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川合達彦調教助手

川合達彦調教助手(栗東・池江泰寿厩舎)

裂蹄のアクシデントによりぶっつけで連覇に挑戦した天皇賞(秋)は13着。さらに昨年2着のJC参戦で復活を目指すトーセンジョーダンだが、やはり前走からの良化度合いは気になるところ。オルフェーヴルとの2頭出しで臨む池江泰寿厩舎の川合達彦調教助手に、中間の雰囲気とレースに向けての指標などを伺ってきた。

≪関連リンク≫「川合達彦調教助手インタビュー」
(オルフェーヴル・ジャパンカップ出走前)


昨年2着のJCで復活に向けて

-:JCに向けたトーセンジョーダンについて聞かせてください。天皇賞(秋)の渋滞の影響で長時間の輸送になってしまったのを知らないファンもいると思うので、輸送の所から触れていただけますか。

川合達彦調教助手:比較的おとなしい馬なので、渋滞でかなりロスはしましたが、それはマイナスと言えば他の馬と比べたら、スンナリ行けた方だと思います……。

-:中央道の事故で4時間ぐらい余計に掛かったんですね。

川:はい。それでも、比較的イレ込まない馬なので。精神的にどっしりとしているところがジョーダンの良さなんです。

-:それほど大きな影響はレースにはなかったんですね。

川:長時間かかった輸送だけが敗因とは思わないですね。裂蹄で札幌記念を使えなかったこともありましたので思った結果にはなりませんでした。その後の第1戦ですから……。その後は蹄の影響もなく、調教は進めて行ったんですがG1は甘くなかったのかなと。

-:東京の2000mという舞台で外枠に入るというのも敗因の一つでは。

川:そうですね。まあ、去年も12番枠で勝っていますから、枠順と言うよりもジョーダン本来の走りが出来なかったのだと思っています。もうちょっと前めで競馬をした方が、トーセンジョーダンらしい競馬ができたのかな。

-:いつも勝つ時は前目のポジションにいるんですけど、天皇賞(秋)のパトロールビデオを正面から見ると、やっぱり府中の大外枠は遠いなと思いました。良い位置を取ろうとすると馬にとっては結構、遠いんですよね。

川:はい。それはありますよね。東京の2000mは。

-:休み明けと外枠だった分を考えれば結果も受け入れられるのかなと思うんですけど。

川:それもありますね。一因でもあると思います。

-:その天皇賞(秋)を終わって、使った後の状態なのですけれど。

川:終わった後も普通に疲れはないですね。順調に来ているんですけど、もうひとつ追い切りで気持ちが乗ってこない……。

-:良い頃ならもうワンランク良い感じの手応えなんですか。

川:もっと楽に行けるはずなんですけどね。今週の追い切りで、川須騎手に乗ってもらって、トーセンレーヴで後ろから突つくような形で追い切ったんです。ただ、見ていてまだ、ジョーダンらしい走りができてないところを感じました。

-:もうちょっと前向きさが欲しい?

川:そうですね。

-:その時はトーセンレーヴに乗られて、後ろで突きながらジョーダンの反応をご覧になっていたと。

川:はい。ジョーダンの特色として、一瞬の脚を出す馬ではないんですよね。長くいい脚を使えるので。今週の追い切りで気を付けたことはいつもみんなラスト1ハロンから追い出しにかかって、1ハロンは各々強めに追うんですけど、ジョーダンの場合は4コーナーを抜けてから、直線に入ってすぐに追い出しにかかるようには心掛けました。長い脚を活かすような調教を考えたんですけど、ちょっとまだ彼本来の動きではないですね。

-:ただ、馬の場合は10日あれば状態は変わりますよね。

川:これで目一杯やりましたので、来週の追い切りで変わってくるとは思いますよ。

-:来週の本追い切りで変わるのを見越して、今週に負荷を掛けていおいたんですね。実際、宝塚記念の時もオルフェーヴルの取材で池江先生が、「正直、7割ぐらいのデキ」だとおっしゃって。「ただ、残された時間の全てをかけて少しでも上げていくようにスタッフ全員で努力していく」とおっしゃって、実際に結果が出ているじゃないですか。

川:はい。そうですね。まあ、JCを見越して、1週前の追い切りは目一杯やっています。万全な状態に持っていくために。

-:ビッシリやって、そこで馬がガラッと雰囲気を変えることも。

川:変わってくるようにしたいですね。

-:去年も秋の天皇賞でハイペースを差して息の長い末脚で差し切ったんですけど、そこからトーセンジョーダンはもう1回伸びた。展開の利だけで来た馬ではなく、その後のJCでもちゃんと活躍して、パフォーマンスを示している馬なので、能力が高いのはみんな重々知っています。ここから上昇すればどこまで戻ってくるのか?そこが、やっぱり知りたいんです。

