関係者の素顔に迫るインタビューを競馬ラボがオリジナルで独占掲載中!

藤原和男調教助手

藤原和男調教助手

天皇賞(秋)で劇的な復活勝利を挙げ、注目を集めて出走したJCは意外にも9着。あらゆる事態を想定するこの厩舎にとっては、それも織り込み済みだったのかもしれないが、ならば昨年2着の有馬記念出走は更に気になるところ。もしかしたら照準は此処に……。今回は藤原英昭調教師の弟で、競馬ラボには初登場となる藤原和男調教助手に、JCの敗因や今年の有馬記念への手応えを伺ってきた。

得意なのは左回りよりも右回り!?

-:天皇賞(秋)を勝った後、更に期待を集めてJCに挑んだエイシンフラッシュですが、状態はかなり良さそうに見えました。

藤原和男調教助手:うん、状態は良かったね。

-:パドックも集中して歩けていましたし、天皇賞(秋)の疲れも、もちろん心配ではあったんですけど、予想外に脚を使えずに9着。このレースを振り返っていただいて良いですか?

和:毎日王冠を使って、馬がガラッと変わったんですね。それで、ホンマに今までと違うような感触があって、その通りに天皇賞(秋)でやってくれて、コレかという感じだったんですけど、やっぱり激走した反動もあったのかなと。

-:レース前、先生も「状態に関しては良いけども、フラッシュは疲れを見せたりするようなタイプじゃないから、限界まで走れるかどうかは本当にやってみないと」という風におっしゃっていたんですが。

和:それが一番でしょうね。

-:9着に負けたといっても。

和:まあ、見えない部分ですね。

-:ファンからしても、エイシンフラッシュの買い時が分からないと。いつ走るのかが分からないから。結構、オールマイティさもあるじゃないですか。最初はダービーをスローで勝ちました。スローの瞬発力勝負だけ勝っておけば良いと思ってたけど、実際はそうじゃなくて。

和:対応しよるしね。

-:実際、去年の有馬記念でも7番人気でしたけど2着。その内容も結構、惜しいというか、それほど条件がハマった2着じゃなくて、フラッシュにとっては不利な面もあったと思うんです。前を走っていたトーセンジョーダンが早めに外に開いてしまったから、早めに前の壁がなくなったと。ハジけさせるためには、もうちょっといてくれた方が良かったかなという。

和:でも、あの2着も、「アッ!2着に来た」という感でしたよね。

-:勝てる2着ではない。勝ち損ねた2着ではないと?

和:ええ、ずっとダラーッと来た感じでしたけど。本当に毎日王冠が終わって、馬が怒るじゃないけど……。

-:怒る感じでしたね。今まで見てきた中でも一番のハジけ方でしたからね。

和:だから、天皇賞は正直、自信ありましたね。馬が全然、違った。



-:普通に考えたら、古馬にとって、天皇賞(秋)、JC、有馬記念という3戦は厳し過ぎるじゃないですか。でも、天皇賞(秋)は勝ったけども、JCはそこまでフルスロットルは回してない感じがあるじゃないですか?まだ、残っているのかなという期待も……。

和:結構、天皇賞もキッチリいきましたからね。そんなに日にちもないし……。ジャパンカップが終わって、今も良い感じで来ていますよ。天皇賞に向かう時の感じ。

-:近い感じが?去年、2着だし、中山コースは縁起が良いコースじゃないですか、フラッシュにとって。

和:うん、そうですね。

-:京成杯も勝っているし、皐月賞も休み明けながら3着に頑張ってますし。

和:右回りは結構、走りやすそうですから、上手いかなと。

-:G1を勝っている2つは左回りなんですけどね。

和:そうですけど、折り合い面もありますから。

-:ああ、なるほど、右と左では違いますからね、折り合いが。

和:折り合い面が全然、違います。

-:やっぱり、左回りの方が掛かると?

