関係者の素顔に迫るインタビューを競馬ラボがオリジナルで独占掲載中!

藤懸貴志騎手

藤懸貴志騎手


競馬とゴルフには共通項が多い!?


-:ある程度、前目の肩甲骨に近い所に鞍を置くようにはしていますよね。

藤:ちゃんと帯道というのがあって鞍を置く位置はちゃんと決まっていますから。そこから前後5センチ、いや3センチぐらい変動幅があります。後ろ目が乗りやすい人もいれば、僕は前目が好きです。普通よりやや前目が好きですね。

-:乗り心地ですか?

藤:乗り心地というか乗りやすさですね。前の方がやっぱり乗りやすいです。それも何故かと考えると背が小さいからですかね。腕が短いので、鞍を後ろに置いたら、更に馬の口と離れてしまう訳ですし、手綱も長くなってしまうので、ポンと乗った時に後ろだと前に乗れないんですね。腕のリーチ、遊びがないですから。なるべく馬の首の近くにいたいですからね。

-:馬の首の付け根の近くでないとコントロール出来ないということですね。

藤:そういうことです。モンキー姿勢になり始めてから、前に鞍を置こうという感じでした。

-:(背の高い)武幸四郎騎手なんかを見ていると乗りにくそうに見えますからね。競馬は奥が深いですね。

藤:奥が深いですよ。本当に深いです。

-:これから小倉で2回目の夏を過ごすと思うのですが、滞在ですか?

藤:1週目が終わってから滞在します。

-:今年の小倉でココを見て欲しいというところはありますか?初勝利を挙げた場所ですし、好きですよね。

藤:好きですね。場所的には。競馬場的に初勝利もしていますし、色々な経験をしたのも小倉ですし、やっぱり思い入れはありますけど、競馬場の形態としては好きではないですね(笑)。

-:小回りでセコセコした競馬になるからですか?

藤:好きじゃないですね。ダメなんですね。だから技術がいるんです。僕が思うには小倉は難しいと思います。言うならば僕は新潟が好きなんですよ。新潟、中京、特に新潟が好きですね。

-:技術がないから大きな競馬場の方がゴマカシは効くということですか?

藤:それもやっぱりあると思います。今は馬の力が多少あれば、本場もゆったり造られていますし、大きいですし、直線も長いですからね。技術的にもみんな上手いので、直線が長いとある程度は能力で来るのですが、小倉は能力のある馬でも一瞬のミスで勝てなくなりますからね。

-:逆にそれを活かせば良いじゃないですか。

藤:そうなんですよ。だから能力的に少し足りない馬でも勝てる可能性があるし、すごく能力がある馬でも負ける可能性があるんです、小倉は。と僕は思っています。多分、小倉、福島はそうだと思います。

-:だから芝コースで言えば、開催が進んだ際の馬場の見極めは顕著に出ますよね。人気薄の馬でも差せる可能性があるコース、小回りは差し、追い込みは出番がないと言われますが、実は展開的にハマることもありますし。

藤:そうなんです。早目に外に出してしまえば来たりとかもあるので、1、2頭目を避けて3頭目を通ってきたら、馬場が良くて流れに乗れて、結果的にスムーズに来れて勝てるとか着を拾うとかもありますしね。1年目はやっぱりその辺りの事に気付けていなかったですね。
ここまで1年半ぐらい乗ってきて、次の小倉で試しどころと言いますか、“自分の中でやりたいことをちゃんと出来るかな”というのはありますね。そういうことを試せればと思っています。



「川田さんとパトロールフィルムを一緒に見ていた時に言われたのですが『本当はこの位置が取れなかったから一つ下げたけど、取れなかったからどうしよう!?ではなくて、取れないなら次をどうしよう。ここは譲るけど、次はどうしよう、と最善の策を探していくことが大事』と言われました」


