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野元昭嘉調教助手

野元昭嘉調教助手・元騎手(栗東・松田博資厩舎)


次なる目標は調教師試験の合格

-:今後の目標というか、人生のプランというのがあったら教えて下さい。

野元昭嘉調教助手:大分、今の仕事には慣れてきたので、ちゃんと勉強をして、調教師試験を受かるように目指していこうと思います。

-:そういえば、野元ジョッキーといったら、制裁、騎乗停止がなかったんですよね。

野:1回だけあります。新馬戦で馬がちょっと口をきかなくて、3コーナーで外に膨れたというのがあるんですけれど、自分から斜行しての騎乗停止とかは18年やってきて1度もなかったんです。制裁の点数も毎年、ほぼ10点以下が多かったので、それだけが……。逆に邪魔されることが多かったんですけれど……。

-:被害者になることのほうが多かったと?

野:多くても、加害者になることは少なかったみたいな。

-:それじゃ結構、フェアプレー賞を?

野:勝ち数が少ないから、もらえないんですよ。まあ、ムチャな競馬はしないけど、多少はガッツがないとアカンから、邪魔するのはいいことじゃあないけれど、強引な所も必要なのかなと思いますけれどね。

-:逆にキレイ過ぎたらアカンと?

野:キレイ過ぎたら、ダメなのかもしれませんね。でも、キレイに乗ることが一番ですからね、ハッキリ言って。馬をケガさせない、人をケガさせないということに関してはね。

-:大げさにいえば、道路交通法で言えば危険運転になってしまうことも。

野:やっぱり命が懸っているから、人馬共にね。

-:僕らも落馬事故というのは見たくないですからね。

野:やっぱり自分が落ちた時というのは一瞬の時とスローの時があるんですよ。落ちて行く~というのと、一瞬でパッと意識がなくなっているから、アッ落ちたんやと思うんですけれど、人のを見たら、コワっと思いますからね。

-:18年間も乗ってたら、恐怖感とはどういう風に付き合っていたのですか?

野:落ちた時というのは結構、大丈夫だったんです。ただ、ゲートを出て、躓いて落ちた時とかはその後、何レースかはゲートを構えたりする所がありましたね。

-:気持ち悪さがあるのですかね。

野:そうそう。芝よりダートの方がスベることが多いから、ダートの方がどっちかと言えば、重心を後ろ目にとかになったりするんですけれど、その内に躓いて落ちたら仕方がないかと思うと開き直れるから。ゲートを躓いて落ちた時は、そんなにケガをしないじゃないですか。だから、仕方がないと思って乗ってました。

-:委ねてた訳ですか、馬に。

野:取りあえず、邪魔をしないように手綱を延ばして、口にあたらないようにして、たて髪を持って、躓いた時はそれで多少は重心が後ろにあっても、手綱は譲っているから対処できますしね。

-:逆に手綱を持っていた方が、対処が早くできるということはないのですか?

野:手綱を持ってたら、ガァーンといった時にそのまま体を前に持っていかれるから、落ちちゃうんですよ。緩めている方がその分の余裕があるから、ガァーンと掛かってからの反応になるから、対処できるので。僕は唯一、親父が調教師をやっている時に「お前はスタートが上手い」と言われてたから。あんまり自分の息子は褒めないけれど。でも結構、先行馬に乗ってたから、そういうイメージがあるのかもしれないですけどね。



-:それがエイシンルーデンスの勝ちに繋がっているのかもしれないですね。

野:いや、それは……。アノ馬はデビュー戦はスタートが出なくて、被って、天井を向いて走ってたんです。首を上に上げて走って4着に来たんですよ。2戦目からはハナを切って、ブッチ切ってたから。

-:そのエイシンルーデンスはお母さんとして?

野:ねえ、頑張ってますね。良い仔を生んでくれたら良いですけれど。

-:これからは強い馬を育てる側に立ちます。

野:騎手を辞めた時点で、みんな強い馬を育てる側ですからね。

-:その切り替えがすごく早いというか、傍で見ていると。

野:厩舎が楽しくて、ワイワイしながらやっているから、多分、気分的に良いのかな。僕はある程度、ピュッとこなせるから。そこからが優れないけれど(笑)、臨機応変に対処はできるんです。本当に松田厩舎のスタッフの人はみんな楽しくて、教えてくれて助かります。

-:ぜひ調教師になって、ジョッキーとして果たせなかったG1制覇をできたら良いですね。

野:できたら良いですね。その前に調教師に受かることが問題ですけれどね。ちゃんと勉強をしてね。ジョッキーの時の方が時間があったと思うんですよ。でも、やっぱり乗り馬を集めなアカンという方が……。毎週、毎週、休みにならんようにね。

-:エージェントはいなかったんですか?

