キングジョージ舞台を視察!シュヴァルグラン友道師の手応え
2019/7/21(日)
日本時間7月27日(土)、キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスS(G1、イギリス・アスコット競馬場)にシュヴァルグランが参戦する。管理する友道康夫調教師は、事前に現地へ足を運び、コースの特徴や馬場状態を確認。あらためて掴んだ手応えを語ってくれた。(2019年7月17日取材)
-:シュヴァルグラン(牡7、栗東・友道厩舎)がキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスS(G1)に挑むことになりましたね。日本とは丸っきり違う馬場、競馬場の環境で挑戦するということで、父のハーツクライが走ってから10年以上経って、息子であるシュヴァルグランが挑戦するということなのですが、まず、ここに挑戦するようになった経緯というのを教えていただけますか。
友道康夫調教師:経緯は、ドバイに初めて行ったのですが、その時の輸送でもそんなにダメージもなかったし、なおかつ当日の落ち着きもあったし、(2着という)結果も残せたということですね。今年1年は海外に目を向けていこう、という考えから始まったので、次はどこかとなった時に、キングジョージという目標があったので、行こうとなりました。
海外遠征の経験も豊富な友道康夫調教師
-:先生はアスコット競馬場には下見に行ったそうですね。
友:ちょうどロイヤルアスコットでディアドラが出走した時(プリンスオブウェールズS)に見せてもらいました。
-:けっこう馬場が悪い時でしたね。
友:ディアドラが出走した日はメチャクチャ雨が降って、馬場はグシャグシャだったのですが、その2日前に行った時はちょうど晴れていて、馬場自体は日本よりもむしろ硬いような感じでした。アンジュレーション(起伏)はすごかったですよ。日本にはないような感じの起伏でしたね。
-:馬場が重いから時計が掛かるのではなくて、アップダウンがあるからということですね。
友:ディアドラが出走した日も、現地の人は「雨が降っていなければ、時計は多分速いだろう」と言っていたほどです。
-:ちなみに、去年のキングジョージが2分36秒台ということで、(不良馬場だった)オルフェーヴルのダービーよりもさらに掛かっていました。稍重発表だったのですが、馬場によってそれだけ上下するということですね。
友:馬場自体の質はそんなに言うほど緩いという訳ではなく、ちゃんと足元はシッカリしているというか、むしろ硬いかな、というくらいでしたね。
-:日本の方が管理されて、ちゃんとクッションが整っている感じなのですね。
友:その代わり、アンジュレーションはすごかったですね。
-:しかも、東京競馬場が小回りコースに思えるくらい広い感じなのですね。
友:おむすび型の2390mで、本当に整地された、造られた競馬場ではなく、自然の起伏を活かしたコースですからね。3コーナーが一番低くて、そこから登って、4コーナーが一番上がって、直線に向いてまた下がって、そしてゴール前にまた坂があるという感じですね。
▲決戦の舞台となるアスコット競馬場
-:ハーツクライの時も強敵馬が揃っていた年だったのですが、今年もエネイブルなどもいますからね。
友:かなり強敵が揃っているから、世界でも超一流というか、一線級なので、それを相手にどんな競馬をしてくれるか、楽しみは楽しみですね。他にもメンバーは揃っていますが、それを相手にどういう競馬をしてくれるかですね。
-:7月11日に現地に到着したということですね。
友:木曜日の朝に出たから、(到着は)木曜日ですね。今週は曳き運動で、2日目から乗り運動を始めて、今日の現地時間の水曜日に、ジョッキーを乗せて追い切っています。
-:まだマーフィー騎手の声というのは届いていない訳ですね。
友:今、ちょうど(調教を)やっているくらいじゃないかな?
