関係者の素顔に迫るインタビューを競馬ラボがオリジナルで独占掲載中!

太宰啓介騎手

太宰啓介騎手


-:まず、前走の府中牝馬Sをスタートから振り返ってください。

太:前半は、いつも通りゆっくり出して折り合いに専念しました。他の馬に包まれないよう、少し外目に出していました。道中はリラックスして走れましたし、折り合いの心配はない馬ですね。ただ、勝負所で少し待たされました。追い出す瞬間、前にダイワジャンヌ、イタリアンレッドがいたので、さらにその外を抜けるしかなかったんです。

-:すんなり抜け出せていたら、少し結果は違ったと思いますか。

太:どうなんでしょうね?道中同じ位置にいたアニメイトバイオのほうがスムーズでしたね。フミノイマージンも一瞬アニメイトを交わしているんだけど、最後は息が持たなかった感じで差されてしまった。でも、マーメイドSから4カ月ぶりの競馬ですからね。仕上がりも7分くらいだったので結果は気にしていません。僕はフミノイマージンのレース内容は良かったと思いますよ。

-:美浦滞在から府中入り、という珍しい調整でしたが輸送に難がある馬なんですか。

太:ちょっと前まで体重の変動が大きい馬だったので、馬にストレスのかからない調整を選んだんです。今は体重も大きく変わる事がなくなっているでしょう?担当の中井さんがきっちりケアしてくれるからなんですよ。最近の体を見てもフックラしてきたので、体重に関しては心配していません。

-:フミノイマージンは差し馬なのに成績が安定しています。普通、差し馬と言うと、着順は展開に左右されそうですが。

太:牝馬同士なら能力的に上位なんだと思います。3歳の頃は数も使っていたので調子も良くなかったし、トモの状態も今のような力強さはなかったんです。今年に入って、ようやく馬がしっかりしてきたのが大きいです。それに、この馬は元々、ゲートが速いんです。行かせたら逃げるくらいのスピードがあるんですよ。ただ、ハミを噛んでがむしゃらに行くだけでは終い止まってしまう。そうしないように前半はハミを抜いて、溜めておいて後半の瞬発力を活かすようにしているんです。
だから最近は仕掛けた時の反応が凄いでしょう。馬が競馬を覚えてくれたからなんですよ。簡単なように思えるけどハミを噛んでスタートするようなスタートセンスの良い馬に「後ろで我慢しろ」と言ってもなかなかできないんですよ。でもフミノイマージンはレースで2回くらい「ゆっくり出たら良いんだよ」と教えたらすぐに覚えた。しかも、今はハミを噛まないので、道中は折り合いの心配もない(笑)。だから大きいレースでも安心して乗れるんです。


-:その安心感が太宰騎手に初重賞をプレゼントしてくれたんですね。

太:(福島牝馬S時の)1枠1番の差し馬って乗り難いんですけどね(笑)。行くとこ行くとこ開いてくれましたし、「こんなに上手くいって良いのか?」って、感じでした。

-:2000m以上の距離への心配はどうですか。

太:心配は距離よりも展開ですよ。縦長のスローになったら嫌ですね。

-:縦長のスローなんてあるんですか。スローは団子状態のイメージがありますが。

太:稀にあるんですよ、スローの縦長(笑)。でも、GⅠだと、そういう極端な展開にはならないでしょうけどね。ある程度、流れてくれたら乗りやすい馬なんで、いつも通り差してきますよ。

-:フミノイマージンの切れ味だと京都の外回り2200m、エリザベス女王杯ではどこからゴーサイン出せば間に合いそうですか。

太:最後のコーナーを曲がりきってからでも間に合うんじゃないですか?この馬の良さは仕掛けた時の反応の良さです。スーッと前の馬に取りつく脚が凄く速い。ただ、早目に抜け出すとソラを使ってしまうので、ギリギリまで追い出しを我慢して切れを活かす競馬をするつもりです。

-:「大外からフミノイマージンッッ!」って、感じですか。

太:それは走らないパターンですよ(笑)。この馬は1頭で走るより近くに馬がいたほうが良いタイプ。そのほうが走りに集中してくれるんですよ。だからエリザベス女王杯でも併せる相手を見つけて追い比べに持ち込めたらチャンスだと思います。