川:1回使っているので、去年のパフォーマンスを発揮させたいですね、次のJCでは。

-:今度はスタンド前からのスタートになります。この間よりは位置は取りやすい舞台ですから、ジョーダンには向きそうかなと。

川:外枠だった天皇賞のレースよりはいいと思います。

-:その辺り、我々は来週の本追い切りの動きを自分の目で確認しないといけませんね。

川:そうですね。

パドックの気配と目安の馬体重

-:あと当日のパドックなんですけど、ジョーダンのパドックの見方というのを川合さんから教えていただけると。

川:普通に歩いていたら……。落ち着いている馬なので。それほどパドックで変化がある馬ではありません。

-:ひとつジョーダンで気になっているのはリップチェーンにホースみたいなものを巻いていますね?

川:あれは厩務員さんの好みで。前もダイヤモンドヘッドとか、自分の担当している馬には付けていましたよ。

-:珍しいリップチェーンだなと思って。

川:トーセンジョーダンの場合はハミをグイグイ持っていくんですよ。おとなしいんですけど。パドックで曳っぱる場合はハミにチェーンを掛けているので、グイグイいくとモタれてハミが口に食い込むんです。

-:口を刺激するとレース中アクセルワークで使わないといけない口角の軟らかい部分が麻痺してしまう。口を刺激して麻痺させないように歯茎で制御しているんですね。

川:切れたりするんですよ。それを担当厩務員さんが嫌がって、レース前まではリップチェーンで口角を傷つけないように心掛けているんです。

-:敏感な口には負担を掛けないということですね。なるほど勉強になりました。あと1回使われて、馬体重なんですけど、だいたいの目安で言うと?



川:今、494キロですね。前走の競馬は478でしたけど、追い切りの次の日に計った体重が492キロなので、それほど前回のレース前と変わらない体重ですね。ほとんど同じぐらいで出走できると思います。

-:あとは輸送をしてどれだけ減るか、ということですね。

川:そうです。輸送で減ります。

-:だいたい6~8キロ減るという感じですか?

川:あと来週も追い切りをしますので、ちょっとそこで増減があると思いますが、だいたい470の後半から480の前半だと思います。

-:なるほど。もちろん、昨年の天皇賞(秋)と同じようなパフォーマンスを期待しているファンも多いと思うので、川合さんからジョーダンのファンにメッセージを。

川:長く良い脚を使う特性があるトーセンジョーダンですが、ジャパンカップに向けて、前回のような残念な結果ではなく、良い競馬をして欲しいですね。

-:ジョーダンらしい内容の。どうしても天皇賞(秋)の時のハイペースのイメージがあるから、後ろからバァーンと差しているイメージがありますけど、先行しての渋とさというのがこの馬の武器ですよね。

川:それが武器です、ジョーダンは。

-:あと馬場が渋った時なんですけど、ジョーダンはどういうタイプかというのを。

川:確かにパワーはあるのでね。まあ、マイナスではないですね。結構、叩きつける走り方なんですよね。だから、他の馬が苦にするならジョーダンには良いと思います。

-:裂蹄という試練を乗り越えて巻き返しを目指すトーセンジョーダンにも頑張って欲しいですね。

川:はい。今回のJCは豪華メンバーが揃いますが、状態さえ上向けばジョーダンも期待できますので、いい結果を期待しています。

-:忙しい時に、ありがとうございました。


(取材・写真)高橋章夫

【川合 達彦】 Tatsuhiko Kawai

2005年4月で引退した元騎手。中学生時代に偶然目にした騎手課程の募集がきっかけで、馬の世界へ飛び込む。栗東・坂田正行厩舎より騎手デビュー。デビュー3戦目で勝たせてもらった自厩舎のイブキノウンカイが思い出の一頭。
「金髪で派手な馬だったけど気品あふれる馬でした。僕が乗る前に青葉賞でレオダーバンの2着に来た実績馬に乗れて嬉しかった」。
騎手引退後は調教助手に。'07年より池江泰寿厩舎に所属。追い切りでは併走馬に跨ることが多い。時計が速くなり過ぎないように全体のラップに注意を払いつつ、追い切りをつけている。高額馬が多い同厩舎で「どんなに高い馬でも鍛えないと走らない」がモットー。