-:今は成長していっている過程なんですね。タイガー・ウッズが常にスイングとかを変えていって「まだ過程だ」とプレスインタビューで言っていました。今週、全英オープンがあるのですが、インタビュアーが今回はその過程において「前半なのか、中盤なのか、仕上がる直前なのかどれぐらいですか?」と聞いたら「そのどれかだね」と答えていました。
タイガー・ウッズですら「毎回毎回、自分に課したことや、やりたいテーマを一つのラウンドでやって、それが出来たか出来なかったかを繰り返していくしかない。それぐらい難しいことなんだ」と言っていたので、ジョッキーなんかは馬頼りのところがあるので、もっと答えが出にくい所がある訳ですからね。


藤:いや、そうですね。僕もゴルフはするので、やってみて自分の技術がなければまず出来ないですし、あとは天候もそうですし、芝の状態もそうだし、風が吹いているとかもそうだし、フライヤーとかもあるじゃないですか。自分の打ちやすいライとか傾斜とかパターにしても全部寄せてとかもあるじゃないですか。あれも技術じゃないですか。
あれを18ラウンド、ショートホールからロングホールまでコースが変わる中で、18ラウンド続けていくということは本当に精神力のプレーですよ。技術があれば、あとは1打1打どこまで集中できるかだと思います。ゴルフは。


-:ちなみにどれぐらいで回りますか(笑)?

藤:僕は110台ですね。110がなかなか切れないですね。112が最高ですね。

-:僕はこの間行ってきて88だったかな。43、45だったのかな、次の日は精神的にガタガタだったですからね。

藤:疲れますよね。

-:僕としてはありえないほど集中していたんでしょうね。

藤:そうですね。ゴルフは自分との勝負で、集中力が切れたら終わりですし、集中力が切れた所から戻ってくるのも自分次第ですし、切れっぱなしも自分次第のところがありますからね。

-:景色に負けますね。立った時に狭いとなった時にちゃんと構えていつも通りのスイングをしたら、そんなにはおかしなことにはならないですからね。逆に狭いところに自分が行ってこっちを見ると、たいして狭くないですからね。

藤:僕たちが行くようなゴルフ場は結構広いですからね。

-:自分を落ち着かせて、そんなにビビらなくても良いと落ち着かせるのも技術ですからね。精神力の。

藤:精神力も技術ですね。やっぱり競馬も精神力ですね。内に行って詰まったらどうしようと考えるのか、どこか開くだろうと乗るのかという違いもありますけど、どこかは開くんですよね。確かに詰まりっぱなしの時もあるのですけど……(苦笑)。

-:中山のG1のパトロールフィルムを見ていたら、必ず内が開いています。コーナーが進むに従って、内が開いてきますからね。あれは不思議ですね。G1ですからね。

藤:それはやっぱり競馬は自分の技術もそうですし、あと馬あってのものですし、18頭いてのものでもあるので、自分ではどうしようもない不可抗力的なこともあるけど、そのようにならないために、出来る最低限の事もあるので、ゴルフとは似てないスポーツだけど、やっぱり似ているところもありますね。

-:ゴルフと競馬は似ていて、スイングなんかは絶対にどこかは縮めないといけない訳ですから、飛ばしたい人は縮めてポンと離さないと、棒を振り回しているだけでは絶対に飛ばないですからね。ムチみたいにしならせないと飛ばない訳だから、やっぱり瞬発力のある馬とかは縮めて伸ばすという動きですよね。

藤:溜めてガァーという感じですね。だから、本当にゴルフも競馬も精神的な面は本当に大きいですね。競馬なんてそこの部分が大きいですよ。フランス遠征前の川田さんとパトロールフィルムを一緒に見ていた時に言われたのですが「“本当はこの位置が取りたかった。取れなかったから一つ下げたけど、取れなかったからどうしよう!?”ではなくて、取れないなら次をどうしよう。取れないから負けではなくて、“ここは譲るけど、次はどうしよう”と最善の策を探していくことが大事」と言われました。
「1回失敗したからヤバイヤバイとなっていると、やっぱり勝てない」ということでした。頭で考えていても、いざとなったら本当に1秒で6馬身、18メートルぐらいガァーと進んでしまいますからね。


