前哨戦快勝の2歳王者ロゴタイプが天下を狙う
2013/4/14(日)
ベゴニア賞快勝でオープン入り後は朝日杯FS、スプリングSと一戦毎にパフォーマンスを上げ、大本命のG1馬として皐月賞に臨むロゴタイプ(牡3、美浦・田中剛厩舎)。父ローエングリンという同馬の大出世は一般ファンでは恐らく予期できなかっただろう。今回は競馬ラボ初登場となる佐々木悟調教厩務員に、その出会いから現在まで、等身大の成長過程をロングインタビューで語っていただいた。
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北海道でG1馬になる素質の片鱗
-:ロゴタイプを初めて見たのはいつ頃だったでしょうか?
佐々木悟調教厩務員:去年の函館で入厩しまして、その時は担当が僕じゃなかったんですよ。僕ともう1人の人が行っていて、函館で入厩して、隣で見ていたんですけど、やっぱり最初に馬の恰好が良いなと。僕が一番感じたのは首がしなっているような感じで、ちょっと推進力がありそうな馬だなと感じましたね。
-:首が下がっているんじゃなくて、上がっている?
佐:普通は首があって、頭がある訳じゃないですか。しなやかなカーブを描いているというか、そういう感じがあったので、そこに推進力があるんじゃないかなと見ましたね。
-:実際に跨ったのは?
佐:僕が担当するようになってからですね。ベゴニア賞の前。北海道に行って、放牧が終わって帰ってきた時から僕が担当になったので。その時に初めて跨って。
-:推進力がありそうだなと北海道で見て、実際に跨った感触はいかがでしたか。
佐:その時は体が成長して帰ってきたというのもあって、やっぱり背中も良いですし、柔らかい動きもしますし、走る要素はあるなというのは感じましたね。
-:ベゴニア賞を勝って、朝日杯FSを使ったわけですが、そのG1を振り返っていただきたいんですけれど、佐々木さんはレースをどのようにご覧になりましたか。
佐:とりあえずゲートに行ってたので、レース自体はライブで観られなかったんですけどね。スタートを切って、その後、走って、スタンドまで戻ってきたんですけれど、何かが2頭でマッチレースをしているのが見えたんですよ。ただ、冬場の中山は西日で結構、眩しくて見えないんです。そうしたら、スタンドで見ていたウチの関係者が騒いだんで"アレッ勝ったんじゃないかな"と。それで初めて(わかりました)ね。見えないところから見えるところに来た時にロゴ(タイプ)とコディーノが並んでたので、2頭の内、1頭はロゴだったんだと。騒いでいたから勝ったんだと。
-:ドンドン後付けみたいな感じで?
佐:正直、勝てるとは思ってなかったんですよ。コディーノが強いというのもありますし、抽選で通って出走をしていた馬ですし、外枠というのもありましたしね。まあ、期待はしてましたけれど、調子は良かったんでね。
-:中山のマイルの外枠というだけで、少しマイナス要素が発生するところもありますし、その段階での格というか?
佐:そうですね。やっぱりコディーノが抜けてるんじゃないかという、誰もがそう見てたんでね。
-:人気にも表れてましたしね。ところがそれを破って。レース前の状態自体はどうだったのですか、朝日杯の時は?
佐:ベゴニア賞を8割ぐらいの仕上がりで出して、アレだけの競馬をしてくれて。元々、冗談で「勝ったら朝日杯」という話をしてて、朝日杯に行けるかもということになったので。まあ、除外の対象にはなってましたけれど、出るからには恥ずかしくない仕上がりで送り出そうということで出たんですけれど。上手くいきまして、その8割よりも100に近い、コッチが思っている通りの仕上がりで出せることができたので。とりあえず、自分たちがやるべきことはできたかなと。やるべきことをやって出走させてあげられるなというのはありましたね。
-:実際、結果も伴って、2歳の状態を一旦振り返ると、何か大きな転機になったなと思えるようなタイミングはありましたか?
佐:入厩当時がのほほんという感じの馬でゲートもモッサリという馬が、北海道で4回使ったんですけれど、スタートが段々、速くなってきて、ちょっと馬がピリッとしてきたなというのはあったんですよ。実際、掲示板を外してないですし、重賞でも掲示板に載ってますし、間違いなく良いモノは持っているヤツだと。
-:レース慣れをしていけば、更に上積みもありそうだなと。体の面で何か変化はありましたか?
