若手ゆえの苦悩、葛藤、そして成長のキッカケ
2012/7/27(金)
藤懸貴志騎手
2年目の藤懸貴志はココで買え!
-:体型的には恵まれていますからね。オールドスタイルの昔のジョッキーの体型をそのまま持っている訳ですから。ファンに対して今年の夏はココを見ていてくれということはありますか?
藤:今年の夏ですか。小倉は競馬自体が熱いですね。さっきも言いましたが、小倉競馬場はソコソコチャンスのある馬だったら、どの馬にも勝ち負けできるチャンスがある競馬場だと思うので、今年は……。
-:去年と違う藤懸騎手はどこですか?ポジショニングの上手さですか?
藤:何ですかね。まず、去年は2つしか勝っていなかったから今年はもっと勝たないといけないですね。あと、今は全然できていないことなのですが、人気馬で勝ちたいですね。人気馬で取りこぼさないことです。
-:今までは人気馬を飛ばしてきていますからね(苦笑)。
藤:人気馬を飛ばして人気薄で勝っている感じですから。典型的ですよね。阪神開催から中京にかけて……。阪神開催は30倍、40倍、30倍ですからね。8番人気、9番人気、8番人気で、中京に来てからも5番人気、8番人気ですからね。
-:単純に考えれば、藤懸騎手の馬券は勝っていたら儲かる訳ですね。
藤:今年に入ってからは儲かっているらしいです。単勝でもこの間73倍ですし、30、40、30それだけで170ですからね。年明けも45倍でしたし……。
-:逆に藤懸騎手の馬券を買う時は人気薄にこだわらずにある種、馬頼みでもあるということですね。
藤:人気のない馬というかちょっと足りないなという馬で、セコく乗る競馬もしていきたいですね。
-:それは馬の個性を見極められていたから、穴を出せたということですか?パトロールフィルムで研究した成果がそこで出たということですか?
藤:やっぱり勝ったレースを振り返ってみるとそうだと思います。
-:コツコツとした作業は必要なんですね。
藤:勝ったレースは本当にそうだと思いますね。自分では馬場を歩いた成果が出たと思ったレースが1個、2個ぐらいありますし、中京の内ラチギリギリを通ってというのもありますし、歩いて正解だと思いました。あとは人気馬をレース前に分析して、この馬の後ろだったら良いなという馬の後ろにピッタリついていって、最後狭い所がちょっと開いて突っ込んで勝ったのもあります。それは阪神の未勝利戦だったんですけどね。
-:何という馬か覚えていますか?
藤:キーパップという自厩舎の馬なんですけど、康太さんの馬(マリントウショウ)にずっと付いていって、最後直線開くかなと思ったら、少し開いてそこで思いっきりバシバシといったら馬も応えて伸びてくれました。攻め馬から伸びるのは分かっていましたからね。
-:康太騎手は何と言っていましたか?
藤:康太さんは勝負に行くと普段の康太さんと違いますし、競馬で乗り終わった後も全然いつもの康太さんとは違うので、あんまり僕も軽口は言わないし、康太さんも「貴志にやられたわ」とかは全く言わないですね。康太さんが2着だったので、負けているからそういうことは全く言わなかったですね。よっぽどスゴイ負け方をした時しか言わないです。
-:プロですね。
藤:そうですね。あとはこの馬の競馬をすれば勝てる。この馬のレースをしようと思って勝ったレースもあって、馬の事を知ってやることをやらないと負けた時に悔いが残るじゃないですか。
-:悔いが残らないレースの方がないように思いますが?
藤:ないですね。毎レース毎レースみんな上がってきて言いますからね。「うわー、ああしておけば良かった」とかみんな言っていますが、それを少なくしたいじゃないですか。あそこもあそこもあそこもと1レースに3つぐらい悔いにしていたら……。
-:1番人気1.6倍でも飛ばしますね。
藤:そりゃ飛ばしますよ。先週のレースもそうですけど、あそこで1コーナーから3頭目を通ったりしていたら、それは自分に対して腹立たしいけど、ちゃんと1、2コーナーは内ラチ沿いの1、2頭分を通ってロスなく周ってきていましたからね。直線は完全に判断ミスでしたけど……。
-:それは何という馬ですか?
