アクアミラビリス G1馬の姉クイーンズリングが果たせなかった 桜の女王の称号へ
2019/3/31(日)
姉妹G1制覇へ一直線。厩舎にG1タイトルをもたらしたクイーンズリングを姉に持ち、昨秋にデビューしたアクアミラビリス。前走のエルフィンSでは、過去2戦の競馬とは一転して後方待機策をとると、豪快な差し切り勝ち。新味をみせ、不気味なムードを漂わせている。主要トライアル組とは初対戦となるが、血統のよさ、秘めた能力をみせるのか。姉が4着に敗れた舞台に挑む。
-:桜花賞(G1)に出走するアクアミラビリス(牝3、栗東・吉村厩舎)ですが、これまで3戦経験されましたね。まず新馬戦から振り返っていただけますか?
吉村圭司調教師:新馬の時は、1週前に(デムーロ)ジョッキーが乗って追い切った時に動きも良かったので、これなら良い競馬が出来るかな、という手応えはありましたが、新馬はやってみないと分からない部分も大きいですしね。
-:いきなり府中への輸送ということでしたね。
吉:牝馬限定戦のマイルでもあったし、(姉の主戦であった)ミルコ(・デムーロ騎手)がなかなかこちらにいなくて、その週ももちろん、前後も関東圏に行く予定が多かったので、ミルコに合わせたところもありました。
▲管理馬の調教を見守る吉村調教師
-:好スタートしてから、逃げ馬の後ろにグッとつけました。
吉:一完歩目がちょっと遅かったですね。新馬は大体スローになるので、ちょっと出していってくれて、2番手をキープした形になったんだと思いますね。
-:そこから2番手をずっとキープして、初戦としては上手に走れていましたね。
吉:何走かすると気が乗って来てくるようなところも出てきますけど、初戦というのは、馬が競馬ということを分かっていない部分も多いし、スローペースでも折り合えていましたけどね。
-:スローで逃げていた馬(スイートセント)を楽に捕らえきって、かなり強い内容でした。
吉:ええ、逃げていた2着馬も人気馬(2番人気)でしたからね。新馬はああいう良い勝ち方をしてくれて、それでもまだまだ分からない部分も残っていましたから、次はどうかなという思いも…。期待はしていましたけどね。
-:そこから1カ月空けて、年明けのフェアリーS(5着)に行った訳ですけど、このレースはいかがでしたか?
吉:レース後、ジョッキーとも話して「初戦の勝ち方から、牝馬同士なら2戦目が重賞でも十分にチャンスがある」ということだったので、フェアリーSに合わせていこうという判断をしました。枠も外目(11番)でしたし、中山のマイルと言えば、位置的にもある程度(流れに)乗せていきたいということも心理的に働くでしょうからね。いくらか発馬も遅れ気味で、ジョッキーもちょっと(流れに)乗せていった部分はあったと思うんですよね。それで、前にも壁を作れずに、外枠ということもあって、前半掛かり気味にレースが進んでいったという形だったと思いますけどね。
-:その後のエルフィンSでは、観ている僕らからしたら、まさかの後方待機でした。
吉:そうでしたね~。その辺に関しては、エルフィンSの時は内枠(1番)でしたし、僕らがあまり言っても、レースで騎乗した経験もない人間なので、あの時はミルコに任せるよ、ということで、こちらからは何もリクエストは出さなかったんですけどね。
-:ミルコの考えでは、あの馬のベストの騎乗だったということですね。
吉:前走(フェアリーS)が折り合いを欠いた部分もあったので、それを教えていきたいという気持ちも強かったでしょうし、あの枠だったから、やっぱりああいう乗り方にしたんじゃないですかね。
-:極端に行くか、下げるか、どっちかの競馬になりますからね。
吉:フェアリーSの内容を見ていると、2~3番手でスムーズに正攻法の競馬が出来るかと言ったらね。
-:あのレース内容だったら、ここから距離が延びてもこなせるのかなと思いましたか?
吉:レースでは、やっぱりメンバーもペースも違ってくるので一概には言えないですけど、自分のリズムでさえ走れれば、距離の融通も利きそうな感じはしましたけどね。
-:3回使ってきて、徐々にレース慣れもあります。最後の伸びが魅力的な馬です。まだ枠も決まっていない訳ですけど、桜花賞はどんな手応えでしょうか?
