安藤勝己騎手×諸星由美(中編)
2009/9/6(日)
人気でプレッシャーがかかる事は無いね。
諸:私も期待しています。さて、安藤さんは数々のビッグタイトルを手にされていらっしゃいますが、皐月賞、オークス、有馬はまだ、ということで、この3つのレースを「今年取りたい」というお気持ちは?
安:そういうのはね、・・・頭の片隅にはあるの(笑)。片隅にはあるけど「狙うぞ」という風に意識しちゃダメかな、と思う。
諸:この中で一番すぐ来るのは、皐月賞ですね。パートナーはどうなりますかね。安藤さん、チャンスのありそうな馬にたくさん乗っていらっしゃるので。
安:それは凄く恵まれているんだよね。だから、ユタカちゃんが「僕に乗り馬回してください」って冗談を言ってきたり(笑)。それくらい恵まれていて、とても幸せなんですよ。エージェントの方の努力、周囲の協力があって、凄い強い馬ばかり乗せてもらってね。
諸:もの凄いですよ、歴史を見ると。オグリキャップ、ライデンリーダーから始まって・・・。
安:中央に移籍してからの5年でも強い馬にたくさん乗せてもらって。
諸:それもやっぱり安藤さんの腕の凄さが光るからだ、って思うんですけど。
安:それよりやっぱり、中央に来て、流れに上手く乗れたのが良かったと思う。ビリーヴで最初にすぐ高松宮記念を勝たせてもらったのは凄く大きい事だった。G1制覇が目標で中央に来たわけだから、それを早く達成出来てホッとしたね。本当に嬉しかったし、凄く印象に残っている。
諸:他にもファンの記憶に残るレースがいっぱいありますよね。私、キングカメハメハのダービーが強烈で。あの時、手応えはあったんですか?
安:ハッキリ言って負けると思ってなかったですよ。それぐらいキンカメを信用していたから。あの時は、不利がなければ自分でレースを作って勝つだろう、と思えるくらい力が抜けていたね。もう、普通に力を出せば大丈夫っていう感覚で乗れる馬だった。だからダービーを勝った時は、感激というより、「この馬なら勝って当然」という気持ちだったね。
諸:わー、このお話、レース前に聞きたかったです(笑)。
安:(笑)もう、マイルカップが終わった時点で「絶対ダービー勝つな」と思った。キンカメっていろいろなジョッキーが乗っていたから、マイルカップの後もダービーを乗れるかは分からなかったけど、どちらも乗れて良かったです。
諸:安藤さんとキングカメハメハのコンビは磐石、だと思っていました。
安:そんな事はないよ。騎手の仕事は、陣営に乗せてもらわなきゃ始まらないし、結果が出なきゃしょうがない。今日乗っていても、下手に乗ったら次クビになって当然だっていうくらいに思っているから。それが当たり前でしょう。
諸:これだけの実績を残していても、ですか。
安:下手に乗ったらクビになるのはみんな一緒だよ。
諸:厳しいですね。安藤さんの乗り馬集めはどのような形で進めていらっしゃるんですか?
安:エージェントに頼る面が大きいね。僕は、たまに「どっちに乗りますか?」と聞かれて、それに答えたりするくらい。
諸:そうなんですか。ちなみに乗り馬に関してお聞きしたいんですけど、安藤さんが同じ馬に連続して乗った時は、馬に競馬を教えているような雰囲気が感じられるんですけど、そのような意識はありますか?
安:3歳や2歳はね、確かにその世代はまだ余裕があるというか、次の競馬を考えて乗れる点はあると思う。若い馬は経験が無いから、いろいろ試してみるよ。いろんなレースをしてみて、どれがベストなのかを自分で見抜く、っていうかね。「この馬にはこういうペースが合っていると思う」と思えたら、それを信じてそのペースに持っていくようにしてみたり。いろいろ挑戦出来る環境があるのは有難いことだよね。
諸:馬の成長を考えると、新馬戦は特に気を使いますよね?
安:新馬戦では、何がなんでも勝つっていう感覚ももちろん大事だけど、将来的に馬の為になるようなレースをしてあげて強くするっていうのも大事。後々まで良くない影響が残るようなレースはしたくないな、と思うね。あと、返し馬の感覚で掴んだ自分のイメージと、レースでスピードに乗った時の感覚とは違うこともあるから、いろんな部分を確かめることも大事でしょう。
諸:レースに乗る前に調教で一回感触を確かめておきたい、という事はありますか?
安:それは特にないね。やっぱり調教とレースは違うし、調教で気になる点が残っちゃうと、それがレースでプラスに働かないこともあるから。何にも知らなくて、パッと乗った方が良い時もありますよね。だから競馬って難しいな、と思うんだけど(笑)。
諸:本当ですね(笑)。あと是非お聞きしたい事があるんですけど、私がいつも予想で気にしているのは、その馬の持ちタイムなんです。3歳の未勝利だとかは特に気にしないですけど、古馬は凄くタイムを気にしているんですね。その馬の持ちタイムについて、安藤さんはどうお考えですか?