野:いましたよ。でも、やっぱり乗せてもらっている厩舎の先生としゃべったり、毎週乗り馬を集めようと、休みにならないようにと思って、気がソッチの方にばっかりいくと……。それでも勉強をできている人はできるんでしょうけれど、僕はできなくて。

-:新しい環境に馴染むことが優先で、まだ、勉強にはね。

野:でも結構、馴染めたし、先生も優しくて良いし。

-:これから応援してくれるファンにメッセージがあれば。ラストインパクトがクラシック戦線に乗るでしょうから。

野:乗って欲しいので、取りあえずケガなく、無事で行けるように調教して、世話して、クラシック路線に行けたら良いかなと。

-:いきなりG1のパドックで曳けるかもしれませんね。

野:先生にこんな馬を持たしてもらっているから、本当にありがたいですし。

-:なかなか乗っていた馬を世話するというのは。

野:そうです。乗ってて、それをやらしてもらえるって、いや~、すごいなと思って、自分でもビックリしているんですけどね。

-:引退直後にしゃべった時に「担当できたら良いな」と言っていて、それが現実になったのがすごいなと思って。

野:そうです、そうです。アドマイヤカーリンが放牧に行く前に剛君に「次に来る馬、楽しみにしとけ」と言われたから、もしかしたらと内心、と思ったんですけど。

-:その時は教えてくれなかったのですか?

野:教えてくれなかったです。「楽しみにしとけ」と言われてて。入ってくる前に「何か分かるか」と言ってたから、剛君がそんなん言うぐらいやから、もしかしたらラストインパクトかなと言ったら、「正解」と言うから、ウワーと思って……。そんな良い馬をやらせてもらってね。

これから担当していくことになったラストインパクトと。


-:乗り役をやっていた知識をラストインパクトの世話に。

野:調教には結構、乗ってたから、馬の癖は全部分かっているし、本当に乗り味が良くて、素直だし。多分、ジョッキーを乗せた時に文句ひとつない感じの馬なんで、乗りやすい馬だと思います。

-:それがやっぱり、クラシックとか中・長距離戦以上のレースにすごく必要なことですからね。

野:本当にゲートの中もおとなしい。スタートも出る。折り合いも付く。本当にジョッキーから言えば文句がなくて、こんな馬ばっかりだったら良いなという感じの馬なので。ラストインパクトを見たら、応援してくれたらありがたいかな、みたいな……。じゃなくて、松田厩舎の馬、全部を応援してくれたらありがたいですね。もっと言えば松田厩舎だけじゃなく、競馬場に足を運んで、自分の好きな馬を一生懸命応援してくれたら、良いんじゃないですかね。

-:そういう人が1人でも増えたら、競馬の人気もソコソコ上向いてくるかなと。

野:やっぱり、走る馬や人気のある馬がいっぱい出てくれた方が盛り上がりますし、1頭ズバ抜けた馬がいるのも盛り上がるけど、僅差でどれが勝つか分からんという能力のある馬がいっぱい出れば、ソッチもソッチでおもしろいからね。

-:その象徴的なのが有馬記念で、オルフェーヴルが回避しちゃいましたけれど、それ以外の馬を応援するために、中山競馬場には多くのファンが来てくれましたからね。

野:良い馬ばっかりなんですけど、はっきり言って、どれが勝つか分からない。でも、アレは強かったですよね、ゴールドシップ。あそこにオルフェーヴルとジェンティルドンナが出ていたら、どうなっていたのかなとか、また次に楽しみがね。

-:いつまでも馬はそういう風に、僕らに楽しみを与えてくれるんでね。

野:はい。世代交代もあるしね。

-:楽しみに応援しています。ありがとうございました。

野:こちらこそ。ありがとうございました。


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【野元 昭嘉】Akiyoshi Nomoto

競馬学校騎手課程第11期生。1995年、父である野元昭厩舎の所属騎手としてデビュー。同年は29勝を挙げ、中央競馬関西放送記者クラブ賞を受賞した。騎手時代の通算勝利数は重賞3勝を含む、5698戦238勝。引退レースで見事勝利し、2012年の12月20日に鞭を置いた後は松田博資厩舎に所属し、持ち乗り助手としてラストインパクトサダムダイジョウブを担当。調教師を目指しながら、腕利き揃いのスタッフの中で切磋琢磨している。