関係者の素顔に迫るインタビューを競馬ラボがオリジナルで独占掲載中!

須貝尚介調教師

須貝尚介調教師(S.R.S)

戦前のプレッシャーを跳ね除け、2馬身半差で秋緒戦の神戸新聞杯を快勝したゴールドシップ。それに続けと、条件戦で、重賞で、勢いが止まらない須貝厩舎だが、いよいよ総大将の2冠獲りの時が迫ってきた。トレンドど真ん中の血統で、前哨戦のインパクトから圧倒的な人気は間違いのない情勢だが、大一番を前に須貝尚介調教師は何を思うのか……。春から続いたクラシック独占インタビューのクライマックスにご注目いただきたい。

管理馬が続々好走…、総大将ゴールドシップ

-:先週は(500万下で)ゴリラが勝って、毎日王冠ではジャスタウェイが2着。デイリー杯2歳Sではコレクターアイテム(4着)が素晴らしい末脚を見せてくれて、厩舎の勢いを感じます。まず、先週のジャスタウェイとコレクターアイテムについて振り返ってもらえますか?

須貝尚介調教師:ジャスタウェイの毎日王冠はほとんどの馬が重賞ウイナー(G1馬6頭)というG1といっても過言ではないぐらいの相手でしたが、距離も1800mだし、このメンバーでどこまでやれるかという感じでした。距離を含めて今後のローテーションを組むための評価になるし、参考にもなるレースとしてココを使いました。ジャスタウェイの夏場の成長というのは目に見えてわかっていたので、ソコソコやれるという気持ちはありましたが、あのメンバーで上がりが最速(33.0)というのは成長力の証明だと思います。

-:今後のG1戦線に向かって、胸を張って挑める馬になりましたね。

尚:そうですね。ゴールドシップが神戸新聞杯に向かうにあたって、ジャスタウェイは調教パートナーとして組んでいたのですけど、ジャスタウェイが良過ぎて、ゴールドシップが引け目を感じたような様子が見られました。あれはジャスタウェイが本当に成長して、パワーアップをしたという証明だったと思います。今から考えてみるとね。

-:ゴールドシップの動きがもう一つというよりは、ジャスタウェイが良かったということですね。

尚:ジャスタウェイの成長力がアップしたということです。僕はそういう風に見ていました。結果、ゴールドシップも強い勝ち方をしてくれて、ジャスタウェイもこれからこのメンバーでもやれると証明できました。

-:デイリー杯2歳Sのコレクターアイテムですが?

尚:コレクターアイテムは次は新設重賞(アルテミスS)を予定していたのですが、それだと競馬から離れ過ぎなので……。女の子だからそれでも良いのかなと思ったんだけど、デイリー杯に登録をしてみて、メンバー次第で何とかなるんじゃないかと。結局、最後方から外を回るハメになってしまいましたが、この馬の末脚を証明する競馬が出来ました。状態をキープしながら、新設重賞には胸を張って行けるのではないかと思っています。

-:2歳戦の中ではトップクラスの脚を見せていましたね。

尚:牝馬なので、調整的にも色々と工夫をしなければならないこともあるかもしれませんが、あれだけの末脚を使ってくれたから、また楽しみが増えましたね。

中間の状態と3000mについて

-:さてゴールドシップです。来週に迫った菊花賞ですが、圧倒的な1番人気で迎えることになるだろうと思いますが。

尚:いや~、神戸新聞杯は強い勝ち方をしてくれたんだけど、ダービー馬が出てきますし、それなりの上がり馬も出てくるし、今の3歳世代は本当に強い馬が多いので。まあ、相手は関係なしにこの馬は自在性が効くので、3000mをジョッキーとゴールドシップが一心同体になってくれれば。一生に一度しか走れないレースなので、思い切って悔いのないレースをして欲しいです。

-:そんな中で行われた1週前の追い切りですが、北村浩平助手が乗って素晴らしい動きで駆け上がって来ました。

尚:そうですね。ハッキリ言って、神戸新聞杯が良い叩き台になったと思います。あれから馬に気持ちが乗るというか、あの時も上がってきてケロっとしていましたからね。すぐに息が入ったし。あれからのゴールドシップは他の馬を威嚇するぐらいにドッシリと歩いているし、風格が出てきています。今日の追い切りも想定通りで、相手も1000万クラスを勝ち負けするクリーンエコロジーだったので、それなりに時計(坂路4ハロン53.2-12.5)は出ました。

-:それにしても手応えが抜群でしたね。

尚:今日のゴールドシップは終いの動きが沈みましたね。ああいう風になってくるということは走りに対して前向きになっている証拠でしょうね。

-:明らかに神戸新聞杯より一歩上がっていますね?