藤:ナリタウィッシュです。あれは本当に勝たなくてはいけない。今週は勝ちますよ。北村友一さんが乗ると言っていましたけど……。ああいう乗り方をして、これからもそういう姿勢は大事というか崩さずにいきたいですね。
-:これからももちろん技術的にミスもするだろうけど、それで瞬間的に諦めるのではなくて、そこからしぶとくいくということですね。
藤:しっかりと切り替えを早くしたいですね。レース中にしっかり切り替えられるようにしたいです。引き出しが多かったらダメでもここはまだあるよという感じで、自分で切り替えが出来たら、すごく楽だと思うんですよね。1個目で出来れば、それは勝利への一番の近道ですが、1個目で出来なくても2個目で出来れば勝ちは見えているかも知れないし、1個目、2個目がダメでも3個目があれば、まだ勝ち目もある訳じゃないですか。引き出しがなければダメ、ダメ、ダメで終わってしまいますから。アッ終わったと思って探そうと思っても何から探して良いか分からないですからね。
1個、2個ダメでも次はココが開くだろうとか、この流れでいったら1コーナーでポジション取りに負けた。2コーナーでこうなることもある。こうならなかったが3コーナーでみんなが開いてくれるかもしれないとか、前の馬がタレてくるかも知れないから、結果的にそのラインにいなくて良かったなとか、そうやって考えながら乗っていたらすごく楽ですね。これからも引き出しを増やしていくことが大事ですね。だから、こういう時はどうしたら良いのですかとか、よく先輩に聞くんですね。
こういう馬はどうしたら良いかとかも聞きますけど、僕はこうやって負けたんですけど、どうしたらいいのですかと聞いたら、やっぱり言われるのは「お前は1コーナーから間違っている」ということです。「そのポジショニングがダメなんだよ」と言われますね。「内に行くのではなく外」とか「内に突っ込んでいるけど、どの馬もこうなんだから前の馬が詰まるのは分かりきっているだろ。力がある馬なので外を回しても勝てたぞ」とかそういうことですね。
-:変に上手く乗ろうとしてということですね。
藤:そういうこともありますね。
-:それでは去年とは変わった藤懸貴志を期待しています。
藤:落ち着いていく僕。前に行く僕。追い込む僕に期待して下さい。
-:砂の僕と芝の僕はどっちを買えば良いですか?
藤:最近は芝でも勝っていますからね。
-:最近は芝のイメージが強いですね。
藤:芝も尋常になく伸びるのは楽しいなと思います。でも減量は砂の方が効くと思います。やっぱり深くてシンドイですからね。すごい能力を持った人でもフカフカの馬場ならジュース1本が効いてくると思います。一番脚に効くのはダートだと思います。それは人間にも馬にも言えることだと思います。
-:雨の時はどうですか?小牧騎手とか幸騎手とか岩田騎手とか特定の人が活躍する傾向がありますが、小牧騎手に聞いても「雨で活躍しているイメージはないけどな」と言うのですが、雨の時は小牧騎手と幸騎手の馬券を買っていれば間違いないというのが、自分の中でのデータがあります。
藤:前に行くから残るのですかね。
-:藤懸騎手は雨ではどうですか?
藤:結構成績が良いみたいです。
-:というか嫌ではないですか?濡れるのとか…。
藤:濡れたりすることですか。雨でもカッコを付けたいから、あんまりオーバーのカッパは履かないですね。レギンスを見せたいですから。レギンスを見せてジョッキーらしく見せたいですからね。別に雨だからすごく嫌だとかはないですよ。でもあんまり好きな人はいないとは思います。嫌いな中でもそこまで特段嫌だなと思う訳でもないですし、結構不良馬場は勝っているみたいです。
-:わかりました。長時間ありがとうございました。それでは夏の活躍を楽しみにしています。ありがとうございました。
(写真・取材)高橋章夫
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長野県木曽郡大桑村出身。競馬とは縁のない家庭に生まれ、騎手試験の際に初めて馬にまたがったほど。デビューイヤーの昨年はチャンスがありながらも、初勝利を挙げるまでに約5ヶ月もの時間を要し、年間4勝に留まった。飛躍を誓う今年は既に12勝をマーク。徐々に頭角を現すと、今夏のマーメイドSでは重賞初騎乗ながらクリスマスキャロルで2着に食い込んだ。 |