吉:道中でいかにこの馬のリズムで走れるかだけだと思うんですけどね。気分良く追走出来るようだったら、脚は使えるはずですし、そこで、トップレベルの牝馬たちと、どれだけ戦えるかということだと思いますよ。
-:今週は3月27日にミルコが乗って、併せ馬で追い切られましたが、動きはいかがでしたか?
吉:しっかりやりたかったですね。前に行かせていた馬と併せたかったというのがあるんですけど、時計的にも遅くなりそうだったし、僕の指示がしっかりやっておいて欲しい、ということだったので、ミルコが「あれで抑えたら遅くなりそうだったから」と判断して、しっかりと伸ばしたんですけど、時計的にもちょうど良かったですね。
▲1週前追い切りを行うアクアミラビリス
-:1週前でしたからね。
吉:十分にしっかりとした負荷を与えられたと思います。
-:やっぱりポイントは枠ですか?
吉:どうですかねぇ。極端な枠でなければ。外も嫌ですし、内過ぎてもね。
-:前回は1枠1番で勝っていますし、大外だったら嫌なぐらいで、それ以外だったら大丈夫ですか。
吉:そんなハナを切らなきゃいけない馬でもないので、ジョッキーもあまり枠は考えていないと思うんですけどね。
「現時点では、背腰もしっかりしていると思いますね。クイーンズリングは疲れも溜まりやすい方だったので。小柄ではありますけど、レース後も、アクアミラビリスの方がしっかりしているように思うんですよね」
-:この馬のお姉さんと言えば、大活躍したクイーンズリングなのですが、先生から見て何か似ているところはありますか?
吉:性格は似ていますね。(半姉は)普段は扱いやすい馬でしたし、あまり自分から暴れたりもしなかったので、その辺はすごく似ていますよ。今の時期の3歳牝馬としては賢い方だと思いますし、そんなに暴れて体で表現するとか、イレ込みもないですしね。
また、現時点では、背腰もしっかりしていると思いますね。クイーンズリングは疲れも溜まりやすい方だったので。小柄ではありますけど、レース後も、アクアミラビリスの方がしっかりしているように思うんですよね。
-:馬場に関しては、晴れのレースしか経験していない訳ですけど、雨が降った場合というのはどうでしょうか?
吉:京都のエルフィンSの時は、前半まで稍重発表でしたからね。途中から良の発表になりましたけど、京都開催の時は全体的に時計も掛かっていましたし、極端な重や不良馬場以外はこなせる方だと思いますよ。だからこの馬は、馬場に関してはそんなに心配はいらないと思います。
-:どれぐらいの人気になるか分からないですけど、この馬の終いの伸びというのを大舞台で見せて欲しいですね。
吉:この世代のトップレベルの馬と走るのは初めてですからね。壁はいくつもあると思うんですけど、通用する力は持っていると思いますしね。
-:上位に入線したら、この先のオークスという舞台も見えてきますからね。今後の活躍が楽しみな1頭なので、良い結果を期待しています。
吉:ありがとうございます。
-:最後に、応援して下さるファンに一言メッセージをいただけますか?
吉:姉のクイーンズリングも、秋華賞(2着)以外、牝馬3冠では結果を出せなかったので、何とかアクアミラビリスに頑張ってもらえたらなと思っていますので、しっかり良い状態で出走させて、良い結果が出るように頑張りますので、応援して下さい。お願いします。
-:ありがとうございました。
プロフィール
【吉村 圭司】 Keiji Yoshimura
荒尾競馬で調教師をしていた父の影響で競馬界へ。トレセンへ就業後は飯田明弘厩舎、池江泰寿厩舎を渡り歩いた。技術調教師として池江厩舎に在籍していた当時は、オルフェーヴルの三冠達成を目の当たりにするなど、貴重な経験を得る。2012年3月に厩舎を開業し、2015年のフィリーズレビューをアクアミラビリスの姉・クイーンズリングで勝って重賞初勝利。同馬で翌年のエリザベス女王杯を勝ってG1トレーナーとなった。重賞初勝利から4年連続重賞勝利を継続中で、これまでに重賞6勝を含むJRA通算147勝を挙げている。(記録は19年3月31日現在)