安:僕は全然気にした事はない。タイムは、ペースで全然変わってくるから。最初から速いペースで行けば、最終的に勝ち時計も速くなるし。
諸:そうですよね。
安:ペースが遅ければ、タイムも遅くなるけど、そのレースのレベルが低かったかっていったら、そうじゃないですよね。だからタイムっていうのはあんまり気にしてないね。タイムの速い遅いではなくて、いろんなペースに対応出来る馬じゃないと本当に強い馬じゃない、っていうのは言えると思うけど。
諸:なるほど。やっぱり強い馬に数多く乗られている方ですからね。安藤さんが乗るともう必ず人気じゃないですか。プレッシャーなんかも感じられますか?
安:そういうのは全然無いです。人気でプレッシャーがかかる事は無いね。
諸:騎乗馬の人気をパドックで確認されたりします?
安:もちろん見るよ。ああ、人気になっているなあ、と。人気になるのは凄く嬉しいの。それだけチャンスも期待も大きいって事でもあるから。「2番人気?どうせなら1番人気になって欲しいなあ」って(笑)。
諸:そういう事も考えていらっしゃるんですね(笑)。パドックを周回している時に、馬から何かを感じるものってあるんですか?例えば馬の調子、具合だとか。
安:馬の調子というよりは、馬の感覚は分かるね。今まで乗ってきた過去の馬とイメージをダブらせるんだよね。今までにかなりの数の馬に乗っているから。「あ、このグッと来るクッションが似ているな」とか、100%一緒という馬はいないんだけど、今までの経験は凄く役に立っているね。
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1976年NAR免許を取得。岐阜・笠松競馬場を中心に騎乗する。
2003年JRA免許を取得。
JRA通算成績は813勝(3/20現在)
初騎乗:1980年 5月 11日 4回阪神8日 10R ヤマニンスキー( 1着/ 12頭)
初勝利:1980年 5月 11日 4回阪神8日 10R ヤマニンスキー
■主な重賞勝利
・07年マイルCS(ダイワメジャー号) ・07年エリザベス女王杯(ダイワスカーレット号) ・07年安田記念(ダイワメジャー号)
2007年はJRA賞(最高勝率騎手・勝率0.238)に輝いた。連対率も0.410という驚異的な数字を残し、G1も6勝をあげる大活躍をみせた。08年も既に4つの重賞タイトルを手にしており、勝利数、内容ともにトップクラスの活躍を続ける。
数々の万馬券や高配当を的中させ、新聞だけでなくテレビでもその鋭い予想理論を発表し人気を博している。
ターフライターとして活躍するかたわら、美容カウンセラーとしても活動している。
著書に「キレイな女になりなさい」(05年・幻冬社刊)。
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安:そういうのはね、・・・頭の片隅にはあるの(笑)。片隅にはあるけど「狙うぞ」という風に意識しちゃダメかな、と思う。
諸:この中で一番すぐ来るのは、皐月賞ですね。パートナーはどうなりますかね。安藤さん、チャンスのありそうな馬にたくさん乗っていらっしゃるので。
安:それは凄く恵まれているんだよね。だから、ユタカちゃんが「僕に乗り馬回してください」って冗談を言ってきたり(笑)。それくらい恵まれていて、とても幸せなんですよ。エージェントの方の努力、周囲の協力があって、凄い強い馬ばかり乗せてもらってね。
諸:もの凄いですよ、歴史を見ると。オグリキャップ、ライデンリーダーから始まって・・・。
安:中央に移籍してからの5年でも強い馬にたくさん乗せてもらって。
諸:それもやっぱり安藤さんの腕の凄さが光るからだ、って思うんですけど。
安:それよりやっぱり、中央に来て、流れに上手く乗れたのが良かったと思う。ビリーヴで最初にすぐ高松宮記念を勝たせてもらったのは凄く大きい事だった。G1制覇が目標で中央に来たわけだから、それを早く達成出来てホッとしたね。本当に嬉しかったし、凄く印象に残っている。
諸:他にもファンの記憶に残るレースがいっぱいありますよね。私、キングカメハメハのダービーが強烈で。あの時、手応えはあったんですか?
安:ハッキリ言って負けると思ってなかったですよ。それぐらいキンカメを信用していたから。あの時は、不利がなければ自分でレースを作って勝つだろう、と思えるくらい力が抜けていたね。もう、普通に力を出せば大丈夫っていう感覚で乗れる馬だった。だからダービーを勝った時は、感激というより、「この馬なら勝って当然」という気持ちだったね。
諸:わー、このお話、レース前に聞きたかったです(笑)。
安:(笑)もう、マイルカップが終わった時点で「絶対ダービー勝つな」と思った。キンカメっていろいろなジョッキーが乗っていたから、マイルカップの後もダービーを乗れるかは分からなかったけど、どちらも乗れて良かったです。
諸:安藤さんとキングカメハメハのコンビは磐石、だと思っていました。
安:そんな事はないよ。騎手の仕事は、陣営に乗せてもらわなきゃ始まらないし、結果が出なきゃしょうがない。今日乗っていても、下手に乗ったら次クビになって当然だっていうくらいに思っているから。それが当たり前でしょう。
諸:これだけの実績を残していても、ですか。
安:下手に乗ったらクビになるのはみんな一緒だよ。
諸:厳しいですね。安藤さんの乗り馬集めはどのような形で進めていらっしゃるんですか?
