オイシン・マーフィーが一目置く名手&日本競馬と叶えたい夢とは?
2019/2/14(木)
-:そういえば、中山競馬場では、レースが終わった後に花道を通って引き上げられる姿をよく目にしました。あれは、敢えてファンサービスのために、あそこを通っているのですか。
マ:時間的に、レースの合間、合間でサインをする余裕があまりないので。その余裕がない理由としては、レースが終わって次のレースに向けて、自分が作っている資料をもう1回、読みたいので。口取り撮影が終わった直後に、本当はサインをしたいのですが、だからこそレースが終わった後に、皆さんにお返ししようと思っています。
安:終わった後に待っていただいている人となると、けっこうな数の人が集まっていただけているので、それはすごく感謝していますし、本人もそれに対してはすごく喜んでいますし、やってあげたいなと思っていますね。だから、わざわざ通っていると言われれば、その通りだと思いますけどね。
-:早いもので東京開催1週目を終えて、短期免許期間も終わります。今後のスケジュールも教えてください。
マ:短期免許期間の東京開催1週目が終わりましたら、すぐにドバイに行って木曜日に乗ります。それからはイギリスに行って毎日騎乗し、それ以外にドバイワールドカップが終わるまでは毎週木曜日だけドバイで騎乗します。今のところ、JRAの規定次第だと思うのですが、11~12月に再来日の申請をして、メルボルンC後のエリザベス女王杯の週から、東京大賞典まで乗りたいと思っています。
-:有馬記念じゃなくて、東京大賞典ですね。
マ:また来られるなら、一年の最後まで日本で乗りたいですね。
-:昨年の年末は東京大賞典以降もヨーロッパへ戻ることなく、ずっと日本にいらっしゃったそうですね。
マ:来られるなら多分、またそうなると思います。日本はすごく過ごしやすいので。
-:将来、クリストフ・ルメールさん、ミルコ・デムーロさんのように日本で免許を取りたいという考えはないですか。
安:そうなったら良いですけどね。今の時点ではないですけど、あるかも…という話はしますけどね。彼は日本に興味があって来ましたし、走る馬に乗りたいと思って来ているので。稼ぎのためとは考え方が違うというか、日本の文化を楽しみたいというか…。
「モーリスのような素晴らしい馬がイギリスでレースに出走していたら、勝っていただろうなと思うし、自分もそのような馬に巡り会えたらいいなと思います」
-:今日、お話を聞いても、それはすごく感じましたね。これからの目標があれば教えてください。
マ:日本の馬に乗って凱旋門賞を勝つことです。本当にリップサービスではなく、それが夢です。凱旋門賞に行ったら、フランス人を除いてはアイルランド人と日本人しか観衆がいません。凱旋門賞であの日本人の歓声を聞いた時に、すごく良いなと思いました。その歓声に応えられる立場になりたいと。
-:また、どんなジョッキー像を描いていますか?
マ:やっぱりずっと成長したいし、常に大きいレースをたくさん勝っていられるジョッキーでいたいと思っています。よくそういう質問をされるのですが、いつも伝えるのは「勝ち続けないといけないし、常にたくさんの馬に乗り続けて向上していきたい」という気持ちが強いので、やっぱり良い馬に乗せてもらいたいですね。日本には素晴らしい馬が沢山いるので、そういう馬に乗れる騎手でありたいですね。もちろん素晴らしい馬に出会うには、巡り合わせも重要だと思いますけどね。例えば、モーリスのような素晴らしい馬がイギリスでレースに出走していたら、勝っていただろうなと思うし、自分もそのような馬に巡り会えたらいいなと思います。
-:近い将来、日本馬の海外遠征でもオイシン・マーフィー騎手の鞍上で勝つことが増えそうですね。今回はありがとうございました!再来日した時はまたお話を聞かせてください。
マ:ありがとうございます。是非お願いします。(日本語で)またね。
マーフィー騎手の身元引受調教師だった国枝栄調教師
「いい子だね。性格がいいし、若いのにすごく落ち着いていますね。競馬でも慌てるようなところがないもんね。だから、レースでも観ていてアレ?っという競馬がないし、信頼の置ける騎乗をしてくれますね。技術的な面は海外でもあれだけ実績を残しているほどですから、言うこともありません。また、日本に来るようですから、楽しみですよね」
2018年(マーフィー騎手の母国である)アイルランドに遠征していた野中悠太郎騎手
「彼のすごさは対応力、その素晴らしさですよね。初めての中山競馬場にも適応していたし、短期免許最終週だった東京競馬場でも大活躍だったほどですから。ライアン・ムーアにしても、ジョアン・モレイラにしても、世界で活躍するジョッキーほど、環境への対応力が早いと思いますし、馬の特性を掴むのも早いですよね。
僕もアイルランドに行ったばかりで現地でも評判といいますか、彼の名前はウワサになっていて、注目させていただきましたが、昨年もイギリス、アイルランド、ドバイ、フランス、ドイツなどでG1を勝っていましたね。何故知っているかといえば、やっぱり僕もアイルランドに行ったことで現地の競馬を昔以上にみましたし、帰国してからもみるようになりましたから。
彼らの対応力の高さの訳を考えると、海外の調教場は日本のトレセンと違って、同じ場所に集中していなかったりしますからね。要はテン乗りでレースに乗ることが多いのは一つの理由かもしれません。また、色々な国の競馬や環境を学ぶことも、騎手としての経験値になるはず。僕も彼らを見習っていきたいですね」
プロフィール
【オイシン・マーフィー】Oisin Murphy
1995年9月6日生まれ、アイルランド出身の23歳。デビュー前は騎手であったおじから騎乗技術を学び、名門エイダン・オブライエン厩舎などで勤務。2013年に騎手デビューすると、1年目に41勝、2年目には76勝でイギリスの見習い騎手チャンピオンに。翌年以降も順調に勝ち星を伸ばし、2017年、フランスのフォレ賞でG1初勝利。2018年はドバイターフをベンバトルで勝利、ロアリングライオンとのコンビで欧州の主要G1を制し、ロンジンワールドベストジョッキーでは2位にランクインする飛躍をみせた。
これまでの短期免許経験は日本の他、UAE、オーストラリア、香港など。騎乗経験は15カ国ほどに及ぶ。2018年12月15日の中山競馬から日本で騎乗。126戦25勝。短期免許最終週の根岸ステークスで重賞初勝利を挙げる大活躍をみせた。今後は、春まではイギリスとドバイでの騎乗を続け、秋には再度の短期免許取得を目指している。好物はチョコレート。