北村宏司騎手×増沢末夫氏スペシャル対談
2009/12/3(木)
増沢:いや、周りは何も言わなかったかな。もう2000勝が目標だったから。2000勝したら辞めようと思っていてね。ようやく2000勝して「もう誰も追い越さないだろうな」と思っていたら、何だよ(笑)。
北村:アハハ(笑)!
増:やっと2000勝して大丈夫だと思っていたら、何だよ(笑)。すぐビュンビュン抜かれちゃって(笑)。昔は1000勝で表彰があったくらいでね。で、1500勝っていうのは僕が初めてだから。「今まで誰もした事ないから、どんなものをあげたらいいか」って競馬会の人間も言っていたな。
北:そうなんですか。
増:それで1500勝した時「よし、ここまで来たら2000勝するまで乗ろう」と思ったから。2000やったら辞めよう、と。それはもう最初から思っていたの。
北:でも、先生が1500勝をあげた時点では40歳を超えていたんですよね?そこから500勝しようと思うのも、凄いモチベーションですね。
増:昔の乗り役は大体40歳前半で乗り役を辞めていたからね。
‐:減量がキツくなってくる方もいらっしゃるんでしょうね。
増:そういう人もいたと思うけどね。
‐:先生はどうでした?
増:僕は減量ではそんなに苦労しなかったな。馬に乗るのが好きだったから、食べなくても平気だったね。
北:普段から節制されていたんですか?
増:若い頃はしていたよ。朝、調教が終わったら汗取り風呂へ行って、15時になったらまた汗取りに行くんだよ。だから体はいつも50キロ。やっぱり普段からそうやって体を作っておかないとダメだよ。やっぱり勝負だから、体は作っておかなきゃ。だから、レースが終わった後もハアハア息切れをした事なんか一度も無いよ。
北:でも本当に乗るのが好きじゃないと、そうやって気持ちを保てないじゃないですか。そのモチベーションを維持し続けたのは凄いと思います。
‐:北村騎手はどのように体重を調整されていますか?
北:僕もそんなに重い方じゃないですけど、減量しなくて済むように、普段から節制する方がいいなと思っているんです。週末にまとめて落とすより、普段から節制した方が全然苦じゃないですね。僕、サウナに入るのは嫌いですもん。サウナに入って我慢して落とすより、食べるのを我慢する方がよっぽどラクですよ。疲れないですし。
増:昔の乗り役なんか凄いよ。目方の重い人が多かったし、汗取り風呂でグッタリしている人がそこらへんに寝ていたよ(笑)。風呂に入る前には頬がふっくらしていたのに、出てくる時にはゲッソリだから(笑)。
北:キツそうですね(笑)。
増:でも、みんな減量でフラフラしていても、馬に乗るとシャキッとするんだよな。昔は乗り役も厩務員も凄い人が多かったよ(笑)。
北:「凄い」って、どういう意味で凄いんですか?
増:もうガラの良いのなんかいないからね(笑)。競馬全体の雰囲気が今とは違ったよ。競馬場のお客さんも「コノヤロー!」なんてヤジは飛ばすしね。でも、今は僕も馬券を買うようになって、そのファンの気持ちが分かるよ。
北:アハハ(笑)!それはマズいですね。先生、よく競馬場にいらっしゃるんですよね?僕もヤジられちゃうかも。
増:「北村!コノヤロー!」なんてな。
北:今も昔も怒られっぱなしですよ(笑)。
‐:アハハ(笑)。増沢先生からいただいたアドバイスで、印象に残っているものってありますか?
北:先生はあまり細かなアドバイスはされなかったですね。「とりあえずスタートを上手く出て、勝つように乗れ」って。それが一番多く出された指示でしたね。
増:競馬はスタートが大事だから。馬の全能力を出させるには、馬が走りやすいように誘導してあげないと。それにはやっぱり上手いスタートを切って良い位置を取ってね。
北:本当、スタートに関してはよく言われました。
増:あと、乗り役は頭の回転が良くないとダメだね。競馬は1分何秒の勝負なんだから、ピッピピッピと決めていかないと。もう「ここで行くか行かないか」なんて迷ってちゃダメだから。周りの馬の動きを確認して、サーッと動ける判断力と反射神経がないとね。
北:はい。僕も一回「お前、寝ているのか!」って怒られた事を覚えています(笑)。
増:そうだったな(笑)。それと、相手をしっかり見てな。人気馬が近くにいたらそれを狙って行かなきゃ。そうやって乗らなきゃダメだよ。
北:はい。
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