尚:そうですね。神戸新聞杯のデキよりは良い方向に持っていけると思います。



-:上がってきた北村浩平助手にコメントをいただいたのですが「これでもまだ余裕がある。全部出し切っていない」ということでした。それを聞いて恐ろしい馬だと思ったのですが。

尚:でも、3000mになるからね。それぐらいで良いんじゃないですかね。目イチよりもそれだけ余裕を感じるという方が。プラスに考えて良いと思います。

-:どの馬に対してもそうですが、ファンが気にするのは3000mという距離なのです。早くから先生はゴールドシップには菊花賞への適性があるとおっしゃっていましたが、現段階ではどのように感じていらっしゃいますか。

尚:3000mに限らず、自在性が効く馬なので。好位にいても、中団にいても、後ろから行ってもキッチリと捕らえに行けるという自在性の効く馬というのは、他の馬より有利な面があるのではないかという気がしますね。

-:歴史的に菊花賞で負けている馬というのは、能力はあるけれど折り合いが付かなくてという馬が多いですが、ゴールドシップに関しては引っ掛かるという面がないですね。

尚:そこは大きいですね。

-:乗りやすさがあるというのは大きなアドバンテージだと思うのですが、共同通信杯以降、傍目で見ているとペースもあると思いますが、若干、ポジションが後ろ気味だと思うのですが?

尚:菊花賞というのは変に人気馬を意識し過ぎて……。

■「だから、『逆に付いてこいよ』でも良いと思います。まあ、ジョッキーもプレッシャーを感じているとは思うんだけど、自信を持ってゴールドシップの強さを証明してあげられるようなレースをしてくれたら良いと思います」

-:春の場合だとワールドエースというライバルが同じような位置で競馬をしていました。

尚:あの時は2400mという距離もあったんだろうけど、ああいうレースにはならないと思います。と言うのは、今度はゴールドシップの方が人気を背負うし、それなりに相手を見ながら競馬ができると思うので、その点については心配ないです。この馬が競馬を作っても良いぐらいです。

-:先生は乗り役をやられていたので、1番人気の難しさをお分かりだと思います。春は意識する明確なライバルがいたと思うのですが、菊花賞の難しさというのはゴールドシップが抜け過ぎているために、マークしたり、意識する馬がいなくなっていますよね?

尚:そう。だから、「逆に付いてこいよ」でも良いと思います。まあ、ジョッキーもプレッシャーを感じているとは思うんだけど、自信を持ってゴールドシップの強さを証明してあげられるようなレースをしてくれたら良いと思います。自分を信じて、それを楽しんで、思いっきり乗って欲しいね。ゴールドシップも結構、走りたがり屋だから。2400mを走ってケロッとしているぐらいで、もっと走りたいみたいな感じだったから。次は3000mだから思いっきり楽しんでくれたら良いと思います。ファンも付いてきてくれているからね。

-:ライバルのトーセンホマレボシやワールドエースがリタイアしている分、かなり人気を背負うと思います。神戸新聞杯のレースは後ろから行きましたが、今度は積極的に行くとか、中団から行くといった展開面について、ファンに対して何かヒントはいただけますでしょうか。

尚:それは内田君が決めることです。たまに3000mというのは人気薄の馬が逃げ切ったりするから、その辺を注意して乗ってくれれば。





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【須貝 尚介】 Naosuke Sugai

1966年滋賀県出身。
08年に調教師免許を取得。
09年に厩舎開業。
JRA通算成績は99勝(12/10/14現在)
初出走:
09年3月8日 1回阪神4日目7R ワーキングウーマン(11着)
初勝利:
09年3月14日 1回阪神5日目7R ホッコーワンマン


■重賞勝利
・12年 皐月賞/神戸新聞杯/共同通信杯
(共にゴールドシップ号)
・12年 アーリントンC(ジャスタウェイ号)


父は昨年で定年による引退を迎えた須貝彦三 元・調教師。自身は騎手として4163戦302勝。うち重賞は01年のファンタジーS(キタサンヒボタン)など4勝。 09年は年間10勝だったが、10年は25勝を挙げて飛躍。昨年も29勝をあげると、今年はゴールドシップ、ジャスタウェイを筆頭に勝ち星を量産。今年の北海道シリーズでも目覚しい活躍をみせ、一躍、関西のトップステーブルにのし上がった。 「トレセンLIVE!」でコラムを掲載している榎本優也調教助手が在籍していることでも、競馬ラボではお馴染み。