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山田了平調教助手

山田了平調教助手(栗東・角居勝彦厩舎)


未知のコースも得意の?左回り


-:この馬のポイントって言ったらどこでしょうか。ファンはやっぱりパドックで馬を見るので、どんな歩き方の時が良いのかというのを教えてください。

山:どうでしょうねぇ。前走が結構気合いが乗っていたんですよね。

-:それって怖さでもあると思うんですよ。馬券を買う方としては。「これで先行して大丈夫?」っていう。

山:気合いが乗っていて、ダクを踏んだり、汗をかいたり、そういうのではないんです。ただ引っ張って行って……、見えないところなんですけど、腕がもげそうなくらい「これヤベェな……、早くパドック終わんないかな(汗)」っていうのはあります(笑)。

-:早く出ようよって(笑)。

山:「やめてくれ、腕ちぎれるわ~」って思いながら(笑)。

-:そういうパドックって中距離戦では、あまり良くないはずなんですけどねぇ。もっと、引き手をプラーンと……、若干リラックスして歩けている方が良いと思うんです。

山:普通そうですよねえ。

-:じゃあ前回のパドックよりは若干こうオフ気味で歩けた方が良いと。

山:いや~どうですかねえ。でも、僕らもこの世界で15年くらいやっているので、パドックで引っ張っていて「あ~行けるかな」って状態は、大体分かりますよ。皆、分かるはずだと思いますけど。

-:それはグッと来る手応えで。

山:そうです。それが入れ込み過ぎているのか、気合いが乗っているのか、走りたがっているのか、それくらいは多分、皆分かるかなって。そんな程度です(笑)。

-:ただ、一般のファンは分かりにくいと思うんですよ。これは気合いが乗っているのか、入れ込んでいるのか。

山:厩務員のベテランの中には、もうポンと馬房から出して一歩目でもう「これは走るな」って言う人もいますからね。そういう味なベテランになりたいなって思っていますけれども。

-:でも、歩様とかもパドックで解説していますけど、あそこで見ても実際は分からないんですよね?

山:多分、僕がパドックの外から馬を眺めていても、分かんないと思うんですけどね(笑)。

-:だって散々ウォーミングアップをしてきた挙句にパドックに出るんですよね?

山:そうですねえ。



-:先ほど仰っていた、馬房から出す一歩目とか、そういうところだったら分かる気がするんですけれど…。

山:えぇ。僕は「分かりたいな」って、思っているだけですけどね。

-:たまたま行った厩舎で、馬房から出した時に凄い歩様の馬がいて「これでもレースに使うのか?」って思いましたけど。

山:でも地方の馬は大体そういう馬が多いっていうので、語れないですよ。“馬は語らず”。だから、僕に取材はしたらいけませんよ(笑)。でも、(インタビュアーの)高橋さんは兄貴(山田泰誠元騎手)の知り合いとは嬉しいですね。

-:現役時代から知っていますよ。お兄さんの乗っていたメジロパーマーなんか脚質が、キャトルフィーユに似ていますよね。

山:本当は兄貴が乗って、僕が担当した馬をレースに送り出すというのが一つの夢だったんですけれどね。なかなか実現せず……。

-:お兄さんも現役時代の後半は武邦厩舎所属で、弟は伊藤雄二所属でしたからね。

山:でも、今は伊藤雄先生にいた笹田先生のところにいるという(笑)。兄貴のいる笹田厩舎のレディアルバローザはキャトルの姉なんですよ?忘れな草の日に一緒に出走していたんです。

-:そうなんですか。父がディープインパクトに変わったからなのか全然似てないですね(笑)。では、改めて、オークスへの手応えをお願いします。

山:スタッフ全員で色々なものを詰め込んできた馬ですからね。気持ちもそうですが、調教もそうですし。それを全て出し切れたらと思います。

-:オークスというと、大きな馬よりも、軽くて小柄な馬が来る印象がありますね。

山:そうですか。でも、470くらいあったら嬉しいんでしょうけれどね。

-:それは人間的にですよね。去年のオークスも出走馬自体が小柄でしたし、上位は470下の馬ばかりでしたよ(笑)。

山:でも、この前キャトルフィーユを曳き馬していたら他の厩舎の人に「角居厩舎にもそんな華奢な馬がいるんだなあ。走らないだろ?」って(苦笑)。だから、「そうですねえ~。走ってくれたらいいんですけれど」なんて話していました。