和:ちょっと行きたがりますね。だから、今回も折り合い付いて、乗りやすいと思いますけどね。

-:あとは直線でどうのこうのというよりも、最初の4コーナーまでにどれだけリラックスして下ろせるかという。

和:そうそう。返し馬からリラックスできるような感じでいければ。

-:ここのところのパドックを見させていただいていても、結構、フラッシュは大舞台に行っても集中力を切らさず、人が多い、パドックでも、我慢して集中して歩けてて、素晴らしいなと思います。まあ、見栄えもする馬なんで、ファンはコロッとそこで買ってしまうという馬なんですけど。今年の最後(有馬記念)ぐらいは騙されて良いですよね。

和:良いと思いますよ。

鞍上の指示を待てる状態に進化

-:レースまではあと1週間ありますが、今週の追い切りはデムーロ騎手が騎乗して、単走でしたね。

和:何回も調教VTRを見ましたけど、良いですね。だから、今まではジョッキーがいつ放そうかという感じでしたけど、最近はずっと、「ジョッキーがいつ追うねん」というまで待ってますから、そういう状態です。

-:構えるような?

和:そうそう。馬が合図を待っているような。

-:それだけ道中、そういう風に我慢させて走る走り方を馬自体が分かっていると。あとはペースですか?

和:今まではジョッキーがシンドイ思いをして「もう放して良いんか」というぐらいのアレでしたけど……。

-:そこまでじゃ、なくなってきている訳ですね。

和:はい、今はもう、指示待ちで。

-:だからこそ、天皇賞(秋)はあれだけ溜まりきった状態で、ハジけたということですね。馬じゃなくって、肉食動物みたいな瞬発力で。また見たいですね。

和:そういうことです。





-:有馬記念を勝つとして、それに必要な条件というのは何かありますか?

和:やっぱり馬とジョッキーだけやなしに、そこまでに携わる人がいる訳ですから。装蹄師さんであったり、獣医さんであったり、全て上手いこと行った時でしょうね。天皇賞の馬運車の人でもそうですけれど、スンナリ行けた運とか。

天皇賞の前日、高速道路で事故が発生し、東京競馬場へ輸送中の関西馬が渋滞に巻き込まれるアクシデント。エイシンフラッシュは一般道を迂回して、大きな影響を回避することができた。

-:馬運車の人の好判断もあったと。

和:そうそうそう。色んな人のアレですね。

-:今回の有馬記念もクリスマス間近で、もっと冬の季節ですから、輸送に関しては心配がなくはないですね。

和:そうそう。だから、みんな色んな意見が飛び交っています。最良の方法を選択しなければですね。

-:しかも中山は府中から、もっと1時間遠いですからね。

和:また、ああいう事故(中央道笹子トンネル)もありましたしね。

-:いつ走るか分からないと決めつけるよりも、ちゃんとこっちで状態を把握して、良い準備ができているかどうかを確認した上で、買ったら良い訳ですね。

和:フフフ、お願いします(笑)。

-:それでは、フラッシュを応援しているファンに最後、メッセージをお願いします。

和:はい。やっぱり1頭やなしに、そういうファンとか色んな方がいるからフラッシュも頑張れる訳で、ここは応援の成果で勝てるように、こちらのスタッフも万全で頑張りたいと思います。

-:今年を象徴する漢字が金という字で、須貝厩舎のゴールドシップが出てくるんですけど、須貝先生といったら、藤原先生の後輩にあたります。

和:こっちもフラッシュで輝きますね。輝きを持ってますから。最後頑張って、もっと光れるよう、輝けるように。

-:もう、薄暗闇みたいな中山なんですけど、そこで輝いて欲しいですよね。

和:そうですね。去年も雪降ってましたしね、最後。今年は輝きます!

-:昨年2着を上回る結果を期待しています。ありがとうございました。



【藤原 和男】Kazuo Fujiwara

栗東トレセンでは誰もが知る兄弟の三男。次男が厩舎にも所属している藤原英昭調教師で、長男は加用厩舎で調教助手を務めている。夏村厩舎でこの世界に入り、その後は北橋厩舎に所属してエイシンプレストンの調教を担当。当時の思い出について「あの馬で人生変わったみたいなもの。人との繋がりも増えたし、色んな経験をさせてもらった。悪いところの修正も大事だけど、良いところはドンドン伸ばせることを馬に教わった」と語る。小学生から始めた乗馬のテクニックと、類まれなる経験を生かして名門厩舎の屋台骨を支える。