安:エージェントに頼る面が大きいね。僕は、たまに「どっちに乗りますか?」と聞かれて、それに答えたりするくらい。
諸:そうなんですか。ちなみに乗り馬に関してお聞きしたいんですけど、安藤さんが同じ馬に連続して乗った時は、馬に競馬を教えているような雰囲気が感じられるんですけど、そのような意識はありますか?
安:3歳や2歳はね、確かにその世代はまだ余裕があるというか、次の競馬を考えて乗れる点はあると思う。若い馬は経験が無いから、いろいろ試してみるよ。いろんなレースをしてみて、どれがベストなのかを自分で見抜く、っていうかね。「この馬にはこういうペースが合っていると思う」と思えたら、それを信じてそのペースに持っていくようにしてみたり。いろいろ挑戦出来る環境があるのは有難いことだよね。
諸:馬の成長を考えると、新馬戦は特に気を使いますよね?
安:新馬戦では、何がなんでも勝つっていう感覚ももちろん大事だけど、将来的に馬の為になるようなレースをしてあげて強くするっていうのも大事。後々まで良くない影響が残るようなレースはしたくないな、と思うね。あと、返し馬の感覚で掴んだ自分のイメージと、レースでスピードに乗った時の感覚とは違うこともあるから、いろんな部分を確かめることも大事でしょう。
諸:レースに乗る前に調教で一回感触を確かめておきたい、という事はありますか?
安:それは特にないね。やっぱり調教とレースは違うし、調教で気になる点が残っちゃうと、それがレースでプラスに働かないこともあるから。何にも知らなくて、パッと乗った方が良い時もありますよね。だから競馬って難しいな、と思うんだけど(笑)。
諸:本当ですね(笑)。あと是非お聞きしたい事があるんですけど、私がいつも予想で気にしているのは、その馬の持ちタイムなんです。3歳の未勝利だとかは特に気にしないですけど、古馬は凄くタイムを気にしているんですね。その馬の持ちタイムについて、安藤さんはどうお考えですか?
安:僕は全然気にした事はない。タイムは、ペースで全然変わってくるから。最初から速いペースで行けば、最終的に勝ち時計も速くなるし。
諸:そうですよね。
安:ペースが遅ければ、タイムも遅くなるけど、そのレースのレベルが低かったかっていったら、そうじゃないですよね。だからタイムっていうのはあんまり気にしてないね。タイムの速い遅いではなくて、いろんなペースに対応出来る馬じゃないと本当に強い馬じゃない、っていうのは言えると思うけど。
諸:なるほど。やっぱり強い馬に数多く乗られている方ですからね。安藤さんが乗るともう必ず人気じゃないですか。プレッシャーなんかも感じられますか?
安:そういうのは全然無いです。人気でプレッシャーがかかる事は無いね。
諸:騎乗馬の人気をパドックで確認されたりします?
安:もちろん見るよ。ああ、人気になっているなあ、と。人気になるのは凄く嬉しいの。それだけチャンスも期待も大きいって事でもあるから。「2番人気?どうせなら1番人気になって欲しいなあ」って(笑)。
諸:そういう事も考えていらっしゃるんですね(笑)。パドックを周回している時に、馬から何かを感じるものってあるんですか?例えば馬の調子、具合だとか。
安:馬の調子というよりは、馬の感覚は分かるね。今まで乗ってきた過去の馬とイメージをダブらせるんだよね。今までにかなりの数の馬に乗っているから。「あ、このグッと来るクッションが似ているな」とか、100%一緒という馬はいないんだけど、今までの経験は凄く役に立っているね。
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安藤勝己
1960年愛知県生まれ。1976年NAR免許を取得。岐阜・笠松競馬場を中心に騎乗する。
2003年JRA免許を取得。
JRA通算成績は813勝(3/20現在)
初騎乗:1980年 5月 11日 4回阪神8日 10R ヤマニンスキー( 1着/ 12頭)
初勝利:1980年 5月 11日 4回阪神8日 10R ヤマニンスキー
■主な重賞勝利
・07年マイルCS(ダイワメジャー号) ・07年エリザベス女王杯(ダイワスカーレット号) ・07年安田記念(ダイワメジャー号)
2007年はJRA賞(最高勝率騎手・勝率0.238)に輝いた。連対率も0.410という驚異的な数字を残し、G1も6勝をあげる大活躍をみせた。08年も既に4つの重賞タイトルを手にしており、勝利数、内容ともにトップクラスの活躍を続ける。
諸星由美
ターフライターとしてスポーツニッポンで活躍中。数々の万馬券や高配当を的中させ、新聞だけでなくテレビでもその鋭い予想理論を発表し人気を博している。
ターフライターとして活躍するかたわら、美容カウンセラーとしても活動している。
著書に「キレイな女になりなさい」(05年・幻冬社刊)。
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