【東京大賞典】ゴールドドリーム 好調を維持して昨年のリベンジへ
2019/12/25(水)
2016年のチャンピオンズCからG1(Jpn1)のみを使い、さらに2017年のチャンピオンズC以降は新興勢力も台頭する中で10戦して4勝、2着5回、3着1回と抜群の安定感を誇るゴールドドリーム。キャリアを重ねて小回りコースも克服。馬の状態も高いレベルで維持しており、6歳の暮れを迎えても衰えは全く見られない。昨年2着のリベンジへ、その手応えを陣営に直撃した。
-:東京大賞典(G1)に臨むゴールドドリーム(牡6、栗東・平田厩舎)についてうかがいます。前回のチャンピオンズCはレコード決着で惜しくも2着でした。
堀部光弘調教助手:悔しかったね。勝ったと思ったところでクリソベリルに狭いところを割ってこられたからね。あれは勝ち馬を褒めるしかない。
-:しかも今年は開催日の関係で3歳馬が例年より1キロ軽かった。2キロ差になってしまったのもゴールドドリーム陣営にとっては大きかったですね。
堀:たぶん厩舎サイドでは2キロ差が敗因だったとは誰も思っていないです。クリソベリルは古馬一線級と戦うのは初めてだったし、向こうも不安要素がありましたから。それでも勝ったのがクリソベリルだった。
▲非常に惜しい内容だったチャンピオンズC
-:クリソベリルも持ち時計がない馬だったのにレコードタイムで勝ちました。
堀:いいレースでした。1.2.3着までの馬はそれぞれ完ぺきなレースだった。豊さんのインティも完璧に乗ったからあの時計が出たんだと思います。凄くいいG1だった。ゴールドドリームが負けてくやしいけど(笑)
-:あらためてこの馬の強さを再確認できたレースでもあったと。
堀:そうですね。平田先生もJRAの会見インタビューも受けていなかったですし、マスコミの注目度が薄れていってレース前は蚊帳の外という感じでしたよ。トレセン内の取材陣は新しい勢力を意識したいじゃないですか。これまでダート界を引っ張ってきた馬より。
-:でもファンは一番人気に支持しましたよね。悔しかったチャンピオンズCだったのですが、あれだけハイレベルなレースをした後はさすがのゴールドドリームでも疲れがでたのでは?
堀:いつもはすぐ放牧に出すんですよね。レース後の状態をあまり乗って確認したことがない馬なんです。今年のフェブラリーのあと、もしかしたらドバイいくかもという話があった時は在厩しました。その時は競馬後1、2回乗りましたが、疲れが出て硬さを感じました。
その前は南部杯のゲートで暴れたときですね。あれだけ出遅れしてしまっては放牧に出すわけにはいかず、ゲート練習をやりました。南部杯では走っていなかったし、そんなに疲れはありませんでした。今回のチャンピオンズC後は木曜から乗り出しましたが、さすがに疲れているかと思いましたよ。なのに疲れもなく、硬さはあるけど思っているより良い状態でした。
-:今回の東京大賞典は前回チャンピオンズCで負けた悔しさをぶつけるのにふさわしい舞台ですね。
堀:そういう嬉しい誤算もあって、東京大賞典にいい状態で使えそうなことが有難いです。
-:今6歳、イメージ的にはパフォーマンスが落ちる時期かなという感じなんですけど、ゴールドドリームにはそういうところは一切ないのでしょうか?
堀:ないと思っています。乗っていても衰えなんて感じないですよ。
▲最終追い切りも馬なりで好時計をマーク
-:先ほどの南部杯で出遅れて負けた後にゲート練習をされたとのことでしたが、その後、ゲートは安定しています。それが南部杯以降の安定した成績につながっていると思われますか?
堀:つながっていると思いますね。今でも多少はゲートの後ろ扉を蹴ったりしているみたいですけどね。我慢して立ってくれています。
-:去年の東京大賞典は勝ったのはオメガパフューム。ゴールドドリームは一番人気で惜しくも3/4馬身差されました。あれはどう判断したらいいですか?
堀:あれはデムーロ騎手が天才的に上手に乗っていたイメージあります。
-:あれも斤量が2キロ差あったんですが?
堀:チャンピオンズCに向けてかなり整えていた状態だったのを回避して一旦ペース落とさないといけなかった影響がありました。東京大賞典はチャンピオンズCから1カ月後になるわけじゃないですか。一気に目標のレースにいけたらよかったけど一旦緩めて…。ほぼピークまでいきかけていた状態をちょっと抑えてまた仕上げるのがわずかな誤算だったと思います。
-:ゴールドドリームでも調整の誤算は響くのですね。
堀:G1ですからね。相手もすごく仕上げてきますし。
-:ゴールドドリームといえば体重の増減が2桁あることが多いですよね。
堀:そうですね。G1に出る馬では珍しいですね。ゴールドドリームはよく食べるんですよ。食いしん坊で甘えん坊でね。この前のチャンピオンズCは久々に当日輸送で536キロでした。プラス10キロでしたが成績には関係ないんですよ。10キロ台でも30キロ台でもG1勝っているんですから。
-:結論から言えば、僕らは体重を気にしなくていいんでしょうか?
