同じ厩舎の5頭を一気に追い切ったりも出来ます。イギリスのランボーンという調教場だと、同じ場所で5頭は乗れますし、ニューマーケットだと3つの違う場所でも1時間以内で乗れますね。
▲社台スタリオンステーションにて来日のキッカケとなったオルフェーヴル(上)、エピファネイア(下)
両馬に対面したマーフィー騎手(写真本人提供)
-:来られたタイミング的にもなかなかG1レースでの騎乗が少なく、今後、大舞台で騎乗される時がまた楽しみなのですが、有馬記念は日本の競馬界にとっても一大イベントです。ミッキーロケット(4着)の騎乗を振り返っていかがでしたか。
マ:まず、オーナーの野田みづきさんやご主人の(「ダノン」の冠名で知られる)野田会長も良い馬をお持ちになっているのは知っていました。野田みづきさんの勝負服でレースに向かえたことはすごく嬉しかったですし、あんな大きいレースに乗せてもらえたことも感謝しています。もちろん、音無調教師や厩舎にも感謝しています。レースに関してはすごく勉強していたので、自分のプラン通りに乗れたと思います。
そして、何よりもファンの声援がすごかったです。僕はブリーダーズカップや凱旋門賞にも乗りましたし、おそらく世界の大きなレースはほとんど乗っていると思いますが、その中でも格別の雰囲気でしたね。有馬記念の中山芝2500mコースは、スタート地点が向正面じゃないですか。スタンドから遠いと思っていても、発走前にファンの皆さんの歓声が聞こえることはすごかったですね。感動しました。
-:それは、僕らが何度、有馬記念を観ていても乗っている側じゃないと分からない感覚ですよね。今のところ、1カ月半ほど騎乗した中で、思い出に残る、特に記憶に残っている馬はいますか。
マ:一番思い出に残っている馬では、この間(初富士Sを)勝ったレッドローゼス(牡5、美浦・国枝厩舎)ですね。それは国枝先生の馬ですし、先生も本当に信頼して下さっているので、調教でも「馬を感じてきてほしい」ということを言ってもらえましたね。レースも自分の乗りたいように乗らせてもらえました。それで、結果が残せたことを嬉しく思っています。他にもウラヌスチャーム(牝4、美浦・斎藤誠厩舎)はいい印象がありましたね。
▲身元引受調教師である国枝栄師と 国枝厩舎の管理馬での活躍も目立った
-:能力的に上に行きそうだなと感じた馬はいますか。
マ:国枝厩舎のレッドアステル(牝3、美浦・国枝厩舎)と木村哲也厩舎のハーメティキスト(牡3、美浦・木村厩舎)が良くなってきそうですね。あとはクリスマスSを勝った奥村豊厩舎のディアンドル(牝3、栗東・奥村豊厩舎)。もちろん(京成杯2着で藤沢和雄厩舎の)ランフォザローゼス(牡3、美浦・藤沢和厩舎)も挙がりますね。
-:さきほどの野田さんの勝負服の話もありましたけど「ディープインパクトの勝負服(馬主・金子真人ホールディングス)を着たい」ということをおっしゃっていた記憶があります。日本の馬主さんなどについても勉強されてきたことが窺えますね。
安:そう思いますね。実際に勝ちましたしね。
マ:沢山、有名な勝負服を着させてもらえたことを嬉しく思います。あと、有名な馬主さんで着ていない勝負服は佐々木(主浩)さんでしょうか。ドバイターフやジャパンカップも勝利していますよね。
-:その内あって不思議ではないですね。
マ:一つだけストレスを感じるとしたら、社台レースホースさんの勝負服では2着ばっかりということです…。悔しく思います。
-:余談ですが、デザインだけだったらどの勝負服が好みでしょうか(笑)。
マ:武井亮先生の厩舎で勝ったナスノダケ(牡3、美浦・武井厩舎)のピンクの勝負服(馬主・那須野牧場)はかわいいですね。良いデザインだと思います。なんと言っても目立ちますね(笑)。
2018年は世界騎手ランキング2位
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