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加用正調教師

加用正調教師


調教時計では分からない加用厩舎

-:あと先ほどおっしゃってた体重なんですけれど、実際にレースを使うのはまだ1週間以上先です。それぐらいでの出走でしょうか?

加:この時期にまだ、先に見据えたレースがあるのに、このレースのために、無理くりに絞る必要はない。自然とコレを1回叩いて、馬に気持ちが入ってくれればと思うから。

-:それはこの馬だけじゃなくて、どの馬達も目標は同じでしょうからね。でもビッシリ調教をして、走れる状態にはあると。

加:まあ、そのために早めに入厩して、ここまで調教も追い切りも無難にこなしてきているからね。

-:あと馬によっては夏場に走る馬は冬場が得意じゃないという馬も。

加:まあ、そういうのもあるね。生き物だから。

-:この馬の場合はどうでしょう?

加:去年の活躍を見ていたら、別に寒い時期でも競馬に使っていたし。オープンの場合は賞金を稼がないと出れないというのがあるから、ちょっと無理したようなところがあっても、それも無難にこなして、去年1年は良い競馬をさせてもらったから。今回は目標に向かったレースを上手いこと使っていけて、状態もそれに上乗せして、良い感じで行ければ、結果は自然と付いてくるんじゃないかと思うんだけど。

1月17日(木)撮影


-:ファンとしてはこの一つのシルクロードSのレースだけじゃなくて、高松宮記念まで含めて、見ておいたら良いですね。

加:うん。そういうことだよね。

-:去年より予定を組んで、確実にココに出れるという状態で使っていける訳ですからね。それは有利ですね。

加:それが一番だわね。馬のためにはね。やっぱり、使いたくてもオープンの場合は賞金を持っていないと使えないというようなことだから、幾ら完璧にその馬のレースに合わせた調教ができてたって、出られないんだったら馬に対する負担が掛かるだけだから。

-:調教って結構、新聞で見るじゃないですか。加用厩舎の調教の見方を教えて下さい。

加:ウチはヨソみたいに坂路で50とか51とかそういう時計は……。まあ、CWでは6F80を切る馬もいるけど、それ以外の馬場は根っきりはっきりという感じで、こんな時計で新馬使うのという時計でも結果が出ているから、別にそんなに。特に今は馬場が悪いから、時計も出ないし、逆にそれが良いんじゃないかなと思う。

-:その辺は競馬場に行って、ちょうど良くなるというのを逆算して。

加:それと追い切りを根っきりはっきりやって、ピークを過ぎたりだとか、そのレースに上手いこと出れなかったりもあるから、除外とかなんかで。そういうことも考えれば、そういう風な調教の方が馬には良いかなと思うし。

-:融通が利くという。条件馬の場合は除外があって、1週延びるということがざらにありますからね。

加:今回でも抽選で日曜日に出れるかなと思って、今週から中京が始まって、3場開催でも、どっかから出てきて、全然、抽選の対象にならなかったというケースもあるから。そういうことを考えれば、先週の方が状態が良かったというよりも、その一歩手前ぐらいの調教の方が馬には良いんじゃないかな。

-:ジワジワと持っていけるように?

加:うん。大きい馬だったら週末にまたやれるしね。

-:今の時期は不凍剤が入ってますから、脚への刺激が強いですから。

加:結構、フレグモーネとか、今の時期は多いから。

-:寒い時期はウッドも硬いですからね。

加:でも、どの調教師も言ってるんだけど、どんなところでも屋根付きの坂路がね、去年は道営でもできたぐらいなのに、ココだけ予算がないからって、一番肝心なところに屋根がなくて、馬場が悪くて、時計は出ないし、馬の脚元には負担が掛かるし、何とかならんのかと。

-:馬に合わせた調教をしている中で、色んなコースを使い分けているというのが加用厩舎だということですね。

加:うん。まあ、そうね。

-:時計はそれ程、注目しなくても。

加:と思うね。

-:馬券を買う人はそういう目で見てたら良いですか?

加:今までがそんなにね。ウチでオープン馬になった馬でも、すごい時計が出たという記憶が全然なくて、そこまで行った馬が多いから。その方が良いんじゃないかなと思って。変に注目されて、グリグリの本命になって、来ないショックの方が……。

-:穴党は注目しておいた方が良いですね。

加:いや、穴党でも穴党じゃなくても、そういう見方で見てくれれば分かる人は分かるんじゃないかな。

-:それでは、また高松宮記念前には取材させて下さい。ありがとうございました。

(取材・写真)高橋章夫


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【加用 正】Tadashi Kayoh

1953年生まれ 神奈川県出身。
1993年に調教師免許を取得。
1994年に厩舎開業。
JRA通算成績は443勝(13/1/20現在)
初出走:
94年4月23日 4回阪神1日目4R ロングシリウス
初勝利:
94年 6月11日 1回札幌1日9R パリスケイワン(1着/7頭)


最近の主な重賞勝利
・12年 函館スプリントS(ドリームバレンチノ号)


夏休みにフジテレビで騎手の養成所があることを知り、衝動的に馬事公苑の教育科に連絡し、この世界を目指す。昭和44年から競馬に携わるも、昭和49年に瀬戸口勉厩舎に所属し、21歳の昭和51年に騎手デビュー。重賞30勝を含む559勝を挙げて引退。初勝利が特別戦のカクノヤシマで、思い出の馬は初重賞勝利のノトダイバー。忘れられないレースはレインボーアンバーの菊花賞2着、代打で勝ったダイタクヘリオスの高松宮杯。

厩舎にはベテランを揃えており「馬のことをよく見てくれている。開業してからずっといる人ばかりだから、和気あいあいと、大きな揉め事や争いもなく、チームワークは一番じゃないかな」と語る。調教師に転身して20年目のメモリアルを迎え、信頼できるスタッフと共に益々の飛躍を誓う。