勝者に訊くダービーの勝ち方 第80代 日本ダービー馬 キズナ&佐々木晶三調教師
2019/5/25(土)
-:しばらく醒めた後の今年は、キズナの子が入ってきましたね。
佐:そう、夢の続きで。
-:リメンバーメモリー(牡2、栗東・佐々晶厩舎)ですね。
佐:会長には感謝です。キズナが勝ってから、俺は調教師人生でも厩舎が軌道に乗ってから、最低ラインを3年送ったからね…。上手くいかない、馬もよく故障する、レースに行けば、チグハグな競馬ばっかり。いくらキズナをやらせていただいたと言っても「お前の気に入った一番馬をやらせてやる」というのは、この商売としてはなかなか言えるもんじゃないもんね。
-:それで、先生が「この子をやらせて下さい」と選ばれたのですか。
佐:そうなんです。「これが良いですね」と言っていたら「晶ちゃん。社台の馬入れたいやろ」と言われて、「いや、実はそうなんですけどね」と言って、ハハハ(笑)。「買うたるわ」と言われて、嬉しかったですし、感謝しています。
▲佐々木師が期待を寄せるリメンバーメモリー
-:それで、セレクトセールで(9720万円)落札していただいたのですね。
佐:高くて、すごかったですね。最初は「5000万まで行ったるわ」という話で、「5000万では買えないです」という話をしたら「そんな良い仔か。 それなら7000万まで行くわ」と。僕は8000万まで行くことを知っていたから、それではダメだと思っていて9000万まで行ったから、(落札者は)誰だろうと思っていたら、会長だったので驚きました。
-:結果的には予算の倍くらいになっちゃったのですね。
佐:初めて見させてもらった当歳の時はよく似ていましたね。
-:ようやっと、そのリメンバーメモリーがトレセンに来た訳ですが、動きはいかがですか。
佐:体幹が違うね。キズナそっくり。最初に見た時そのままですね。毛色はちょっと明るいけどね。
-:リメンバーメモリーはキズナより体重はちょっと軽いですか。
佐:軽い。今で450キロだけど、競馬の時は一応460キロ近くいくかもしれない。
-:デビューは決まっているのですか。
佐:宝塚記念の日の一番強いところ(芝1800)。
-:自信を持って送り出すということですね。
▲追い切りを行うリメンバーメモリー(5月2日撮影)
佐:いやいや「自信を持って」というか、そういうレベルの馬だと思うから。
-:と言うことは、もちろん乗り役さんも…。
佐:そうでしょうね(笑)。
-:流れを汲むと。
佐:リメンバーメモリーだから『蘇る記憶』。
-:競馬の醍醐味というのは、こういうドラマがそのまま繋がっていくのですね。
佐:ドラマがそのまま夢心地ですね。
-:先生のところにはキズナは何頭入るのですか。
佐:9頭ほど入るんじゃないですかね。
-:リメンバーメモリー以外にもう1頭、この馬も走りますようというのがあったら教えて下さい。
佐:今年の2歳はけっこう良いですよ。キズナの産駒はみんな良いですしね。
-:距離的にはどの辺が良さそうですか。マイルくらいですか。
佐:お母さんに寄るんじゃないですかね。(サクラ)バクシンオーだったら1600くらいが良さそうだし、キズナ自体も1400という馬じゃなかったけど、1600がベストパフォーマンスを見せたと思うので。
-:マイルCSや安田記念に行っていたら。
佐:安田記念だったら、すごいパフォーマンスをしていたと思う。故障さえしなかったら、多分、日本では負けていないと思うよ、本当に。
-:産駒の中では、ダートという可能性も出て来そうですか。
佐:可能性は高いと思う。キズナ自体も力があったから、ダートも良かったと思う。
-:その辺はお母さん次第で、オールマイティに出てくる可能性があるということですね。先生の忙しい、楽しみな時間が増えたんじゃないですか。
佐:そうですね。やっぱり楽しみな馬がいないと、すごく長く感じる。楽しみな馬がいると、アッという間に時間が経つし、ああいう楽しくてしょうがない、ワクワクな人生を送ってみたいですよね。
-:それをまたキズナと共に。
佐:キズナ産駒と共に、味わってみたいですね。
-:バリバリ稼いで、働いていますからね。
佐:やっぱり評判は上がりましたよね。トレーニングセールで全部が(上がり1ハロン)12秒を切っていますからね。今の時期で、なかなか2ハロン20何秒で走れる馬はいないですからね。下手をしたら、普通キャンターでトレーニングセールを終わる馬もけっこういますからね。その中で、馬なりで12秒、11秒を出しているというのは、やっぱり強いんでしょうね。それで一遍に価値が上がって、トレーニングセールで上がったというのが嬉しいですよね。
-:また直前にもお話を聞かせていただくと思いますので。
佐:よろしくお願いします。
プロフィール
【佐々木 晶三】Syozo Sasaki
騎手としては桜花賞などを制し通算137勝。94年に厩舎を開業させると、タップダンスシチー(ジャパンカップ、宝塚記念など重賞7勝)、インティライミ(ダービー2着、重賞3勝)、アーネストリー(宝塚記念など重賞5勝)らを送り出し、2013年にキズナで悲願のダービーを制覇。
オープンで雄弁な人柄は競馬ファンもしるところだが、その後も中山グランドJ、中山大障害を制したアップトゥデイトを輩出するなど、調教師としての腕も確かなものをみせている。