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戸田博文調教師

戸田博文調教師


-:ジャパンダートダービーに出走を予定しているピュアオパールについて、戸田博文調教師に伺います。よろしくお願いします。

戸:よろしくお願いします。

-:まずは前走の関東オークスについて振り返っていただきたのですが、その前に芝路線を歩んできたピュアオパールがダート路線に進んだ経緯から教えていただけますか?

戸:これは単純に言いますと、ピュアオパールのお母さんのピュアブラウンも管理させてもらっていましたけど、関東オークスで、骨折をしていなければ勝ったんじゃないか?というレースをしている(2004年=3着)ので、それが一番の理由ですよね。

-:なるほど。

戸:あと、ここまでレースを使ってきた経緯で言うと、新馬や2戦目のオープンくらいまでは能力で走り切ってしまって、短距離でも勝てたところはあると思いますけど、最初に芝の短距離で2勝したことで、牝馬の大きなレースを狙う正攻法の路線で1600も使いましたが、もうひとつの競馬が続いていたんですよね。それで福永祐一君に乗ってもらったファルコンステークスのときに「やっぱり1200のスペシャリストが集まるようなレベルまで来てしまうと、ちょっと苦しいかもしれない」というのが祐一君の正直なコメントだったんです。

-:そうだったんですか。

戸:ただ、馬は良いしフットワークも良いので、もっと長い距離でも良さそうという助言を祐一君からもらったことと、お母さんの血統からして距離はもつだろうという考えもあって、距離を延ばしてある程度自分のペースで行く競馬もありじゃないかな、ということでスイートピーステークスを使ったんですよ。結果は勝てませんでしたけど、なかなか良い競馬だったので、これなら距離はいけるな、と思いました。スイートピーで全然良いところが無いということだったら、また考えたかもしれませんけどね。

-:距離に関してはメドが立ったわけですね。

戸:そうですね。あと、ダートの適性に関しては、母系がそういう路線に対応している血統ですから、問題ないだろう、と思いました。距離延長に対応出来たことや血統的背景など、全てを考えていけるだろうと思って、関東オークスを使うことにしました。

-:血統的背景だけでなく、ピュアオパール自身の走り方からダートに向いていると感じられたことはありますか?

戸:レース前に1回吉田豊君に跨ってもらってダートの感触を掴んでもらおうということで、Dコースで追い切りに乗っていただいたときに、「凄く乗りやすいし、走りも良かった」というコメントをいただいたので、更に確信が持てたというか、これならダートでも間違いなくやれるだろうという感触は持っていました。

-:実際に関東オークスは僅差の2着でしたけれども、先生はレースをどうご覧になられましたか?

戸:結果として負けはしましたけど、善戦もしていましたし、レース中に落鉄をしていたことも考えると、十分こちらの期待通りの走りをしてくれたな、と思います。直線で結構後ろと離れてしまったので、最後の最後でいくらかフワッとしたみたいで、騎乗してくれた吉田君は「ちょっと早く離しにかかり過ぎたかな」とも言っていました。もういいだろうと思ってビュッと行ったときに、良い反応で動いてくれたし、逆にもうちょっと我慢してから追い出しても良かったかな、とも言っていましたね。

-:なるほど。さて、レース後は様々なローテーションが考えられたと思いますが、ジャパンダートダービーに進むことになった経緯はどのような感じだったのでしょうか?

戸:賞金的にも、川崎のスパーキングレディーカップでは補欠になってしまいますけど、ジャパンダートダービーなら使えるでしょうし、メンバー的なものを考えても、関東オークスに出走していた馬をひとつの指標にして、東京ダービーを勝ったクラーベセクレタとの力差を比較してもそれほど差はないぞという判断のもと、オーナーと相談して、それならここでどれくらいやれるかやってみましょうか、という形で出走を決めました。

-:体調面に関してはいかがですか?

