ラストイヤーに懸けるフミノイマージン
2013/5/4(土)
重賞4勝という実績がありながらも、不利を受けやすい脚質から惨敗も少なくないフミノイマージン(牝7、栗東・本田厩舎)。それでいて勝つときは牡馬をもなで斬りにするのだから、個性的というか掴みどころがないタイプだが、それを管理するのは騎手時代、特に牝馬G1において無類の勝負強さを誇った本田優調教師。今回は騎手としての目線や、勝負への心構えなど、精神論を含めて飾りのないコメントを残してもらった。
騎手として一番大事なのは位置取り
-:まず、前回の阪神牝馬Sは2000mぐらいを得意としている馬なので、1400はどうなのかと思って見ていたのですが、意外にレースに付いていけましたね。
本田優調教師:去年も同じレースを使っているのでね。去年は際どい3着で、今年はちょっと大雨が降っちゃったんで。ノメりながらで、いつもの終いの伸びはなかったんだけど、その理由は馬場だと思っているのでね。
-:雨の馬場と言えば、人気で負けたエリザベス女王杯。あれも悔やまれます。
本:天気ばっかりはどうにもならんからね。
-:何とかフミノイマージンがG1でも通用するというところを見せてもらいたいのですが、大舞台では噛み合わないところが続いていて、見ている側としても歯痒いんですけれど、先生としてはどんな感じですか?
本:見てる側よりコッチの方が歯痒いからね、正直な話。馬場が悪くなるのは天気でしょうがないんだけどね、自然のことだから。あとは不完全燃焼な面が多いんで。ここ一番、大きいレースになると必ず位置取りが悪かったり、前が詰まったりしてるんで、その辺どうにか上手く乗ってきて欲しいんだけどね。
-:太宰騎手もさんざんこの馬に乗ってますからね。
本:(太宰)啓介だけ(不完全燃焼なレースをしている)、ということもないんだけどね。結構、他の人間を乗せたりしてるけど、何か同じような負け方をしてくれるから……。そんな乗り難しいとは思わないんだけど。
-:終いの瞬発力でシュッと来る脚よりも、長く良い脚を使うイメージがあるじゃないですか、この馬というのは?
本:長くても良い脚を使ってるからね。長い良い脚も使えるし。
-:そういうフミノイマージンの特徴を踏まえると府中のマイルという舞台で、どういう流れがこの馬に一番適してますか。やっぱり流れた方が?
本:流れてって言うか、僕も乗り役をやってたから(言えるのは)位置取りが一番大事なんだよね。流れはしょうがないからね。自分で作れる訳じゃないから、流ればっかりは先行馬、好位の馬が作ってくれるもんなんで。それを自分から作ろうと思ったら、イマージンみたいな脚質の馬じゃ無理だからね。逃げ馬とか、好位で競馬できる馬なら自分である程度の流れを作れるんだけど。やっぱりその辺は臨機応変に後ろから行くんだから、あとはコース取りだよね、結局ね。
-:ある程度、射程圏内に入れつつの後ろという感じですか?
本:だから、前半の位置取りも肝心なんだけど、その位置でずっと……。道中、段々と下がってくるパターンも多いしね。
-:2000mでコーナー4つのレースだったら、1コーナー手前あたりでフッと抜けるみたいな感じで、位置取りが悪くなる時がありますからね。
本:その辺はやっぱり流れと乗り役の判断なんで。それが負けた時は他の乗り役が乗ってる時もそうなんだけど、スタートしてからそれなりの位置を主張している割にはコーナーを曲がって落ち着いた時に後ろにいたりね。それは騎手の判断ミスというかね。
-:前半のこの馬の形というのは?
本:まあ、啓介が一番数は乗ってるからね。そういう面で自信を持って、自分の位置取りを主張できるようにしないとね。その辺が課題だけどね。そこで乗りきれるかだね。
想定外のレースだった札幌記念
-:最近、この馬で一番驚いたのは、やっぱり北海道での札幌記念で。
本:札幌記念は当初は使う予定じゃなかったんだけど、その前のクイーンSが不完全燃焼の競馬になっちゃったんでね。それで納得できないし、しょうがないから札幌記念に行くかなとなって、行ったんだけどね。
-:僕らが見ていると、メチャクチャ荒削りだなと。
本:まあ、そういうレースをしても勝てる馬なんだからね。改めてイマージンのそういう力が分かれば、また違う乗り方をすれば良いだけの話なんだけどね。それがどうしても守りというか……。もうちょっと強引な競馬をするとか、何かしないとね。
-:もっと一癖ある競馬を?
本:だから、強引な競馬をして欲しいんだけどね、みんなにね。
-:キレイにサラッと乗ってくる競馬じゃなく?
