2012年度、栗東の新規開業調教師
2012/4/15(日)
吉村圭司調教師
-:そして、厩舎の活躍の中で、吉村先生自身も調教師試験にも合格されたわけですが、当時の自信のほどはどうだったでしょう。
吉:競馬学校を一度、騎手課程を辞めている人間だから、正直、調教師試験を受けても、獲ってもらえるのか?という部分はありましたよね。でも、一度、失敗しているだけに余計に頑張らないといけないと思いました。
-:その失敗が成功に繋がったわけですね。
吉:でも、やっぱり、その失敗があったからというのはあったでしょうね。
-:ちなみにこの一年間は、“技術調教師”として、池江厩舎に所属されていました。役職的にはどんな仕事をされていたのですか?
吉:いや、普通の仕事ですよ。調教をつけたり、一厩舎スタッフと変わりません。あとはこれから厩舎を開業するにあたって、色々なところにあいさつに行ったり、営業活動もしたりと。
-:これから、厩舎を開業されて、2歳馬など、どういった馬主さんから入られる予定ですか?
吉:個人の馬主さんからも、色々入れてもらえる予定です。声をかけてもらっていますね。全体でみれば、偏りがないし、個性的な馬が多く入ってくると思います。
-:そして、ご自身で調教をつけていくにあたって、どういったメニューや、どんなテーマでやられていくかありますか?
吉:馬にあったメニューを組んでいきたいとは考えていますね。あと、集団調教をしつつも、なるべく個体にあった、これくらいだったら、耐えられるだろうというのを考慮した調教はしていきたいです。やっぱり、どの馬も弱いところはあるじゃないですか?でも、負荷を掛けなければ、強くなっていかない部分もあるので、そのへんの見極めは自分もキッチリ養っていかないといけないと思いますし、馬をシッカリ観察していかないといけないと思います。
-:そういった点に関しては、飯田先生、池江先生のもとで働いた経験も活きてくるわけですね。
吉:先生も馬にかけては、時間を掛けて、ジックリ観察される人でしたから、凄いと思いますよ。お二人とも、当然ながら仕事にしっかり向き合っている方でしたからね。
3月24日にポップアイコンで初勝利
-:しかし、答え辛い質問かもしれませんが、池江厩舎から、今の厩舎で始めるにあたって、馬のレベルとして、ギャップに苦労しそうじゃないでしょうか。
吉:いやいや、そんなことないですよ!だって、馬は一頭一頭、可能性を秘めていますからね。池江先生のところに未勝利や500万下の馬もいて、それをどう着順を上げようかと考えるわけですからね。いつも、池江先生と言えども、悩んでいると思いますよ。傍からみれば、そう思われるかもしれませんが、どんな馬でも変わらないです。僕らのように間近で携わっている人間にそんなことはないですね。
-:愚問かもしれませんが、獲りたいタイトルとかはありますか?
吉:やっぱりダービーですかねえ!海外のレースもありますが、やはり、日本人ですから、日本のダービーを勝ちたいですねえ。
-:条件的にはどんな条件のレースが好みだったりとかはありますか?
吉:う~ん、芝の中距離くらいかなあ。体型的にもスラッとした感じの馬が好きですね。あくまで見た目だけで言うならば、ですが。
-:でも、子供の頃は地方競馬に居られて、ゴツいダート馬ばかり見ていたんですよね(笑)。
吉:ハハハ(笑)でも、地方馬って、中央から来た馬が多いんですよ。中央で脚元が弱くて、出世が出来ないような馬もたくさんいて、血統的には良くても、能力を発揮しきれずに種馬になれないような馬が来たり、なかなかいい馬はいましたよ。
-:厩舎を開業されるにあたり、これからの厩舎としてのポリシーはありますか?
吉:今の時代の調教師の方なら、そんな言い方をするとは思いますが、みんなで一つのチームとして、協力し合いながら、やっていきたいですね。決して楽な時代ではありませんから、それは絶対必要だと思います。
-:今まで、助手さんとして、調教師の方の指示に従って仕事をしてきて、今は上の立場になって、指示をする難しさはありますか?
吉:やっぱり、それはありますね。実際に助手が乗って感じる部分もあるでしょうね。だから、なるべくスタッフとコンタクトしてやっていきたいですね。
-:厩舎としての特色をアピールすると、どんな部分になるでしょうか?
吉:難しいよねえ(苦笑)。まだ、開業したばかりだから。理想をいえば、ファンの方に応援してもらえるような成績を残すこと。それには結果を出さないといけないし、大きいステージでやれるような馬がいないといけないですね。
昨年の有馬記念にて。オルフェーヴルと口取りに収まる吉村師
吉:イメージの問題ですが、競馬をみながら、この馬にはこの騎手が合うんじゃないかというところをみていきたいです。あとは馬主さんの意向もありますし。初めのうちは固定をすることはないかと思います。でも、今の時代はいい騎手が空いてないからねえ……(苦笑)。走る馬にいい騎手が乗るのは当然だし、思うようにはいかないでしょうね。
-:出走させる二週間前には予定を組んでおかないといけないと。
吉:そうそう。だから、それを考えると、近郊のいい育成場を押さえておかないといけないですから。その段階から、このあたりに戻せるという番組をみて、距離・条件を噛み合わせるようにして。でも、少なからず、狂ってくるわけじゃないですか?こっちに来ても動きが悪いとか。
-:でも、そう思って、プランをずらせるのが馬本位の厩舎だろうし。
吉:ただ、使うだけじゃ、駄目だろうし、そこは難しいところですね。そこが噛み合うようになれば、結果は出てくるとは思いますが。
-:では、最後にファンへ向けてアピールをお願いします。
吉:一頭一頭、管理して、しっかり結果が出るように努力するのみだと思いますので、それで応援してほしいです。
-:池江先生の元から出られているだけに周囲からのプレッシャーというか、期待度は高いと思います。
吉:エッ?高いですかね!?
-:いやいや、思うはずですよ(笑)!
吉:まぁ、でも、池江先生のところでお世話になっていたから、“あそこにいて、何やっていたんだ?”と言われないようにしないといけないとは思いますけれど、正直、今のところ、僕はプレッシャーというものは感じていないです。「そんなに期待されているの?」というくらいだし(笑)。僕は池江厩舎にいたから、たまたまああいう馬の隣にいれただけで、感じても仕事にならないですからね。毎日の仕事をきっちり考えて取り組んでいければ、繋がってくると思いますし、そこが重要なのかと思います。
いきなり高いステージで馬が走るには運だけの部分が強いと思いますし、運が必要な世界だとは思いますよ。でも、重賞、GIで結果を出すには日々の積み重ねが大事だと思いますし、それはきっちり仕事をして、結果に繋げていきたいですね。それはスタッフの皆にも言っていますよ。池江先生も最初のころにそう言われていましたから。何にしたってそうですよね。
-:確かにその通りですね。お忙しいところありがとうございました。これからの活躍を期待しています!
吉:こちらこそ。また取材してもらえるような馬を作っていきます!
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荒尾競馬で調教師をしていた父の影響で競馬界へ。トレセンへ就業後は飯田明弘厩舎、池江泰寿厩舎と渡り歩いた。技術調教師として池江厩舎に在籍していた昨年はオルフェーヴルの三冠達成を目の当たりにするなど、貴重な経験を得て、2012年3月から厩舎を開業。池江師から譲り受けた管理馬で初勝利を挙げた。 |