戸:そんなに間隔を詰めて使っていた馬ではないので、関東オークス後の体調も凄く良いですよ。体が小さい馬なので、そこだけがネックになっていましたけど、良い感じで戻っています。

-:最近は暑い日が続きますが、調整に影響は感じられますか?

戸:いえ、それほど暑さに弱い馬ではないので、特に問題はありません。去年のデビュー戦も夏の新潟で結果を出していますしね。



-:小柄な馬なので、こう暑いと体重調整に影響があるのかな、と思いました。

戸:馬体重に関しては、寒い時期でも暑い時期でも気にしているところですから。ただこの馬の場合は、カイバが食べられなくて太らないというのではなくて、もう元々小さいんですよ(笑)。

-:そうなんですか。

戸:カイバを一生懸命食べているけど大きくならない、というだけの話で、もっとカイバを食べてくれればもう一回り大きくなってもいいんだけどな、という感じで馬体減を気にしながらやっているのとはちょっと違うんですよね。小さいなりにカイバは一生懸命食べてくれています。

-:カイバもしっかり食べて順調に調整が進んでいらっしゃるようですが、今回、大井の2000メートルという舞台で行われるジャパンダートダービーのポイントはどの辺りにあるとお考えですか?

戸:もうスタートだけだと思うんですよね。その辺りを含めて、短距離よりも距離を延ばした方がいいと福永君のコメントにもありましたから。

-:なるほど。

戸:ただ、二の脚は普通にしていても速いので、無理なく先行出来れば、大井の2000メートルでも十分やれるんじゃないかとは思っています。あとは枠順ですね。やっぱり関東オークスでは、外枠というのは結構痛かったですよね。外枠だし、ハナに行かなきゃいけないし、というジョッキー心理もあって、それに加えてスタート直後に躓いたとき、ちょっとステップして落鉄してしまうことも起きているので、その辺がスムースに行ってくれればと思います。

-:ちなみに今回もハナに立とうというお考えですか?

戸:中央勢の牡馬で何が何でも行きたそうな馬がチラホラ見られますけど、どうなんでしょうね?ただ、吉田君は「ダートの走りだと、それほどハナを主張しなくても競馬が出来ると思います」と言ってくれました。吉田君にはここのところ続けて乗っていただいていますけど、芝では、楽をしていても思ったより終い弾けないところがあるらしいんですけど、ダートではもう全然、脚の使いどころも融通性があって、走りに幅が出そうだというようなことを言っていました。追い切りでもそういう感じだったらしいので、レースでは相手の出方次第で、何が何でも行く馬がいれば行かせてもいいのかな、と思っています。

-:今後のローテーションの為にも好結果を残したいですね。

戸:そうですね。今年の秋からJBCレディスクラシックというレースが新たに出来ましたけど、やっぱり中央枠が非常に狭き門ですからね。古馬も常連の手強いメンバーが名を連ねている中で、頑張っていかないと賞金的に苦しくなって来ますから、ここでも良い結果を出したいですね。

-:応援しています。お忙しい中ありがとうございました。


【戸田 博文】 HIrofumi Toda

1963年茨城県出身。
2000年に調教師免許を取得。
2001年に厩舎開業。
JRA通算成績は237勝(11/7/7現在)
初出走
01年6月24日 2回福島4日4R ケイアイミラクル(3着)
初勝利
01年7月15日 1回新潟2日4R ケイアイミラクル


最近の主な重賞勝利
・10年オールカマー/・09年新潟大賞典/・09年エプソムカップ(全てシンゲン号)
・09年中山牝馬S/・08年京成杯AH/・06年桜花賞/・06年フラワーC(全てキストゥヘヴン号)


01年の厩舎開業後、順調に勝ち星を伸ばし関東リーディングの常連となる。06年桜花賞をキストゥヘヴンで制し、厩舎初のG1タイトルを手にした。06年から10年まで5年連続で重賞タイトルを手にしている。今回ジャパンダートダービーにピュアオパールを送り込み、11年初の重賞勝利を狙う。