【ジャパンC】2度目の制覇へ 5本の矢を放つ 友道康夫調教師
2019/11/18(月)
毎週のように管理馬を重賞戦線に送り込み、この秋はワールドプレミアで菊花賞を制して、牡馬クラシック3冠トレーナーの仲間入りを果たした友道康夫調教師。2度目の制覇を狙うジャパンカップには、2年前の覇者・シュヴァルグラン、2頭のダービー馬・ワグネリアン、マカヒキ、距離実績十分のエタリオウ、ユーキャンスマイルと個性あふれる5頭で参戦。その意気込みをトレーナーに聞いた。
-:友道厩舎からジャパンカップには5頭が出走します。シュヴァルグラン(牡7、栗東・友道厩舎)から海外での2戦を振り返っていただけますか。
友道康夫調教師:1戦目のキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスS(6着)は道悪に尽きますよね。2戦とも馬の状態は良かったんですけど、やっぱり馬場がこたえました。
-:行く前のイメージと実際に海外に挑戦された現実とのギャップはありましたか。
友:シュヴァルグランはこちらが思っている以上に初めての環境に対応してくれて、調教もすごくスムーズに行きました。何もかも順調に進んで、前日まではすごく良い状況でした。天候はむしろ暑いぐらいで、このままパンパンの馬場で出走できると思っていたんです。それが前日の夜から急に雨が降ってきて、豪雨になって計算が狂いましたね。天候以外は申し分なかっただけに良い馬場で走らせたかったですね。
-:キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスSで勝ったエネイブルにはどんな感想を持ちましたか。
友:エネイブルはやっぱりすごい馬ですね。ああいう牝馬は日本にいないですよ。ゴツゴツとした迫力のある馬でした。
-:走りそうな感じはありましたか。
友:やっぱり日本でよく見るスピード馬という感じではなく、パワータイプでした。こういう馬がヨーロッパの競馬に向いているんだろうなと思いましたね。
-:しかも、タフなローテーションでもこなしますからね。
友:そうですね。
-:レース後、日本に帰国された所からシュヴァルグランの様子を教えていただけますか。
友:2戦目(インターナショナルS8着)の後、すぐ次の日に移動しました。日本に帰ってきてもそれほどダメージもなく、最初の1週間ぐらいは牧場で休養に充てて、すぐに乗り始めました。
-:トレセンに帰ってきてからはいかがですか。
友:順調にここまで来ましたね。昨日(11/13)はスミヨン騎手に乗ってもらいました。
-:シュヴァルグラン、エタリオウ、マカヒキと、超豪華な3頭併せでしたね。
友:でも、上がってきたスミヨンの第一声が「スブい」でした(笑)。これがこの馬の特徴で、元々調教では動かない馬なんです。そういう話は追い切り前にした上で乗ってもらったんですが、実際に乗った感触も同じだったようです。
▲2年前の勝利トレーナーでもある友道調教師(右から3人目)
-:しかも、スミヨン騎手は事前に、「この馬はどういう馬だ?」とボウマン騎手に聞いていたそうですね。
友:何回か聞いて、競馬のこともアドバイスを受けているそうです。スミヨン騎手は彼なりのイメージを持って競馬に乗ってくれると思います。
-:今回戦う競馬場も勝っている舞台ですからね。
友:東京の軽い馬場の2400mが、シュヴァルグランに一番合うと思います。
-:これだけ活躍したシュヴァルグランも有馬記念で引退ですけど、寂しくないですか。
友:寂しくなるけど、種牡馬という大仕事も待っているから、その子供でまたヨーロッパに挑戦できたら良いですね。
-:ユーキャンスマイル(牡4、栗東・友道厩舎)はいかがですか。今朝追い切られて、3頭併せでちょっと遅れましたが。
友:追い切りはこんな感じで問題ないと思います。ユーキャンスマイルは本当に去年の秋ぐらいから良くなってきました。それまでは右にモタれる癖があったんですけど、それもなくなり、特に左回りに特化すれば、好成績を残しています。新潟記念の2000mは少し距離が短いかもしれないと思っていましたが、良い競馬をしてくれました。前走の天皇賞(秋)でも負けはしましたが良い脚は見せてくれました。今回は2400mになって、この馬にはより良い条件だと思うんですけどね。
▲グングン力を付けているユーキャンスマイル(最内)
-:普段、運動をして歩いている所を見せていただいても、首が低くて、あまり周りを警戒していない感じです。そういうところが長距離向きの性格なんでしょうか。
友:折り合いに不安のない馬で、2400mでもまだ短いぐらいの馬なのに2000mでも好走してくれました。距離が2400mに伸びるのはユーキャンスマイルにとってプラスでしょう。
-:新潟記念を見ると、春よりも体力的に強くなっている時期ですね。