-:今年の外国馬、スノーフェアリーやダンシングレインなど怖い相手になりそうです。

太:スノーフェアリーはタフな馬ですよね。3歳のイギリスオークスから全てGⅠで走っている。今年の10月だけでGⅠを2回使ってから長距離輸送して来日するわけだから、どうなりますかね。去年のエリザベス女王杯を見たら確かに強烈な印象はありますけれど、去年よりもキツいローテーションだから付けいる隙はあると思います。ダンシングレインは戦績を見ただけなのでピンとこないです。

-:アヴェンチュラやホエールキャプチャなど日本の有力3歳馬も揃っています。

太:むしろ3歳馬を注意しています。3歳馬54キロという2キロのアドバンテージは思ったより大きいですよ。3歳とはいえ、もう秋ですから馬格的には古馬と変わらないんです。

-:今週の追い切りは、どんな感じでしたか。

太:フミノイマージンは担当の中井さんが乗って、僕は併せ馬のアーリーロブストに乗りました。一緒に走りながら横で見ていたら、先週より反応が良くなっていますよ。特に終いの反応がいい。今まではレースの週に一杯に追った方が成績は良いような気がします。状態は日に日に上向いているので、かなり上積みがありそうです。

-:我々、競馬ファンが馬券を買う時に、パドックや返し馬をチェックするんですが、フミノイマージンを見る時のポイントを教えてください。

太:難しいな……乗っているほうは“トモ”の感じから状態を判断しています。でも、それをパドックや返し馬で知ろうとしても無理じゃないですかね。返し馬はけっこうグーッとくるタイプですから、気合いとかは伝わると思います。だって、毎回一生懸命走る馬ですから余程の事がない限り大崩れはしません。馬体重やイレ込みなど細かい事を気にしないで良いタイプです!

-:太宰騎手は先行粘り込みの競馬が多い印象があります。先行馬と差し馬、どちらが好きですか。

太:差す競馬のほうが好きですよ。一気に交わしていく時って気持ち良いですから。昔、僕がデビューした年に乗っていたターフプロテクターという馬がいたんです。亡くなった父の厩舎にいて、僕に2勝目を勝たせてくれた馬なんです。あの馬は新人だった僕に差す競馬の面白さを教えてくれました。新人だった僕は乗っているだけで、馬のほうが競馬を知っていたんです。勝負所で馬が勝手にハミを取って伸びてくれる。ターフプロテクターのおかげで差し馬が好きになりました。

-:太宰騎手にとっても、今年の目標であった「重賞を3つ勝つこと」を達成できるかもしれないレースです。

太:3つ目がGⅠだとなおさら嬉しいですね!これだけ走る馬に乗れるのは光栄なことですから、オーナーや本田先生、応援してくれるファンのためにも期待に応えたい。良いメンバーが揃うのは重々承知の上で、チャンスだと思っています。




【太宰 啓介】 Keisuke Dazai

1979年 滋賀県出身。
JRA初騎乗
98年 3月 1日 1回中京2日 1R ターフプロテクター(6着/14頭)
JRA初勝利
98年 3月 8日 1回中京4日 8R エンジェルスポート
JRA通算成績は348勝(11/11/6現在)


■重賞勝利
・2011年 福島牝馬S/マーメイドS(共にフミノイマージン号)


父が騎手であり、調教師も経験した太宰義人氏(故人)。98年に父の太宰厩舎所属騎手としてデビュー。同期には池添謙一、酒井学、白浜雄造ら。デビューイヤーに34勝を挙げて関西フェアプレー賞を獲得。 例年、夏の小倉での活躍が目立つジョッキーとしても知られるように、デビュー以降、コンスタントに勝ち星を積み重ねてきたが、度重なる重賞勝利のチャンスから見放されていた。
しかし、今年4月、未勝利勝ち時にも手綱をとっていたフミノイマージンとのコンビで待望の重賞初勝利を挙げると、マーメイドSでも連勝。秋の大舞台・エリザベス女王杯へ名乗りを挙げている。 プライベートでも先日、安藤光彰騎手の長女と結婚を発表。公私共に充実した日々を送っている