堀:気にしなくていいんです。ゴールドドリームが使っているということはいい状態でもっていっている証拠なんです。平田先生は少しでも不安あれば絶対使わないんで。使ってきたということは状態に関して不安なしということで間違いないです。
-:改めてゴールドドリームはどんな馬ですか?
堀:黒くてでっかい馬です(笑)。乗りやすくて体幹が強くて操作しやすい。走り出したら体の大きさを感じさせない軽さもあります。並足はゆったり歩いているから。堂々としていていいと思います。
-:2歳から6歳まで大きいレースばかり使っているから他の馬より1回1回の負担が大きいと思います。そういう馬は成長して筋肉量が増えていけば硬くなったり重たくなったりすることがあると思うのですが、この馬はどうですか?
堀:この馬は若いころのほうが硬かったです。最初から筋肉量もありましたけどね。年をとってくるにつれて、関節、繋ぎがやわらかく上手に使えるようになってきた印象です。
-:柔らかく走るテクニックを覚えた?
堀:そうかな。それで小回りの地方競馬でも走れるようになりました。コーナーがきついところでも使えるようになったのはゴールドドリームが関節を柔軟に使ってくれるからなんです。3歳時の園田チャンピオンズシップではケイティブレイブの2着に負けましたが、いい経験になりました。深い馬場、きついコーナー、あれは完全に溺れていましたよね。
あの頃はケイティブレイブの方が前に行けるしコーナリングも操作性もよかったですから。そういう経験を経て、ゴールドドリームの潜在能力に柔らかく走る技術が伴っていったんでしょう。チャンピオンズCのポジションにはびっくりしましたね。あのメンバーで2列目にいけるんですから。若い時に比べて競馬が上手になってきていますよね。
-:最初にチャンピオンズCに出走した時は大敗しましたよね。
堀:あれは出遅れて慌てて押して行ったからなんです。本当に賢い馬だからゴーサインを出したら噛みっぱなしで行っちゃうんですよ。それを1年後はムーア騎手が出たなりで後ろから、スローペースで大丈夫かなと思うくらいためる思い切った競馬をしてくれました。ためれば切れると言ってもあの脚はなかなか使えないですから凄い馬ですよね。
-:ムーア騎手のテーマはスイッチを入れるのは1回だけということを貫いた騎乗だったんですね。
堀:ちょうど南部杯を出遅れて負けた直後だったので人気がなかったのもよかったですね。
-:そこからの成績のまとまり方がすごいですよね。
堀:ほんとすごい。安定しています。
▲右からゴールドドリーム、堀部調教助手、藤懸貴志騎手
-:厩舎サイドがあたえたゲート練習という課題に応えてくれたゴールドドリームに感謝ですね。ぜひとも東京大賞典では1年の締めくくりを勝って気持ちよく終わりたいですね。今週の追い切りはいかがでした?
堀:良かったですよ。2年くらい変わらず動きは良いんですよ。高いレベルでずっとです。だから、追い切りの感想を聞かれても「いい」としか言えないんです。ずっと良いんですから(笑)。チャンピオンズC、フェブラリーSを勝ったあの年からずっと維持している感じです。
-:ふつうは得意な季節や絶好調の年齢がありますよね。それがないんですね、ゴールドドリームには。
堀:大事に使っていますからね。「調子がいい、変わりなく」が僕らが出せる最大の高評価。だってずっと上なんでその評価から上積みがないんです。落ちるときは簡単に言えますが、それにもならない。とにかくいつも毛艶がいい馬です。調教する前に馬房で見ると黒光りしていて、彫刻みたいな馬なんですよ。冬でも毛が伸びない不思議な馬です。
-:それだけの馬を乗ってきて、いつ走ると確信しましたか?
堀:新馬戦前に軽くCWコースを走った時に走る馬だと感じましたよ。厩務員さんに相当走ると言ったのを覚えています。でも現実のゴールドドリームは僕がその時感じたよりも凄い馬でした。
-:最後に東京大賞典でゴールドドリームを応援しているファンに一言お願いします。
堀:チャンピオンズCは厩舎スタッフも感動する素晴らしいレースでしたが、ゴールドドリームは2着に負けてしまいました。しかしレースの疲れもなく、東京大賞典に向けて順調に来ています。2019年は勝って締めくくりたいのでゴールドドリームを応援してください。
プロフィール
【堀部 光弘】 Mitsuhiro Horibe
広島県の福山市出身。福山からきた岡田騎手とは幼馴染みで、実家が福山競馬場で厩舎をしていた。中学卒業後は内藤繁春元調教師の外厩(牧場)で働き、17歳で競馬学校に入学。平成元年に内藤厩舎に入り、現在所属する平田修調教師とは30年以上の付き合い。平田師の調教助手時代の代表担当馬はダイユウサクで、同馬を牧場で世話していたのは堀部助手という縁がある。普段馬に乗る時に心がけていることは「邪魔をしないこと」。年々、馬質があがる厩舎の屋台骨を支えている。