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藤岡健一調教師

2歳のダートNo.1決定戦・全日本2歳優駿では、空馬の存在に苦しめられながらも、牡馬をも寄せ付けず3馬身差圧勝をみせたサマリーズ。その底知れぬポテンシャルの持ち主が、矛先を向けるのは桜花賞トライアルのフィリーズレビュー。 ダートの実績、現時点での収得賞金は申し分ないだけに、ファンのみならず、陣営の興味は芝適性に尽きるところだろう。昨年は厩舎キャリアハイとなる年間40勝を挙げ、トップトレーナーのカテゴリーにも上り詰めた藤岡健一調教師に直撃した。

ダートでのレベルの高さは実証済み、芝の適性は

-:2歳時の昨年は4戦3勝。芝の新馬戦以外はキレイに勝って、3連勝で川崎の全日本2歳優駿まで勝ちました。よりダートの中でもパワー、スタミナなどを感じる馬なのですが、もう1度芝に戻るという所がポイントだと思いますので、どのような適性があるか教えていただけますか。

藤岡健一調教師:芝は1回しか走ってないんですけれどね。1600の芝で4着で、1200、1400、1600と勝っているんですけれど、賞金をたくさん加算してきたということで、女の子ですし、桜花賞を目指したいと。元々、そう思って、芝の1600を使ったんですけれど、ダートを走ることは間違いないと思うんですよ。ただ、スピードはものスゴくある馬なので、それを活かせれば芝でも十分やれると思っているので、そのステップとして、フィリーズレビューを使ってみたいと思いました。

-:芝は1戦しか使っていないのですが、ポインセチア賞は芝スタート。あの時がそんなに先行する考えがなかったというか、他の馬が速かったのもあるし、位置取り的にもそんなに先行している感じがなかったので、芝のスタートダッシュが良いかどうか、未知数です。行かせれば、かなり行けそうな馬ですか?

健:ポインセチア賞の時は意図的に行かせてなかったんですよ。どういう競馬ができるのかというのがあったので。その他の1200と1600、それからこの間のG1もそうなんですけれど、その時は割と意図的に行かせているんです。ポインセチア賞というレースが一番、この馬にとって大きな転機というか、あそこを勝ったお陰でG1に行けたし、勝てたということなんですけれどね。あのレースが一番強い競馬をしたと思っているので。4コーナーを回ってくる時の手応えなんかもそうだし、一旦交わされながら、また差し返したという勝負根性とかも含めて、スゴい強い競馬をしたと思うので。

行かせればスピードはかなりあると思うんですよね。G1の時もそうですし、1200で勝っているということもそうなんですけれど。元々、調教も結構動くので、スピードがあることは分かっていて、ポインセチア賞を勝ったことによって、自在性があるということも分かって。ただ単にスピードで押し切る感じだけでもないとは思っていました。




-:正に一番強い内容がポインセチア賞だったと思います。まず、控える気があったと思うのですけれど、乗っているジョッキーとしたら、思っているより下がっていったというのがあって、若干、3コーナー手前で追っ付けてるんですけれど、そうしたら他馬と近付き過ぎて、もう1回ブレーキを掛ける形になって。レース自体はちょっとチグハグな感じで、運良く(2着の)ダノンレジェンドの後ろに付いて、抜けて来られたから良かったんですけれど。逆に走らない馬の後ろに付いていたら、危険な状況じゃなかったなと。

健:うん、そのままだっただろうね。

「筋肉も大きいですし、パワフルな感じがする。スピードがあるのは間違いないと思うので、1600ぐらいまでのダートだと、かなりのレベルの馬だとは思います。それが芝で活かせないかとなると、決してそうではないと思っているので」

-:それを追い比べで勝っているというところがスゴく強い内容だなと改めて思いました。芝とダートというのは、かなり違うと思うんですけれど、ダートから芝に行く中でも川崎で勝っているというのが、この時期の牝馬としてはパワーがあると思うし、昨年は4戦で詰めて使って、12月は2回使ってらっしゃいますし、スゴい馬ですね。

健:ちょっと気の強いところもあるんですけれど、普段は割とオットリとしているタイプで、カイ食いとかは全く問題ないです。この時期の3歳牝馬にしては精神的にもスゴく大人だし、体ももちろん子供っぽいところもあるんですけれど、随分と完成度の高い馬ではあると思いますよ。

-:実際、川崎の時も1頭空馬が出て、ゴール前で絡まれながらゴールするという感じでした。それもそんなに影響を受けている感じもしなかったですからね。

健:馬自身はそんなに影響はなかったと思うんです。乗っているジョッキーは空馬やと分かっているので、ちょっと入られたら、という心配があったんでしょうけれど、馬は全然、そんなことは考えてないだろうから。

-:この馬の血統なのですが、お父さんはあまり日本では聞かないHard Spun。お母さんの方もミスアドーラブル。日本のアドラーブルとは全く関係がないんですか?

健:全然、関係はないですね。

-:でも結構、知った名前の有名な所が血には入っているんですね。

健:そうですね。良い血統を日本に持ってきてくれているというのがあると思うので。もちろん、馬も良かったので。その血統的な部分はよく分からないですけれど。

-:体的な部分ではどんな感じの馬ですか?

