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佐々木調教厩務員


スプリングS直前でさらに覚醒


-:今回、皐月賞に向けて、今日(4/4)、1週前追い切りが行われたということで、その内容と評価をお願いします。

佐々木調教厩務員:一応、今回も僕が違う馬でペースメーカーをして、予定ではゴール前で3頭一緒になって、という話だったのですが、ちょっと色々とあって、僕が先にゴール板を過ぎたんですけれど、ゴール板を過ぎて抜かれた時はさすがだなと。スゴイ脚でしたね。乗った助手さんに聞いたら「やっぱり良い」と。スプリングの当該週か、その前の週の追い切りで「ちょっと一皮剥けた」という話は聞いていて。

-:一皮剥けたというのは動きそのものでしょうか、それとも気持ちの面?

佐:動きとか、体の使い方だとか。あとはやっぱり朝日杯の前の放牧から帰ってきた時と、朝日杯が終わって今回、放牧から帰ってきた時、馬が幅自体は変わらないですけれど、詰まったというか、何かこうギュッと身になったモノが備わったんじゃないかなという感じはしました。

-:ドンドンとゆるさというのは抜けて?

佐:そうですね。今はゆるさは感じないですね。助手さんにしてみれば「まだまだ、ゆるいのがある」と言ってるんですけど。

-:スタート地点から考えれば、かなりしっかりしてきたと?

佐:そうですね。前は立ち上がって、苦しがって崩れそうな時もあったんで。今はもう崩れるどころか2本脚で歩いて行っちゃいますからね。

-:その体がシッカリとしてきたことに伴って、気持ちの面で変わりが見えたりだとかはありますか?

佐:少しオットリという感じは厩の中だけですね。基本的に大人しいことは大人しいんですけれどね。



-:普段の馬房の様子などは?

佐:エサを食ってるか、寝てるかですね。だからよく言われるのは「ゴロゴロ、ゴロゴロ、ロゴタイプ」と、言うぐらい寝てますね(笑)。

-:若干、馬名に近いですね。

佐:近いですね。無駄な力を使わないみたいですね。

-:でも、競馬場に行くとスイッチが入るという。

佐:どっちかと言うと、少し気が入っちゃう方ですね、輸送をしただけで。まあ、暴れたりはしないですけれど、ボーとしている感じじゃないですね。

-:今は微動だにしない感じの?

佐:多分、もう少ししたら横になります。

-:普段、手が掛かるところというのは?

佐:特にはないですね。まあ、普通ですね。

-:性格はどうですか。例えば甘えてきたりだとか。

佐:甘えてきます。甘えてくるんですけれど、甘え方が口でジャレてくるんですよ。それが本人は甘噛みなんでしょうけれど、噛まれる方としたら、結構パンチの効いた噛み方をしてくるんで。甘噛みじゃないだろう、という。

-:割とオン、オフはハッキリと?

佐:ハッキリとしてますね。誰が見ても分かるぐらいの差があると思います。

-:普段のオフの時はゴロゴロというリラックス振りと、競馬場に行くと気合が入る。

佐:ええ、入りますね。

-:佐々木さんが感じているロゴタイプの良さはどういうところにありますか。

佐:頭が良いと思います。賢いですね。ウチの調教師も言ってましたけれど、乗り手の指示にちゃんと従うので。自分がグッと引っ掛かりそうになっても、行くなと指示を出せば、それ以上は行かないですしね。普段の生活もそうですけど、ちょっと頭が良いなというのは感じますね。無駄な体力は使わない。

-:勝手に暴れて、エネルギーを浪費したりだとか、というのがない?

佐:そうですね。休み明けですとか、多少は煩いんですけど、すぐに落ち着きを取り戻すんで。



-:乗り手の指示に従うという良さが活きる展開という風になると、かなり幅が広がると思うんですけど、どういった展開がロゴタイプにとって良いと思いますか?

佐:一番理想なのは、この前のスプリングのレースができるのであれば、あの展開が一番良いかと。後ろから行って、切れるというレースをしたことがないんですよ。切れるかどうかは定かじゃないんで、前々で良いポジションを取って、折り合いを付けて、直線で早めに抜け出すと。

-:確かにそういうスタイルで来てますものね?

