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兼武弘調教助手

兼武弘調教助手(栗東・池江泰寿厩舎)

この瞬間を待っていたファンは少なくないかもしれない。ついにトゥザグローリーが初めてダート戦に出走する。陣営ですらジャッジに難しい一戦になろうが、いきなりG1で一変しても不思議ではない魅力がこの血統にはある。今回は兼武弘調教助手に、無理難題と判りつつも同馬がダートで反撃する可能性について直撃してきた。

≪関連リンク≫「兼武弘調教助手インタビュー」
(ダノンカモン・JCダート出走前)


母はドバイWCで2着のトゥザヴィクトリー

-:初ダートに挑戦するトゥザグローリーについて教えてください。天皇賞(秋)の取材を池江先生にさせていただいた時に、時期的に10度を切ってこないと……。

兼武弘調教助手:確かに寒くなってきてからこそ、この馬の力を出せる風な傾向にあるので。やっぱり、体的には使って、筋肉が付いてきたなという感じが見受けられるし、今週の追い切りでもなかなか良い動きをしていました。

-:藤岡佑介騎手が乗って。

兼:乗ってくれて、良い動きをしていたなと思いますけれど。

-:みんな、誰しもが気になるダート特性ですが?

兼:そうですね、適性に関しては正直、やってみないと分からないですけど、お母さん(トゥザヴィクトリー)がダートに行って一変して、まあ、芝でも強かったですけど。

-:一変したというか、芝で走っていて、その後、フェブラリーSで3着。

兼:ダートでも適性を見せていたということですね。芝でも走っていましたしね。



-:ノボトゥルーが勝ったフェブラリーSで2着がウイングアロー。トゥザヴィクトリーはこの後にドバイに行って、キャプテンスティーヴの2着に来るんですよね。

勝ち馬から3馬身は離されているんですけど、ドバイワールドカップで2着に来る牝馬というのはスゴく驚いた記憶があって、今ほど海外にバンバン行く時代ではなかったにもかかわらず、2着というのは。


兼:僕もその時、牧場でテレビ見ていたと思うんですけど、日本馬の海外遠征はものスゴく興味があるところですよね。「2着に来た!スゲえな」と思った記憶があります。

-:違う意味で未だにスゴいですよね。この偉大なるお母さん。

兼:まあ、そうですよね。まあ、グローリーもダートでやれるんじゃないかと思っていますけど。いかんせん、初めてのダート戦がG1のジャパンカップダートになりますからね。どの辺までやれるのかというのは正直なところですけど……。

-:1回使って動ける状態にあるでしょうし、気温も下がってますし、天皇賞(秋)よりは良いでしょうし。ガラリ一変する可能性もなくはないけど、やってみないと分からないと。

兼:そうですね。可能性を感じますけど。

-:僕も常々思っているんですけど、実はダートのチャンピオンは芝馬の中にいるんじゃないかと。

兼:それは確かに言えるかもしれないですね。



-:こういう挑戦もファンの1人としては興味深いです。

兼:まあ、僕も確かにダートでどれぐらいやれるのか楽しみでもあります。

-:芝馬が初ダートに挑戦する時、やっぱり砂を被ったりとかがあると思うんですけど、それ以前に乾いた砂の方が良いのか、湿った砂の方が良いのかで言うと、やっぱり湿っているシチュエーションの方がトゥザグローリーには良さそうですか?

兼:まあ、それもはっきり言って、やってみないと分からないところがありますね。芝に近い感じで言えば、そうなのかもしれないですけど……。こればっかりは正直、やってみないと分からないですね。僕も全く分からないです。

-:コンディションは今週の追い切りを見る限りでは天皇賞(秋)よりは上向いていると。

兼:はい、状態面は上がっています。

-:お母さんのように活躍してほしいですね。

兼:そうですね。可能性を含んでいる馬やと思いますし、楽しみではありますけど。まあ、初めてなんでね。とにかく頑張ってほしいというのが正直なところです。


(取材・写真)高橋章夫

【兼武 弘】Hiroshi Kanetake

滋賀県出身。1983年3月6日生まれ。初めて観戦した競馬はダンスインザダークが勝った菊花賞。中学生の時に競馬好きの知り合いが多かったため、影響を受けてこの世界に入る。高校の卒業を待たずして、北海道の千歳国際牧場で修行。その後は競馬学校に在籍しながら、滋賀の湘南牧場、トレセン近郊のグリーンウッドに勤める。
池江厩舎に所属後は持ち乗り(エアラフォンやバトードールを担当)を経て攻め専の調教助手に。モットーは「馬1頭ずつ個々の個性を大切にする」こと。目標は「厩舎全体のことを把握できるように頑張る」こと。業界一といっても過言ではないビッグステーブルのムードメーカー的な存在。