健:決して長距離を走れるという体型ではないと思うんですよね。どっちかと言うと、筋肉も大きいですし、パワフルな感じがする。スピードがあるのは間違いないと思うので、1600ぐらいまでのダートだと、かなりのレベルの馬だとは思います。それが芝で活かせないかとなると、決してそうではないと思っているので、桜花賞に向けて考えているのです。



芝の新馬戦は参考外ともいえる一戦

-:川崎から少し休みを挟んで、成長してきた部分とか、変わってきた部分とかがあったら教えて下さい。

健:疲れを取るという部分と、成長はさせようと思ってたんですけれど、そんなに現時点では変わってきてません。割と完成度の高い馬ではあると思うので。

-:一気にココから成長して……。

健:これ以上スゴくなってしまったら、もっとスゴい馬になるからという気がするので。見た目とか体自体はそんなに大きくなった印象もないです。元々、そんなにちっちゃい馬じゃないので。

-:今朝(2/28)の状態だったら、1週間前にしたら、ちょっと余裕があるなという感じですか?

健:そうですね。元々、割と少し余裕があるタイプなので、動きを見ていても、余裕がある感じは先週辺りからもずっとあったので。

-:この馬は競馬場に行って変わるというか、何か普段の動きを見ていると、スゴくスピードがあって、ハナに行く気性には感じないんです。

健:そうなんですよね。普通に歩いてたり、ただ、走っているだけだとそんなスゴい馬には思えないんですよ。ただ、一旦、速い調教なんかをやったりすると素晴らしく動きが良いというか、時計も出るんです。体を上手に使える馬なので、競馬に行って良いというのはそういうところだと。競馬を使う度に強くなってきているというか、内容が良くなってきているので。それも1度芝を使って負けてるからということだけじゃなくて、あの辺りではまだ、そういう馬のデキになかったのかなという感じですけれど。

-:ちなみに新馬戦の時というのは、仕上がり具合が色々あると思うんですけれど、どれぐらい仕上がった状態で使われていたのですか。

健:僕の方針としては数年前までは結構、仕上げてというか、現時点で一番できることまで仕上げて、競馬を使う、新馬を使うというのがあったんですけれど、最近はちょっと、割と余裕を持たせて競馬に行くので、厩舎としては新馬勝ちが少なくなってきていて、未勝利勝ちでも、そこからオープンまで行く馬も結構、出てきているのです。そういう馬の作りをしているので、新馬の時点ではどれぐらいとか、何分、とは具体的には言えないですけれど、余裕があったことは確かですね。

-:それだけそこから上積みというか、その後の3戦で全部勝っている訳ですから。

健:ドンドン、ドンドン強くなってきているのも、そういうところで上手くいってるんじゃないかなとは思う。



-:もう1回芝を試してみてというのは?

健:あの時点とは全然、違うはずなので。

-:阪神の馬場状態なんですけれど、先週、競馬を見ていたら、若干、馬場が重めだと思うんですね。それは合いそうですね。

健:まあ、パワーがあるのは間違いがないです。

-:他の軽い、切れる馬にとってはちょっと嫌な馬場かもしれないですが?

健:まあ、そうかもしれないですね。

-:どんな感じの競馬になりそうですか。前々でと思っておいてよろしいですか?

健:どうでしょうね。割とスピードを活かせる方が良いと思うので。ただ、距離が1400ということで、他にどれだけのメンバーがどういう風にレースが流れていくかにもよると思うんですけど。あんまり気にせんと行こうかなとは思っているんですけど。それはジョッキーの考えもあるでしょうし、乗った感じもあるでしょうし。

-:ゲートを出てからとあの馬の周りとの動きでジョッキーが?

健:そういう部分においても、あのポインセチア賞のレースは大きかったかなと。ココでも良い競馬をしてくれれば、とは思いますけどね。

-:なかなかこの時期にこの完成度というのは?。

健:うん、そうですね。牝馬で男の子相手にあれだけの競馬ができているんですから。かなり良いモノは持っているはずなので。

-:楽しみですね。ありがとうございます。

(取材・写真)高橋章夫


【藤岡 健一】 Kenichi Fujioka

1961年滋賀県出身。
2001年に調教師免許を取得。
2002年に厩舎開業。
JRA通算成績は260勝(13/3/4現在)
初出走:
02年11月23日 5回京都7日目5R メイショウイダテン
初勝利:
03年5月24日 1回新潟7日目5R ボスポラス


■最近の主な重賞勝利
・12年 全日本2歳優駿(サマリーズ号)
・12年 オーシャンS(ワンカラット号)


宇田明彦・伊藤雄二・南井克巳厩舎で厩務員・調教助手の経験を積み、02年に厩舎を開業。04年にはアズマサンダースが桜花賞で2着、ワンカラットがサマースプリントシリーズを制すなど、活躍馬を送りだしてきたが、G1タイトルは縁がなかった。しかし、昨年、サマリーズが3連勝で全日本2歳優駿を快勝。初のビッグタイトルを手にし、年間40勝の大台にも到達。2013年はさらなる飛躍を狙う。