-:難しいアスコット競馬場で、先生からはどういった指示を出されますか。
友:馬は日本でもそんなに切れるタイプでもないし、スピードのパンパン馬場が良いタイプでもない。スタミナ勝負で長く良い脚を使える馬なので、ヨーロッパの馬場には合っていると思いますし、競馬場に関しては、僕らよりもジョッキーの方が絶対によく知っていると思うので。今日と来週にも乗ってもらう予定なので、それで馬の感触を掴んでもらえれば、作戦はジョッキーに任せます。
-:あとはカイバや敷料など、日本と違うところで難しい点はありますか。
友:色々ありますが、カイバはほとんどこっちでやっているものをやれているし、そんなに変わったところはないし、馬房や敷料は変わるところがありますが、その辺もドバイとかも経験しているし、大丈夫そうですね。
-:どれくらい体が減って、どれくらい戻したいというのは、数字的に把握できるものなのですか。
友:具体的な数字はまだ連絡がないですが、「見た感じは、輸送直後は若干体重が減りましたが、カイバも食べているから許容範囲だと思います」という連絡をもらいました。それで2日目からはキャンターも乗っているし、その辺は上手くいっているんだと思いますね。
-:今で2週間ちょっと前なのですが、体調を上げつつ、運動でバランスを整えて、なるべく良い状態に持っていくというところですね。楽しみですね。
友:どんな競馬をしてくれるかですね。
-:佐々木オーナーの世界挑戦というのを、先生が協力して達成しようということですね。イギリスで勝てたら、父の雪辱を果たすということになりますね。
友:そうなれば良いですね。ハーツクライが行った時は、今みたいにグリーンチャンネルがどこでも観られる環境ではなかったので、ちょうど僕らは新潟競馬に行っていて、音無先生と一緒にスポーツバーで見た記憶がありますね。競馬場の職員さんに「どこかで観られるところはないの?」聞いたら「新潟市内のスポーツバーでやっています」と言ったので、そこまで行きましたね。
-:この間ワールドレーティングが発表されて、1位がエネイブルじゃなかったということは驚きましたよね。
友:この前のレース(エクリプスS)を観ていたら、ぶっつけで強かったよね。
-:しかも、去年よりもローテーションで順調さがありますもんね。
友:そうですね。
-:ハーツクライのファンとシュヴァルグランのファンにメッセージをお願いできますか。
友:お父さんが3着に頑張ったレースなので、何とかお父さんの成績を上回りたいし、出来れば勝ちたいですよね。
-:お父さんは仕掛けてスッと動いたものの、最後に脚が上がってしまった感じでしたからね。
友:上がっちゃいましたね。
-:シュヴァルグランはそこを乗り切れるかですね。
友:この前のドバイの時でも、ゴール間際からまた伸びてきていたから、スタミナはあると思うので。
-:オイシン・マーフィー騎手が空いていたというのがまたすごいですし、向こうで言えばリーディングジョッキーが空いていたということですからね。
友:この前もG1(ファルマスS)で勝っていたからなぁ。
-:色々そういうことも含めて、運も味方に付けてということですね。
友:そうそう。
-:キングジョージまであと2週間ですね。
友:今日やって、火曜日の最終追い切りにまた乗ってもらう予定をしているので。
-:そのニュースを楽しみにしておきます。先生はいつから行かれるのですか。
友:僕は今週の日曜日の朝ですね。
-:これを使った後のプランというのはありますか。
友:今のところは、ヨーク競馬場であるインターナショナルS(G1)を目標にしています。
-:分かりました。ありがとうございました。
プロフィール
【友道 康夫】Yasuo Tomomichi
1963年8月11日生まれ。兵庫県出身。1989年5月にJRA競馬学校厩務員課程に入学し、同年9月から栗東・浅見国一厩舎所属の厩務員となる。1996年11月に松田国英厩舎へ移り、2001年に調教師免許を取得。2002年11月に厩舎を開業し、2005年の朝日チャレンジCをワンモアチャッターで勝って重賞初制覇。2008年の天皇賞(春)をアドマイヤジュピタで勝ってG1トレーナーの仲間入りを果たした。大魔神・佐々木主浩オーナーが所有するヴィルシーナ・シュヴァルグラン・ヴィブロスのきょうだいを送り出し、2016年の日本ダービーをマカヒキで制してダービートレーナーに。昨年はワグネリアンで2度目のダービーを制するなど、今や押しも押されもしない栗東を代表する調教師。