-:ゴルフやっている時に1打目外して、ラフにいって、ラフからグリーンに乗せようと思って乗らなかったら、それはミスですね。自分はミスしたけど、他の人間がちゃんとセカンドをグリーンに乗せてくるとは限らないので、自分もミスったけど相手もミスるかも知れない。ここは1馬身譲るけど、前に行った騎手がその後も上手く乗っているとは限らないのですからね。

藤:パトロールフィルムを見ていると一つの競馬で上手く乗っているのは大概2、3人しかいないですよ。勝っている人が上手く乗っているとも限らないですからね。

-:それと結果オーライ的な、特に重賞ではよくここから出てきたなというのがありますからね。だからいかに諦めないかですね。

藤:テンパるという訳ではないのですが、1個ダメだとマズイと思ってしまいますよ。

-:だから逆にダメになる時のパターンがあると思うので、それを練習すれば良いのではないでしょうか?

藤:まずはダメにならないように仕向けていく。自分から仕向けていくことが大事なのですが、ダメになってしまったらということを考え続ければ良いのですね。こういう時はこういう風にすれば良いということですね。

-:ゴルフだったら20ヤードとか30ヤードの中途半端な距離のアプローチは苦手なはずですよね。

藤:その20ヤード、30ヤードの距離を練習するということですね。

-:20ヤード、30ヤードのスペシャリストになれば良いのです。そうしたらすごく自信がつくと思います。いつも練習しているからできるという自信がね。

藤:確かに。

-:本当はピンそばに寄せたいのに、20ヤード、30ヤード残ってしまったら大ミスなのだけど、そういう自分がいることを先に予測しておけば、20ヤード、30ヤードはいつも練習をしていて、低く上げる20ヤードも転がす20ヤードも2種類は打てるようにしておけば、バンカー超えであろうが平地であろうが問題ないはずですからね。

藤:バンカー超えは本当に力みます。チョロとなってバンカーになってしまうのですよね。超えないんです。

-:それは景色に負けているんですよ。

藤:やっぱりビビっているんですね。

-:いつも通りの20ヤードなら20ヤード、30ヤードなら30ヤード、40ヤードなら30ヤードよりちょっと遠くに打てば良いんですよ。

藤:そうですよね。30ヤードぐらい打ってグリーンに乗れば、10ヤード近く転がりますからね。

-:それは打った後に気付くんですよね(笑)。

藤:何でコレが分からなかったのか。強く打ち過ぎて、40ヤードピッタリに打ったら転がるに決まっている。だからやっぱり今後の課題は一に精神力が大事ですね。技術も全然足りないですし、経験によるものもあるので、乗っていく姿勢とか追う姿勢とかもそうですけど、ポジション取りですね。どこにいたら、一番幅のある乗り方ができるかというか、内も外も真ん中も狙えるような方へ自分から行くようなイメージも自分の中で持っていかないといけないし、ポジション取りは技術だと思うので、自分でその場所にいれるということですね。あとはスペースを見つけて、邪魔をせず、焦らずに的確にいけるようにすることですね。




藤懸貴志騎手インタビューPart.4へ→

1 | 4


←藤懸貴志騎手インタビューPart.2へ

1 | 2





【藤懸 貴志】Takashi Fujikake

1993年 長野県出身。
JRA初騎乗
2011年3月5日 1回阪神3日1R ロンド(2着/15頭)
JRA初勝利
2011年8月20日 4回小倉7日6R ハナカゲ
JRA通算成績は16勝 (12/7/22現在)


長野県木曽郡大桑村出身。競馬とは縁のない家庭に生まれ、騎手試験の際に初めて馬にまたがったほど。デビューイヤーの昨年はチャンスがありながらも、初勝利を挙げるまでに約5ヶ月もの時間を要し、年間4勝に留まった。飛躍を誓う今年は既に12勝をマーク。徐々に頭角を現すと、今夏のマーメイドSでは重賞初騎乗ながらクリスマスキャロルで2着に食い込んだ。