佐:当時、北海道で持ち乗りをやってた助手が「柔らかい。けれどゆるい」と言ってたんですよ。柔らかさとゆるさが同居してて、まだ、ゆるさの方が比重が勝ってて。それが放牧が終わって帰ってきたら「馬が変わったぞ」と言うことになって。まあ、放牧から帰ってきた時は僕が乗ったり、攻め専の人が乗ったりという感じだったんですけれど、馬の体も大きくなってましたし、「ちょっと馬が変わった」という話で。
-:柔らかさとゆるさが同居している中のゆるさが徐々に抜けてきて?
佐:ゆるさが抜けて、芯が通ってきたというか、しっかりとしてきて。
-:でも、柔らかさもキープしてますよという感じで。
佐:ゆるさというか、柔らかさが伝わってくる感じで。
基盤を築いたのは村田一誠騎手
-:2歳を終えて、今度は3歳のスプリングSから始動ですけれど、そのレースに向けて、朝日杯後の過ごし方というのはどういう感じだったんですか。
佐:とりあえず1回放牧に出まして、1カ月半前ぐらいに帰ってきて。結構、山元トレセンさんの方でも15-15とか、それなりに乗り込んでいてくれてたので、仕上げるのはあんまり……。時間的に余裕があったので、あまり馬に負担を掛けないように、のびのびとゆっくりやろうと。その時点で一応、周りが「クラシックを」と言うんで、とりあえずそっちを100に出せるように。変な話、朝日杯パターン。前哨戦は100じゃなくという感じで。
-:一応、態勢は整えて、そこから更に上積みは見込めますよというような状態で。
佐:余裕残しの状態で出せるように。結構、馬は母父がサンデーなんで、少しテンションが上がってくる面が出てきて、それが折り合い面に影響するのかなというのもあったので。あまりテンションを上げさせないように極力リラックスして走れるような攻め馬をしていました。
-:レースはどのようにご覧になりましたか?
佐:ゲートに行ったんです。朝日杯と同じパターンで。その時はバスの中でラジオを聞いてたんですけれど、良いスタートを切って、良い位置を取って、折り合いもほぼ問題ないような感じで。1頭になるとソラを使うので、直線で4コーナーを回ってすぐに先頭に立ったと言ってたので、ちょっと速いぞと。でも、それで押し切ってくれたので。その後 レースを見たんですけれど、抜け出してから遊ぶこともなく、後続を離すぐらいの形で、ちょっと本物になってきたなと。
-:前は抜け出すと遊んじゃうところがあったけれども。
佐:追い切りでも併せ馬で見ていると、ソラを使ったら、追われたら離れたりと。北海道の時なんて僕は調教パートナーで、僕が乗った馬をロゴが追い掛けてきて、併せてアッサリと抜かれると。気持ち良く、その姿を見てたんですよ。
-:良い抜け出しをするなみたいな。併せている相手として見ても、結構、迫力あるなというのを感じるものなんですか?
佐:いや、本当に並ぶ間もなく、サッと交わされるという。併せ馬じゃないんじゃないかというような……。
-:馬体が合う暇がないぐらいの?
佐:ないですね。ただのペースメーカーみたいな。村田一誠騎手が追い切りとか、ずっと乗ってくれてたんですど、気持ち良いだろうなと。だって追い切りが終わって止めた時に吠えてましたからね。「ええー」とか言って。お前は「北島康介か?」みたいな(笑)。スゴイ気持ちよさそうに吠えてましたよ。
-:ジョッキーとしてもコレは良いなと?
佐:本当にこの馬は一誠がココまでしたといっても過言じゃないですけどね。
-:と言うぐらいに早い段階で?
佐:色々、気持ちもそうですし、距離の融通を利かせてくれてたのも一誠ですしね。
-:やっぱりそういう育て方一つで、例えば気性的に問題が出てきて、距離が持たないというケースも?
佐:馬によってはあると思います。
-:それを上手く、村田さんも含め、皆さんで育てることができて。
佐:ええ。
佐々木悟調教厩務員インタビュー(後半)
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