自信のキングジョージ参戦!シュヴァルグランの佐々木主浩オーナー
2019/7/14(日)
日本時間7月27日(土)、キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスS(G1、イギリス・アスコット競馬場)にシュヴァルグランが参戦する。凱旋門賞を連覇しているエネイブルが出走を表明、日本でも馬券が発売されるとあって注目度も高まっている。これまで日本馬は5頭が出走し、最高成績は2006年ハーツクライの3着と結果を出せていない。前人未到の頂点を目指すのは、大魔神・佐々木主浩オーナー。独占インタビューに応じ、今年限りで引退するシュヴァルグランのイギリス遠征の経緯と勝算だけでなく、ヴィルシーナやヴィブロスの産駒情報も聞かせてくれた。
(取材・構成=競馬ラボ狩野)
-:シュヴァルグラン(牡7、栗東・友道厩舎)は前走のドバイシーマクラシック(G1)は惜しくも2着でした。イギリス遠征を決めた経緯を教えてください。
佐々木主浩オーナー:ドバイの後に「どこかG1を勝ちたい。もう1つ箔をつけたい」という話になって、キングジョージに行こうと決まりました。
イギリス参戦の経緯を語る佐々木オーナー
-:ドバイは悔しいレースでしたね。
佐:やっぱりスタートですよね。いきなり寄られてしまって、本当はもう少し前に行く予定だったんですけど。もう1つ前のポジションだったらとは思いますけど、それも競馬ですからね。
-:シュヴァルグランにとっては初めての海外遠征でした。不安はありませんでしたか?
佐:そこだけが心配でしたけど、レースの3、4日前に現地に入って馬を見た時に全然落ち着いていたので、これなら大丈夫だと思いましたよ。レースでも結果も出してくれましたし、もう海外への不安がなくなったのでイギリスに行こうと決めました。
-:ドバイでも手綱をとったボウマン騎手は休養中で乗り替わりになりますが、鞍上は決まっていますか?
佐:マーフィー騎手にお願いしました。日本でもいきなり結果を出しましたし、現地のことをよく知っているので心強いです。
-:イギリスでは、これまで日本の馬が結果を残せていません。イギリスの競馬にはどういった印象を持っていますか?
佐:瞬発力勝負ではなくて、体力勝負になるのはシュヴァルに合っていると思うんですよね。友道先生も「海外ならイギリスがいいんじゃないか」と言っていました。ドバイよりイギリスのほうが合うと僕らは思っています。あとは馬場次第ですね。
出発前、栗東で調整されるシュヴァルグラン
-:雨が降ると、かなりの消耗戦になる印象です。
佐:普通の馬場だったら面白いと思いますよ。道中に坂があったり、かなりアップダウンがあってタフなコースですけど、3000m以上の距離でも走れる馬。体力勝負は大丈夫だと友道先生とは話しています。
-:キングジョージに出走した日本馬の最高成績は、2006年ハーツクライの3着です。そのハーツクライ産駒で臨まれます。
佐:それは良いことですよね。ディアドラ(牝5、栗東・橋田厩舎)の出たレースを見ても、あの高低差は日本の競馬場にはないですから。適性があるかどうかは大きいと思います。タフで時計がかかる馬場は合っていますし、楽しみしかないですよ。
-:あとは相手関係が気になるところです。
佐:エネイブルとやりたいですね!凱旋門賞を連覇しているような馬と一緒に走れたら嬉しいですよ。こんな経験はなかなかできないですから。
オーナーが対戦を熱望するエネイブル
-:ヴィブロスも含めて、ご自身の所有馬が海外のビッグレースを走るというのはワクワクしますね。
佐:いろんなところへ連れて行ってくれて、本当にありがたいです。いい馬に巡り会えました。
-:佐々木オーナーご自身は、野球でメジャーリーグでも活躍されました。競馬にもつながると思いますが、海外で戦うことの一番の難しさはどこにあるとお考えですか?
佐:雰囲気とか文化でしょうね。野球も日本とアメリカでは球場の雰囲気が全然違います。野球は1シーズンですけど、競馬はそのレース1回だけですから、そこに対応できるかどうかは精神的な強さだと思います。この血統は、環境が変わっても動じないメンタルの強さを持っているんでしょう。
-:シュヴァルグランは今年いっぱいでの引退を発表されています。キングジョージ以降のローテーションについて見通しを教えてください。
佐:最後はやっぱり有馬記念で、という思いがあります。3着、3着ですからね(苦笑)。一昨年は直線でぶつけられて、去年はだいぶ後ろからの競馬になってしまいました。スムーズな競馬でこの馬の力を発揮して、リベンジしたいです。
「タフなコースは歓迎」と手応え十分
-:ヴィブロスはドバイターフ(2着)後に引退しました。ドバイや香港など、どんな条件でも良い脚を使ってくれる馬でしたね。
佐:ちょっとしか勝っていないけど、賞金はだいぶ稼いでくれました(笑)。ドバイの後にロードカナロアを種付けしたので、来年どんな仔が生まれるか本当に楽しみです。
-:今回のセレクトセールでも、シュヴァルグランやヴィブロスの近親にあたるシャンドランジュの2018(牡、父ロードカナロア)が1億2500万円、ラスティングソングの2019(牡、父キングカメハメハ)が1億9000万円という高値で落札されました。ゆかりのある血統ですし、欲しかったのではないですか?
佐:いやいや、全然(笑)。1歳にはヴィルシーナの牝馬(父モーリス)がいるし、今年は久々にハルちゃん(ハルーワスウィート)の仔も生まれました。ハーツクライ産駒だから、シュヴァルグランの全妹です。いい馬ですよ。でも、この血統がこれだけ高い値段になると嬉しいもんですね。
ドバイ遠征時、撮影に応じる
-:楽しみは尽きないですね。最後に、シュヴァルグランで臨むキングジョージへの意気込みお願いします。
佐:無事に走ってくれることを祈るだけです。その中であと1つ、タイトルが欲しいですね。応援よろしくお願いします。
プロフィール
【佐々木 主浩】Kazuhiro Sasaki
1968年2月22日、仙台市生まれ。東北高から東北福祉大を経て1989年ドラフト1位で大洋ホエールズに入団。フォークボールを武器に抑えとして奮闘し、1998年には横浜ベイスターズの日本一に貢献してMVPを獲得。ニックネームの『大魔神』は流行語大賞にもなった。その後はアメリカに渡って大リーグでも活躍。日米通算381セーブの大記録を残した。2005年に現役を引退し、翌2006年11月に馬主登録。2012年にマジンプロスパーが阪急杯(G3)を勝つと、2013年にヴィルシーナがヴィクトリアマイルを制してG1馬主の仲間入りを果たす。2017年はヴィブロスでドバイターフ、シュヴァルグランでジャパンカップ(G1)を勝って"世界"の頂点に立った。