佐:それが一番、今の段階では合っているのかなと。

-:今の段階でのこれまでのロゴタイプのベストレースと言うと、どれになると思いますか?

佐:個人的にはやっぱり朝日杯が。ミルコがパーフェクトに乗ってくれたので。

-:もう1回やれと言われても、なかなか。

佐:無理だと思います。あの叩き合いはシビれましたけれどね、あとで見て。

-:ちなみに佐々木さんはこれまでにG1馬をご担当されたということは?

佐:ないです。恥ずかしい話、朝日杯が初重賞挑戦でした。

-:初重賞挑戦がG1で、しかも勝っちゃった?

佐:ねえ、ハハハ(笑)。

-:じゃあ、この間のスプリングSも歴史が浅いというか?

佐:2回目です。

-:2戦2勝?

佐:結果的にはそうなりますけれどね。

重賞3戦3勝への挑戦は皐月賞で

-:今回、初めてクラシックに向かうということで、佐々木さん個人のこの業界入ってからでも、入る前でも構いませんが、思い出の皐月賞はありますか?

佐:ナリタブライアンの勝った皐月賞になりますね。

-:その時はこの業界に入られて?

佐:いや、まだ入ってないですね。その頃は大学生でした。ちょうど競馬絶頂時代で、周りがみんな競馬、競馬でしたからね。

-:僕はその年から見始めました。見始めた年に3冠馬が出たので、3冠馬って簡単に出るんだなと思っちゃいましたけれど、あれは間違っていたことが分かりましたけどね。その後、ディープインパクトまで待ちました。でも、強いなと思いましたけどね、ナリタブライアン。今回、皐月賞にご自身の担当馬が出るということで、最後に意気込みを聞かせていただければ。

佐:正直、クラシックというモノに挑戦するのは初めてなので、いつも助手さんと言ってることは「良い状態で、ロゴが100%力を発揮できる状態に持っていけるようにしよう」と。まあ、朝日杯の時もそうだったんですけれどね。ウチらにできることというのは無事にレースまで、ゲートに入れるまで送り出すことが大事というか、それまでしかできないので。とりあえずロゴが良いパフォーマンスができる状態にして、送り出してやろうと。本当に特別なことは何も考えてなくて、それだけですね。無事に、順調に一番良い状態で出してやると。それだけですね。

-:自分のやれることをやってということですね?

佐:よく取材とかでも「怖いモノ知らずですね」とか言われるんですけれど、経験がないんで、どうすりゃ良いか分からないんで……。やることをやって、自信を持って、レースに挑ませてやろうというぐらいしか、ウチらにはできないですからね。

-:これまでの朝日杯の前だとかで、佐々木さん自身が眠れないとか、そういうことはありましたか、緊張してとか、意識してしまってとかで?

佐:朝日杯の時に1回だけ。何か今まで経験をしたことがないことが、いきなりガッと来たんで。取材のことであったり、どこか歩いてもカメラで撮られたり……。それで1回酸欠になりましてね。呼吸を忘れるというね。吸って吐いてを忘れて、貧血で倒れたことがありました。

-:今、振り返ってみれば、プレッシャーが掛かってたのかな自分みたいな。

佐:多分、そうなのかなと。ただ、1回そういうのを経験していると、今回はそこまで自分を見失ったような感じはないですね。

-:良い経験を早めにしておいて。

佐:ええ。自分のやるべきことはそこなんだということが分かったんで、良い状態にしようと、そのことが自分のやるべきことなんで、特別なことは必要ないんだと思うと気が楽になって、呼吸を忘れなくなりました。

-:良かったですね。今回は人馬共に良い状態で向かってください。ありがとうございました。

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【佐々木 悟】Satoru Sasaki

当サイトの「トレセンLIVE!」でコラムを執筆している佐々木力調教厩務員の実兄。父親が厩務員という家庭に育ち、子供の頃から馬に親しんできた。大学卒業後にサラリーマン経験を経て、2000年4月よりトレセンに入る。笹倉武久厩舎、中野渡清一厩舎と移り、現在は田中剛厩舎で調教助手を務める。昨年の朝日杯フューチュリティステークスを制し、2012年最優秀2歳牡馬に選出されたロゴタイプを担当。