本:啓介だけじゃなく、北海道の牝馬のレースの時もそうだったし、その前の去年のヴィクトリアもそうなんだけど、何かおかしな乗り方をするんだよね。
-:応援しているファンからしたら、フラれ続けて過去何回かという。
本:だから、自信を持ってというか、馬の力を信用して乗れば良いんだけどね。何か上手く乗ろう、逆に上手く乗ろうと思い過ぎているのか、何か後手後手を踏む競馬になっちゃうからね。
-:札幌記念で言ったら、男馬のダークシャドウとかヒルノダムールと言ったら、G1級なんですよ。例え夏場のコンディション不足で出てきたとは言え、それを負かすのは能力があるからこそ?
本:能力は持ってると思うよ。勝つ時は結構、強い勝ち方をしてくれるからね。
-:それがあるならば、適距離が2000mぐらいだとしたら、1600でも府中の直線は長いですし、いい訳できる舞台でもないですからね。
本:俺はこの馬はオールマイティだと思っているので、距離的にはね。だから、1400も全くダメなのかと言ったらそれなりに最後、出してから伸びてきてるからね。だから、そういう面では距離適性はなくはないと思うので、あとは流れに乗れるか乗れないか、思いっきり追ってこれるか追えないかだからね。前が壁になったら追えないんだしね。
-:じゃあ、逆に大外ブン回しでも良いぐらいですか、詰まるぐらいなら?
本:まあ、詰まるんであればね。直線に入るまでの準備というのもあるからね、本当は。
-:前の馬が抜けていくのをちゃんと探して?
本:そういうのは乗り役が読まなきゃしょうがないから、前の馬を見ながらね。結局、詰まるというのは詰まるような間隔のところにウチの馬だけが突っ込んでいく訳じゃないから。探しているヤツらが一杯いるんだわ。それらと同じように突っ込んでいくから詰まっちゃうんであって。
-:1頭分しか開いていないところに2頭が?
本:やっぱり他の馬も狙ってるからね、内にいるということは。そこで入っちゃえば良いんだけど、2頭で入りに行けば詰まるんだから。だから、直線に入る前に後手を踏むと、ずっと後手を踏まなくちゃいけなくなっちゃうんだよね。
-:その辺をフミノイマージンもスッと反応して小脚を使えるタイプじゃないから。
本:まあね。それもあるんだろうけどね。だから、誰が乗っても同じような負け方をするのかもしれないけどね。ウチらは外で見てるから……。勝つ時は鮮やかだから、もうちょっとどうにかなるだろうと思ってるし。
-:ヤリようがある素材ですよね。
本:決して力で負けてるとは思ってないから。
-:あれだけ馬格があるんだったら、他の馬を弾き飛ばしても?
本:負けるレースは全部分かってるから。敗因がハッキリしてるというのが殆どだから。その辺がG1を勝つんであったら、不利のないような競馬をしないと勝てないだろうしね。化け物ではないからね。それでも力は十分に持っているはずだから。じゃなかったら重賞を4つも勝てないし、牝馬の重賞3つに、G2を男馬に混じって勝つ芸当はできないと思っている。その辺で自分の馬は強いという感覚で堂々と乗れば良いだけの話だと思っている。
-:あとは先生並のハートを?
本:俺はそのつもりで乗ってたからね。負けないと思って乗ってるから。だから、どんな状況でもどうにかなるからね。まあ、初めて乗ったり、たまに乗ったりすると走る馬でミスをしないようにと乗るんだろうけど。
-:今回はあまり守らないで?
本:常に攻めれば良いんだわ。攻めて負けたら、別にしゃあないからね。力を出し切って負けるのならば、別にそれはそれで納得できるんだけど、やっぱり直線に入って追えないのが一番、納得できないからね、見ててね。
-:手応えがあって、脚を余して負けるというのがどうにもならないと。
本:結局は裏目、裏目にいってるからね。この馬は特にそうだよね。内を突けば外から伸びてくる馬にやられるしね。外を突けば内がガッポリ開いて、内から伸びられたりするんでね。それを踏まえても、乗り役に任すしかないからね。
本田優調教師インタビュー(後半)
「最後の一年は完全燃焼の競馬でG1を」はコチラ→
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■最近の主な重賞勝利 |
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騎手としては1980年に星川薫厩舎所属よりデビュー。テイエムオーシャン、カワカミプリンセスとの主戦騎手であったことは周知の通りだが、マイソールサウンドなど個性派とのコンビでファンの記憶に残る活躍をみせた。騎手としての通算成績は7997戦757勝。 2007年から厩舎を開業すると、太宰啓介騎手を主戦に据え、昨夏にはJRA通算100勝をマーク。厩舎の出世頭ともいえるフミノイマージンでG1獲りを狙う。 |