友:強くなっていると思いますよ。前走の追い切りでも、岩田騎手が2週前に乗って「ちょっとまだ太いかな」という報告があって、2週続けて乗ってもらいました。天皇賞(秋)を使って良くなっていると思いますよ。
-:シュヴァルグラン、マカヒキと併せたエタリオウ(牡4、栗東・友道厩舎)はいかがですか。
友:エタリオウは(横山)ノリさんに乗ってもらって「本当に体はすごく良い状態をキープしているから、あとは気持ちの問題ですね」というコメントでした。いつスイッチが入るか分からないので、今回は去年の菊花賞当時の深いブリンカーに戻します。これでエタリオウの気持ちにスイッチが入ってくれれば良いなと思っています。
-:追い切りでは深いブリンカーの効果は感じられましたか。
友:ノリさんが深いブリンカーをつけて乗るのは昨日が初めてだったのですが、「行きっ振りも良くなっている」と言っていました。
-:宝塚記念、京都大賞典を使って、ジャパンカップなります。
友:宝塚記念の時は正直、天皇賞(春)の疲れが残っていたかなという感じがありました。京都大賞典では、ゲートを出てからも全然気持ちが入らなかったですもんね。進んでいかなかったという感じでした。
-:もう一度、頑張っていた頃のエタリオウに戻って欲しいですね。
友:そうですね。ブリンカーを着けたことでの変化を期待しています。
-:ポイントは気持ちにスイッチが入るかどうかですね。
友:本当に追い切りの動きは全然問題ないし、体調も上向きなのでここ2戦とは違った結果が見たいですね。
▲豪華な3頭併せとなった13日の追い切り
エタリオウ内 シュヴァルグラン中 マカヒキ外
-:そしてマカヒキ(牡6、栗東・友道厩舎)について、京都記念3着、大阪杯4着と春は好走しましたが、休み明けだった天皇賞(秋)は10着でした。
友:速い流れで脚がたまりませんでした。レースで目一杯ストライドを伸ばして走っていたので、一度使った上積みはあると思います。
-:11/13水曜の1週前追い切りではシュヴァルグラン、エタリオウと併せました。
友:マカヒキは反応も良いので先頭を走らせました。後ろから来る2頭がズブいタイプなので、マカヒキは追いつかれると反応していました。そこで前に出すぎず我慢させることで走る気持ちを持たせることができた追い切りになりました。
-:ダービーを勝った府中の2400mで、復活を待つファンがいます。
友:今回のジャパンカップは逃げ馬不在で流れも落ち着きそうです。そこで脚をためられたら天皇賞(秋)よりも走れると思います。今週末、当週と追い切りも控えていますので、このまま良い状態をキープしていきたいですね。応援よろしくお願いします。
-:ワグネリアン(牡4、栗東・友道厩舎)は今朝、単走で追われました。
友:この馬は気合いが乗りやすい馬ですし、レース間隔も詰まっているから、単走でサッとやってもらいました。ユックリに見えると思いますが時計は出る馬なので、全体が81秒で終いも12.1秒ぐらいなんですよ。
-:見ていたら、84秒ぐらいに見えました。
友:僕が見ていても少し遅いのかなと思ったんだけど、それぐらい時計が出ているのだから、具合は良いんだと思いますよ。
-:ダービー馬の復活を祈っているファンの期待に応えられるかもしれないですね。ダービーの時は外枠から上手く先行しましたが、今回のジャパンカップはどのような作戦ですか。
友:まだ枠順も決まっていませんし、メンバーを見ても行く馬がいないのでね。
-:乗る方としては結構難しいですね。
友:難しいよね。
▲1週前は単走で追われたワグネリアン
-:全体の総括として、ジャパンCに5頭も出走させられるというのはすごいことじゃないですか。
友:それは光栄には思います。5頭それぞれに実力を発揮してもらいたいですね。
-:最後にファンにメッセージをお願いできますか。
友:5頭出走しますが、勝つのは1頭だけ。どの馬にもチャンスはあると思います。あと10日ぐらいありますから、週末と来週の追い切りでシッカリ仕上げて、当日を迎えたいと思います。
プロフィール
【友道 康夫】Yasuo Tomomichi
1963年8月11日生まれ。兵庫県出身。1989年5月にJRA競馬学校厩務員課程に入学し、同年9月から栗東・浅見国一厩舎所属の厩務員となる。1996年11月に松田国英厩舎へ移り、2001年に調教師免許を取得。2002年11月に厩舎を開業し、2005年の朝日チャレンジCをワンモアチャッターで勝って重賞初制覇。2008年の天皇賞(春)をアドマイヤジュピタで勝ってG1トレーナーの仲間入りを果たした。大魔神・佐々木主浩オーナーが所有するヴィルシーナ・シュヴァルグラン・ヴィブロスのきょうだいを送り出し、2016年の日本ダービーをマカヒキで制してダービートレーナーに。昨年はワグネリアンで2度目のダービー制覇、この秋は菊花賞をワールドプレミアで制してクラシック3冠トレーナーとなるなど、今や押しも押されもしない栗東を代表する調教師。