-:みんな角居厩舎の馬は馬っぷりも良いと思い込んでいますからね。でも、例えば、ブエナビスタやローズキングダムのように見栄えはしないかもしれないけど走る馬はいますよ。

山:ローズキングダムは馬っぷりはなくても独特のオーラがありますよ。ブエナビスタも見栄えはしなくても、血統の良さもあるし、厩務員さんが陰で努力していると耳にしますから。「なるほどな」と思わされることはあります。

-:僕らも馬を見る時に良いっていうのは所謂“馬っぷり”の事でしょう?でもそれだけで競走能力が決まるわけじゃない。馬を見栄えだけで見たらいけないですね。

山:馬の体型以外にも、僕はその馬を担当している人を見ますね。「うわっ、この人ならヤバいな」とか。初めて僕はロードプラチナムという馬で重賞を使ったとき、雰囲気に飲まれましたね。2着にはなりましたが、人間が飲まれるとはこういう事なんだと感じさせられましたよ。

-:でも、もう飲まれることはないでしょう。

山:今日は厩舎で勝ち祝いがあるから飲まれないように飲んでおきます(笑)。



-:ハハハ(笑)。あと、当日の体重はどうみておいたらいいですか?

山:馬体重は毎週一回量っているんですけれど、ここ2週間連続で450キロ台ですね。明日(10日)、また量りますが。

-:ここ2走続けて440キロ台。府中に運んでの当日はどれくらいになりそうですか?

山:今、減っても442とか、444あたりで食い止めたいなと思っています。

-:キャトルフィーユ自体は府中に着いてからも飼葉を食べてくれる馬ですか?

山:オールザットジャズは食べてくれる馬なんですけれど、この子は意外に繊細だったりしますね。

-:それは中山に行った時の経験では、そうだったと。

山:ええ。でも、減るとは思いますが、今日跨った感じからは、減ろうが関係ないと思いました。

-:関係ないというのは減った上でちょうど良くなると。

山:いや、状態の良さを感じたので、僕の経験は浅いですけれど、たぶん、これで行けるんじゃないかと……。

-:では、人気馬が後ろから来る中、キャトルフィーユが早目に抜け出しているところをイメージして、ワクワクしてくれればいいですね。

山:そうですね……。みなさんイメージしてくれればと思います。来週、もう一回、(福永)祐一さんに跨ってもらう予定ですけれど、日曜日も岸本さん(ルーラーシップなどの岸本助手)に左回りのチェックもしてもらって、追い切りもしてもらいます。

-:火曜日(左回りの日)に下で乗られたことはあると思いますが、手前の換え方などのクセはありますか?

山:そういうのはないとは思いますが、岸本さんは「左は走るよ」と言っていました。

-:それは凄いポイントじゃないですか!これで上位のチャンスもみえてきますね。

山:ここだけの話、得意なんじゃないかと(笑)。

-:先行が出来て、折り合いがつくことも長距離では大きな強味ですが、左回りも走るとなれば、更に大きいですね。それは右手前に換えた時に良さが出るという事ですか?

山:それもありますし、色々あるんじゃないでしょうか。とりあえず、日曜日の最終確認をしてもらっての話ですね(笑)。上がって来て「了平くんゴメン!左回りダメだ!」なんて言われるかもしれないですから(笑)。

-:この馬自体、乗り手を選ばないタイプじゃないですか?

山:そういう風に作ってきたんですけれどね。乗り替わりが頻繁にありましたし、祐一さんが乗ると決まってからは、祐一さん好みの馬造りをしてきたつもりです。桜花賞を走ったメンバーは強敵ですが“得意の左”でアッと言わせるように仕上げますので、応援よろしくお願いします!

(取材・写真:高橋章夫)


「賞ウィナーの妹だが、掴みどころのないタイプ」
山田了平調教助手インタビュー前半→


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【山田 了平】 Ryohei Yamada

兄はメジロパーマーで有馬記念、宝塚記念を勝った元・騎手の山田泰誠(現在は笹田厩舎の助手)。
自身は法政大学の馬術部出身。卒業後はノーザンホースパークで1年ほど働いた後、競馬学校に入り、栗東の伊藤雄二厩舎に所属。その後は服部厩舎、友道厩舎を経て現在の角居厩舎に。
初めて競馬に行かせてもらったバイアモン産駒のワコーハヤテが思い出の馬で3勝を挙げた。自分の担当馬を兄の山田泰誠騎手に乗ってもらうのが夢だったが、その夢は叶わなかった。
現在担当のキャトルフィーユは人見知りする性格なのに、山田さんには心を開いて甘えているのが印象的。